謎なベルリンの画廊の話
散歩の途中で気になる画廊がありました。ショーウィンドウにはムキムキ裸男性のポスターとそれ以外の雑多なモノが置かれ、一見何を扱っているのかよくわかりません。にぎわっている様子もありませんが、ベルリンの画廊なんてどこも閑古鳥が鳴いているので、まぁ普通かなという感じです。
何度か通りかかることがありましたが、店に入るきっかけもなく、そのままになっていました。そのうち気にするほどのこともなくなっていったのですが、ある日店の前を通りかかったら絵葉書がたくさん置いてあるのがちらっと見えたので、思い切って入店してみました。
入ってやっと気づいたのですが、そこは男性を性愛の対象とする男性のためのポルノショップでした。ショーウィンドウから中が覗けなくなっているのは、そういう理由があったのかと納得です。いかがわしい雰囲気が少なすぎて、全くわかりませんでした。気づいた後によくよく見ると、ショーウィンドウにも確かにエロ本やエロビデオがさりげなく置いてありました。
やってしまったと思いましたが、ここで引き返すのももったいない気がして、とりあえず絵葉書を選ぶことにしました。絵葉書は全く売り物になっていないようで、店の片隅に押しやられています。そしてホモエロショップの絵葉書というだけあり、イチモツ丸出しだったりそれなりに過激です。そういう葉書で日本にお便りをしたらどうなるんでしょうか。気になりますが、それを試すほどには私の好奇心も強くありません。とりあえず、おとなしめの葉書を何枚か選びました。
うちに帰って買った絵葉書をまじまじと眺めたところ、店の住所表記が古いことに気づきました。通りの名前や番号は同じですが、5桁の郵便番号が4桁しかありませんし、今と全く違う番号です。ここからは私の推測になりますが、これはドイツ統一前の住所表記なのでしょう。絵葉書のモデルやファッションにも今とは明らかに違うテイストが漂っていますし、モデルの体にタトゥーがひとつもありません。今は皆さんタトゥーだらけですからね、そこがわかりやすく一番違います。つまり80年代以前に作製された絵葉書が、その店でいまだに売られているということなのでしょう。歴史的遺物をベルリンの街中で発掘した気になってしまいました。
そして、店も30年以上存続しているということになります。人間の尽きない需要に応えているお店なので安定経営が可能ということでしょうか。
店番の男性は、ベルリンの濃厚なホモカルチャーに突然迷いこんできた私にも普通に接してくれました。よく考えればその人もベルリンLGBT文化の最前線に立っているわけで、異性愛者で女性でアジア系の客にも寛容なのでしょう(きっと)。
この店はすぐ30mほど先にある教会とも当たり前のように共存しています。教会の敷地内の公園では子供たちがたくさん遊んでいます。誰も文句を言わないんですかね。ホモはいいですが、エロはどうなんでしょう。それとも、これがレインボー国際都市ベルリンの寛容さというものでしょうか。
買った絵葉書はすぐ日本に出しました。送った先で大喜びしてくれたので、近々また買いに行こうと思います。
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