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人類と、プラスチックの幾星霜。第2回もじゃもじゃコンテスト結果発表!

みなさんこんにちは!株式会社メルタです。

私たちは3Dプリンターから生み出されてしまった「失敗作」を集める、もじゃもじゃコンテストを開催しています。史上初の試みで話題を呼んだ第1回に続き、2022年2月には第2回コンテストを開催しました。

今回は写真だけでは飽き足らず「実物部門」を新設。ゲスト審査員や協賛企業の力添えもあり、なんと写真と実物を合わせて101作品もの投稿が集まりました。

全国から集まった悲喜交々のもじゃもじゃたち。表彰するにふさわしい作品を選定すべく、都内某所にて行われた作品審査会の様子をお届けします!

突飛なコンテストの審査をお引き受けいただいた皆様。左から順番に、メディアアーティストの市原えつこ氏、ギャル電きょうこ氏、メルタ社長の内野博之、アーティストの明和電機氏!


五感で味わえ! 新基軸の実物部門

今回の目玉は、なんといっても新設の実物部門!印刷に失敗したもじゃもじゃを、わざわざ箱に詰めて送ってもらうという生産性に反逆する試みです。

「失敗作を手元に取っておく人なんているの?」と疑問をお持ちの皆さん、正解です。案の定出足は鈍く「マジで1件も来ないのでは?」という想いもよぎり、心配になった運営メンバーは怒涛の「送って攻勢」を展開。

スポンサー様の協力による参加賞(フィラメント)提供や、Twitter部門とのダブル投稿OKにルール変更といった策が功を奏し、合計で26もの作品が送られてきました。

愛情込めて郵送されてきたもじゃもじゃ達。心なしか段ボールにもダメージが目立つ。
明和電機氏「写真で見るのとは違う…マス(質量)がありますね」
廃棄物処理場とかではないのです。断じて。

もじゃもじゃそのものと同じくらい、それが生まれた背景やエピソードも大切な要素。応募用紙にぎっしり書き込まれたバックグラウンドも読みあわせながら、実物部門から8つの作品が選出されました。


【デカさ賞】 溢れ出たデカ盛り、あるいは断層されたツノ

まずは純然たるサイズで選ばれる、デカさ賞。500ml入りのペットボトルを余裕で超える大きさで、ダントツ1位に輝いたのはこちらの作品!

作ろうとしたもの:キャラクターのコスプレ小道具 / 投稿者:ハイパーおもちゃクリエイター

「出力中にフィラメントが切れてしまったため、途中から別のフィラメントを刺したところ、つなぎ目が見事に割れてしまいました。普通ならそこからもじゃ状態になるはずでしたが、何故か途中から正気を取り戻し、普通に出力し始めました」という力技の賜物。

作品自体のインパクトもさることながら、わざわざ大きな段ボールに入れて送ってくれた行動力に敬意と感謝を。景品は工作にも使える防音室です!


【エピソード賞】 神の逆鱗に触れたバナナ

説明員「続いてはこちらですね。バナナです」
審査員一同「・・・バナナ!?」

3Dスキャンでスキャンしたバナナの3Dデータをプリントしようとしたら生まれたもじゃです。バナナを作ろうという禁忌を犯した結果、生まれたのはバナナではない何かでした。しっかりと準備して、理論は完璧だったはずなのに。人が神の領域に踏み込もうとした罰として、しっかりと受け止めて、向き合っていきたいと思います。 by 投稿者:ポリポリ

会場に混乱をもたらした作品が、見事エピソード賞を獲得。3Dスキャンまでして完成したもじゃもじゃは、バナナはおろか明確な形すら留めていないナニカでした。そのギャップに審査員からは、

ここにバナナってキャプションが置いてあるのを想像しただけで腹筋が崩壊する。早くタイトルをつけて堂々と展示させたい(市原氏)

これはもう、バベルの塔ですね。神に挑んで、人間がバナナという自然物を作ろうとしたら、突き落とされてしまったという(明和電機氏)

人類ごときにバナナはまだ早い(きょうこ氏)

と、神に挑む人間の愚かさを憂うようなコメントが集まりました。景品のベビースター1年分を食べながら、じっくり自分という存在に向き合っていただければ幸いです。


【美しさ賞】 カオスに抗うバイクの片鱗

さてさて、次は花形とも言える美しさ賞。景品として光造形方式の3Dプリンターをもらえる栄誉に輝いたのは、こちらの作品です!

