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ベルリンが家不足なことについての考察

ベルリンの家探しが大変だというのは色々なところで見聞きします。実際にどうなのか現地で住居探しにトライしてみたところ、私も苦労しました。そこで、なんでそんなに物件が不足しているのか、私なりに考えてみました。
(2024年5月9日追記あり)

真面目な不動産屋さんと話をする機会があったのですが、ベルリンが住居不足な理由はかなり複合的です。

  1. コロナで役所の稼働率が下がり、新たな建物の建築許可申請の処理が滞った。その余波がまだ続いている。(今ベルリンでは公務員不足も深刻化しているので、コロナだけではなく担当課の人員不足も申請処理件数低下の一因かとも思います。)

  2. 難民がベルリンに流入し、家不足が加速した。(難民に住居が割り当てられ、市民が借りられる住居がその分減る。)

  3. 原材料費や人件費の高騰で採算が合わなくなり、建築会社が倒産するケースもある。それにより、建築途中で工事がストップする物件が出て、それらの物件に対して購入費用を払ったのに入居できない人もいます。入居できない家のローンと家賃の両方を払っているということで、どうなっちゃうんでしょうか……。

  4. 投資家が景気後退と3を警戒して、資本投下を渋っているため、新規建築プロジェクトの数が絶対的に不足している。需要が供給を明らかに下回った状態が恒常化している。

上記が複雑にからまりあい、現在のベルリンで空前の家不足が生じているということでした。住居用不動産の空室率(Fluktationsrateを適当に訳した)は0.7%しかないそうです。本来この数字は3から4%はないときびしいということなので、0.7%だとキチキチ。これが改善する兆しは今のところないそうです。

ただ、公式の数字は0.7%でも、実際には通常の無期賃貸物件のほか、中・長期民泊(Zwischenmiete)、(合法的・非合法的)また貸し(Untermiete)、部屋貸し(Wohngemeinschaft)など様々な形態の物件が混在していて、統計では把握しきれないベルリン独自の市場原理が働いているようにも思えます。(闇市的な部分もありそう。)なので、苦労はするけど探せば何らかの物件は確保できるという印象も受けました。

それとは別に、契約形態のアンバランスも家不足の一因に思えます。
つまり、
短期・中期民泊系とまた貸し物件(契約期間がマックス1~2年くらいで、なおかつ賃借人の権利が弱い)

通常の賃貸物件(契約期間が長期・無期で、賃借人の権利が比較的強い)
の二層構造が生じているわけです。

大家的には、前者(特に民泊系)を選好する人が増加傾向にあることから、長期賃貸物件が減るというスパイラルが生じているのかなと何となく思いました。その最大のメリットは、短期間で賃借人が変わるたびに平均的な物価上昇率を超えて家賃を好きに増額できることでしょうか。そして、物件の条件がある程度よければ(立地、設備等)、借り手はいくらでもいるので、空き室リスクを恐れる必要がありません。(参考までに、我々が民泊物件探しサイトで遭遇した強気大家に嫌になっちゃった話はこちら。)

また、後者(長期賃貸物件)をゲットした賃借人も(※)、自分が借りている物件を手放したくないので、数日から数か月、数年単位で家を離れる時にまた貸しします。(日本であればその土地を長期に離れて賃貸契約を解消するような場面でも、ドイツでは合法的にまた貸しが可能なのです。)それによって通常の長期賃貸契約物件がますます市場に出回らなくなり、全体的な家賃も高騰します。

上記のような複数の問題が常態化していることから、通常の(無期)賃貸物件1件に対して何百件という問い合わせが殺到する状況が生じているのではないでしょうか。しかし、短・中期民泊物件では、そこまで競争が激しくありません。そのかわり、最大1、2年程度の契約しかできないし、家賃が割高です。葛飾北斎みたいに売れっ子絵師で引っ越しが苦にならなければ、スーツケースひとつであちこち引っ越せてよいかもしれませんが、そういう人はむしろ少数派でしょう。困ったものです。

ここまで書いても、オチも伝授できるコツもなく、ベルリンの家探しはとにかく大変という現状を再確認するのが精いっぱいです。こういう状況で個人でできることなんてたかが知れているので、コネか、金か、粘り強さのどれかで対応するしかなさそうです。

なおうちは2回連続で違う不動産屋と揉めましたので、3回目は不動産屋を入れず、自分たちで物件を探しました。面倒ではありましたが、結果的にそれが一番スムーズでした。物件不足だと、不動産屋の質も下がるということなのかもしれません。なにせ入れ食い状態ですから。
家不足の影響は多方面に及んでいます。

2024年5月9日追記
※20年前にベルリンで賃貸物件を契約した人の話ですが、90m2、3部屋、暖房代こみの家賃が今でも750ユーロだそうです。ロケーションもよく、Weddingでシュプレー川周辺のベルリン中央より地区です。その分ぼろいし、色々順番で壊れていくが、もう何があっても絶対に引っ越ししないと言っていました。その当時はこういう物件(と値上がりしない契約)がよくあったようです。今だとその2倍出しても、そんなロケーションの90m2のアパートの契約は難しいと思います。

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