見出し画像

直火式エスプレッソメーカーのすすめ

我が家では、コーヒーメーカーは使わず、直火式エスプレッソメーカーを使っています。「エスプレッソメーカー」と大層な名前がついていますが、要はただの鍋です。内蔵されたざるに入ったコーヒー粉を煮出してコーヒーができる仕組みになっています。

文章で書いてもわからないと思うので図解してみました。

ウィキペディアによると直火式エスプレッソメーカーは、アルフォンゾ・ビアレッティ氏が1933年から売り出し、のちに息子が特許を取得したそうです。この発明により、エスプレッソが家庭内でも気軽に飲めるようになりました。それまでのエスプレッソは、店で大型マシンを使って大きな圧をかけないとできないものだったのです。

実際には専用の大型マシンで圧力をかけて抽出したエスプレッソのほうがおいしいに決まっていますが、あたかもちっこい鍋で大型マシンと同等のエスプレッソができるかのような宣伝したのでしょう。ビアレッティ家は発明だけではなく、マーケティングの才能にも恵まれていたようですね。第二次世界大戦後にイタリア国内でこれが爆発的に売れ、現在でもイタリア家庭の90%にはビアレッティのエスプレッソメーカーがあるとも言われています。特許はとっくに切れているので後発製品はたくさんありますが(cilio、Milu、Groenenberg、Rommelsbacherなど)、ほとんどビアレッティの二番煎じです。

だから今もビアレッティ一強かというとそういうわけでもなく、逆に、2000年代からは、ネスプレッソタイプのカプセル型やポッド型コーヒーマシンの群雄割拠が始まりました。ビアレッティもそこに独自マシンで参戦しつつ、オールドタイプのエスプレッソメーカーも売り続けるという二足の草鞋方式で頑張っています。今はドルチェ&ガッバーナとコラボした真っ赤な派手なタイプをはじめとし、伝統的なデザインをアップデートした製品を何種類も売り出しています。ただ残念ながら、株価は2007年の上場時から9割近く下がって30セント以下です。努力が結果に結びついていないようで、低空飛行が常態化しています。

売り物が本体(ハード)メインで、市場が飽和状態ならそりゃ苦労するでしょう。更に製品の構造が単純なだけになかなか壊れず、買い替えの必要が生じないわけで薄利多売も無理。それじゃいくら目新しいデザイン展開をしても、利益拡大は難しいのではないでしょうか。前世紀から24年たってもまだ本格的なシフトチェンジができず、過去の貯金(ネームバリュー)を食いつぶしながら細々と(?)売上をたてている状況みたいですし、ビアレッティもいずれ時代の波に押しやられて消えてしまう運命かもしれません。

ただ、消費者目線で考えてみると、直火式エスプレッソメーカーはひとつ買えばずっと使えるSDG商品の筆頭に挙げられます。コーヒーも割高なカプセルより安いですし、メーカーの縛りなく種類を選べ、自由度が高いです。味だってそこそこおいしいです。まぁボタン一つでコーヒーが出てくるマシンには手軽さと味の面で負けますが、そこはSDGだし、手間はかかるけど壊れにくいよ(部品少ないし)と、お勧めしたいです。

日本でもビアレッティはアマゾンやデパートで簡単に入手できます。ドイツでは中古品が山のように売られています。ただ、コーヒーの粉はアメリカンコーヒー用のものを使うとうっすいコーヒーになるので、エスプレッソやモカ用のコーヒーがお勧めです。私はよく、カルディでLavazzaを買っていました。それでふわふわ牛乳があれば、日常的にカプチーノ風コーヒーが飲めます。ふわふわの話はまた今度。

図の通り単純な構造なので、壊れるところがあまりないです。ただ、このモデルはステンレス製のcilioです。

追記(2024年2月14日):
エスプレッソメーカーを広めた二代目のレナート・ビアレッティ氏は2016年に93歳で亡くなりました。シュピーゲル誌の記事を見ると、遺灰が特大のエスプレッソメーカーに入れられています。ビアレッティ社は2000年代に買収されましたが、創業家は自分たちの父祖が世に広めたエスプレッソメーカーに今でも愛着を感じているのでしょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?