えっ?

さっきのバナナと同じじゃん!!とお想いのあなた。よ〜く見てください。一見乱雑なもじゃもじゃの中に、何かのパーツと思しきものが構成されていることに気づきませんか?

作ろうとしたもの:バイク|投稿者:Yas_Yam

違いがわかるようになれば、あなたももじゃもじゃ上級者。審査員はこのコントラストを見逃さず、もじゃもじゃとの調和に質的な美を見出しました。

よく見ると車輪などが残っていて、かつ裏を向けると全然違う顔が見える。もじゃもじゃとしっかりした形状の両立に美を感じました(内野)

路地裏のゴミ置き場の模型って作るのムズいけど、それを1発で出してる。灰色を「シュー」て塗って、ところどころを赤とか緑の線で塗れば、もうこれ、サイバーパンク路地裏だから。スゴいことよ(きょうこ氏)

きょうこ氏「シュー」 明和電機氏「ブラックジャックのピノコを思い出しますね」


【特別賞】 審査員の心をつかんだ4作品!

グランプリ発表…の前に、どうしても見逃せなかった4作品をご紹介。それぞれ特別賞として、ベルトコンベア式3Dプリンターでの試作権や、傷ついた心を癒すフードやドリンクをお送りします。それでは、審査員との2ショット&コメントと共にどうぞ!

明和電機賞|もじゃもじゃに侘び寂びを見た

作ろうとしたもの:不明 / 投稿者:山本周@数学・情報教員

これは見事ですね。この繊細さと力強さ。今回僕がもじゃコンに感じていた偶然性や侘び寂びが全部入っている。作れと言われても作れない要素が詰まっていて、好きなんです。時代を変える作品。

市原えつこ賞|Z軸は太陽に至る道

作ろうとしたもの:天使のWing / 投稿者:teamHALU

太陽の近くを飛んで翼が溶けてしまったイカロスのように、最後の最後で断層が起きてしまった。その姿がすごくシンボリックで、コンテストを象徴する造形だと思いました。このままトロフィーにしても良いぐらいですね。

ギャル電きょうこ賞|夢はデカい方が良い

作ろうとしたもの:金ピカの名刺ケース / 投稿者:けんけん

何者にもなれなかったシリーズが好きなんだけど、これはなろうと思ったものと、結局できあがったものの差がスゴい。ビジネスに役立つ名刺入れを作ろうとして、夢があったのにね。めちゃ繊細だし、壊れないでよく郵送できたなって思う。よく捨てなかったね本当。

内野博之賞|はじめてのもじゃもじゃ

作ろうとしたもの:パンケーキタワー/投稿者:コバジン

小学6年生の子が3Dプリンタを買ってもらって、嬉しすぎてサポート材をつけ忘れたらできたというエピソードが好きです。今回の最年少応募で、小学生ながらゴリゴリ3Dプリンターを使っている点も素晴らしいなと思い、特別賞に選びました(内野博之)


圧巻のグランプリは、まさかのW受賞!

お待たせしました。実物部門のグランプリを受賞した作品は、審査中から圧倒的な存在感を放っていたこの作品です!

作ろうとしたもの:大型FRPキャラクターのメス型の一部 / 投稿者:よじげんくん

真ん中に無数の樹脂溜まり、周りに伸びるもじゃもじゃ。あまり見たことのない形状で、造形物からノズルがどう動いたのか推測できない。見た目のインパクトと希少性も含めて、グランプリにふさわしい貫禄です(内野博之)

横山大観「生々流転」の一部(Wikimedia Commonsより)

横山大観の生々流転という絵がありまして。雨がポトンと落ちて、その雫が集まって渓流となって、だんだん大きくなって、最後、海にガーっと流れて竜になって天に登るという面白い絵があるんですけど、そんな感じです。

ラフトを作るところから始まり、いきなり放射状にウワーって広がった後に、剥がれるように自由な時間があって、最後そこからの、モリモリモリ!で見事な造形にまとまった、というドラマを感じます(明和電機氏)

エピソードも強烈 →「高さ90センチメートルの立体を分割出力するためには途方もない時間がかかり、業を煮やした社長が出力スピードを速くするためにノズルを0.4→0.5→0.8mmと付け替えたところ、2台のプリンターが大破すると言う大惨事が起こりました。そのうちの1台が生み出した奇跡の作品を出品します。プラットフォームが大きく傾き、製品が滑り落ちても出力をし続けた証としてニョロニョロ部分も添えて実物をお送りいたします」

親玉感がすごくて、後続のモジャの見本になりそう。エピソードのハートブレイク感もスゴいから、賞品で心を癒してほしい。もじゃもじゃ部分も他と違って、麺みたいでかわいい(きょうこ氏)

SNS部門でもヤバそうだと思ってたんですけど、実物を見たらもっとヤバかった。寄生獣やUMAのような圧倒的な存在感には生命の畏怖を感じるレベル。失敗の王にふさわしい貫禄だと思いました(市原えつこ氏)

… というわけで、SNS部門にも投稿されていた本作。並み居る競合と比較しても「認めざるを得ない」クオリティにつき、実物部門・SNS部門の両方でのグランプリ、W受賞とさせていただきます!!!

プリンター2台大破で空いた心の隙間が埋まるか分かりませんが、実物部門の景品としてホテル宿泊+温泉入浴チケット、SNS部門の景品としてフィラメント10本詰め合わせをお届けさせていただきます。

実物部門を制した、もじゃもじゃ四天王とでも呼ぶべき作品たち


心に染みる、時代を捉えたSNS部門

さてさてここからは、グランプリに続くSNS部門の4作品を紹介いたします。もちろんこれらも審査員による議論を経て選出された、押しも押されぬ傑作たち。最後までお楽しみください!

【デカさ賞】 もじゃの屍を超えていけ

60時間予定で8割方進んだスピーカーエンクロージャーで発生したもじゃ。注意喚起をかねて応募です。 造形が進みプリントヘッドが上昇、たわんだケーブルが造形物に引っかかってベースプレートごと一気にずれたと考えられます。 仕事から帰宅し発見した時の衝撃、忘れられません。/ @monohoshi_blog さんの投稿 より

失敗のコンテストなので、失敗がどれだけフルスイングしているかを重視しました。途中までうまくいったのに、最後の最後で、というときの絶望具合が聞こえてくる。その発狂の雄叫びと「俺の屍を越えてゆけ」という遺言が聞こえるような大作だと思いました(市原えつこ氏)

画像から伝わるボリューム感と、それに劣らぬ圧倒的な絶望感。失敗のコンテストにふさわしい、全力で転んだ作品がデカさ賞を受賞しました。景品の改良ABSフィラメント3色セットで、心のダメージを軽減してくだい!


【エピソード賞】 むしろ暮らしが気になる

帰ってきてドアを開けたら滝が完成していました。ちゃんと一層目までは確認してから出かけたのに…(キーボードの上にある四角いのが一層目) / @Kousaku_Kiroku さんの投稿 より

帰ってきたらもじゃだったシリーズが基本的に好きなんだけど、滝は風流。(きょうこ氏)

「あれ変じゃない?」と思ったのはこの作品。なぜあの高さに3Dプリンターが…?(明和電機氏)


この設置の高さからしか生まれない、流れ落ちるもじゃもじゃ。設置環境から特異の美しさを醸し出していて、好きな作品です。そもそも、なんでこの高さに3Dプリンターを設置しているんだ...?(内野博之)

風流なもじゃもじゃもさることながら、どうしてそこに配置した?という生活環境への疑問が審査員の心を掴み、エピソード賞に決定。景品のPLAフィラメント3色セットで、新たな物語を生み出していただければ幸いです。


【美しさ賞】 SNSならではの『もじゃ映え』

しばらく安定してたから油断してたけど、ビルドプレートとの定着が悪いとモジャるよね…ただ #kaika を使ってるとモジャった部分に光沢感があって少し感動した。映像機器の配線みたいでこのままニッチなジオラマに使えそう。/ @kj_making さんの投稿 より

美しさ賞に輝いたのはこちらの作品。じつは実物部門にも投稿いただいていたのですが、その場にいた誰もが同じものだと認識していませんでした。

「実物と全然違う人じゃん」って思うくらいに、SNSで盛れてる。3Dプリンターで出したものには盛りフィルターとかないから、スゴいことですよ(きょうこ氏)

テリツヤ感が美しい。もじゃの生成も、グシャグシャではなく狙ったかのようにエレガントで、ジオラマ的な美しさがあります。流線的なフィラメントもレアリティが高い!(市原えつこ氏)

これはもはや、SNSならではの新しい見せ方、『もじゃ映え』の可能性を切り開いた作品だと言えるでしょう。景品のPLAシルクフィラメント6色セットも活用いただき、更なる「美」を追求してください!


【特別賞】 Twitterで大拡散!もじゃの定義に迫る逸品

SNS部門の特別賞は、いいね!やリツイート数の多さで決定。多くの目の人に触れ、もじゃもじゃの概念を広く伝えたことへの感謝と共に、こちらの作品に特別賞を贈呈します!

他の追随を許さない美しさ。もじゃが美しいというよりは、そもそもの元来のパラメーター設定や色彩が美しいのでは、という点では議論が必要(市原えつこ氏)

わりと原型も留めているし、もじゃもじゃの定義に入っているのかという点では悩みました。ただ、ひと目見たときに美しいと率直に思ったので選出しました(内野)

もじゃもじゃの定義から問いかけ、審査員の中でも議論を生んだ、まさに「特別」な作品。もじゃもじゃ界のカオスさを加速させたことに敬意を表し、景品として下北沢CHAOSビールを贈呈します!


もじゃもじゃ、全員参戦。 続きは展示で!

審査会スタート直後、突如始まった明和電機氏によるレクチャー

2時間ぶっ続けで大盛り上がりとなった審査会。もじゃもじゃの美しさとは、グランプリにふさわしいもじゃもじゃとは何か?という議論や、明和電機氏による分析や分類なども巻き起こり、大変充実した会になりました。

それもこれも、作品を応募してくれたみなさんのおかげです。本当にありがとうございました!ここで紹介しきれない作品が山ほどあって、どれも素晴らしいんです。素晴らしすぎるので….

「もじゃもじゃコンテスト展」を開催いたします!

会場は開業直後のミカン下北。第2回に投稿されたもじゃもじゃの実物や、これまでコンテストに投稿されたもじゃもじゃの写真を一堂に集約。もちろん、各賞の受賞作やさらなる詳細コメントもご覧いただけます。

詳細はこの下をチェックしてみてください。そして都合の合う方は、ぜひ会場でお会いしましょう〜!

「もじゃもじゃコンテスト展」詳細

名称:もじゃもじゃコンテスト展
会期:2022年3月30日(水) - 2022年4月5日(火)  12:00-20:00 
 ※ 4月2日(土), 4月3日(日) のみ10:00 - 20:00
 ※ 4月3日(日) 15:00-16:30 は一時閉館予定
会場:東京都世田谷区北沢 2-296-4 ミカン下北E街区 202
入場料:無料
主催:株式会社メルタ
協力:京王電鉄株式会社
※ 予約不要。感染症予防の観点から、同時に入れる入場者数の制限を行う可能性があります。
※ 入場時の手指消毒の徹底や会場内の換気など、感染症対策を実施します

ミカン下北で、もじゃもじゃに会おう!

クレジット

コンテスト主催:株式会社メルタ

第2回もじゃもじゃコンテスト審査員
・明和電機(アーティスト)
・市原えつこ(メディアアーティスト)
・ギャル電きょうこ
・内野博之(株式会社メルタ)

第2回もじゃもじゃコンテスト 協力企業:京王電鉄株式会社

第2回もじゃもじゃコンテスト 協賛企業:Coolish Music株式会社、フェリデンシア・キャピタル株式会社 SK本舗事業部、合同会社BirthT、APPLE TREE株式会社、日本3Dプリンター株式会社、株式会社コネル、株式会社知財図鑑、株式会社オオゼキ(順不同)

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