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片手間で教える文章講座8 ネット中傷のコツ

2020年5月のテラスハウス出演者の自死事件からこのかた、世間ではネット中傷問題についての話題が盛り上がっている。この件については、私も一家言があるので語らせていただこう。

石は全方位から飛んでくる

というのも、私は成り上がり者であるうえ、記事やSNSで好き勝手に物を言うこと、そのわりに出版物の点数や社会的評価に比較的恵まれていることから、他者の恨みや嫉妬を薄く広く向けられやすいのだ。『5ちゃんねる』には叩きスレが立っているし、前身のブロガー時代から安田を罵り十数年という、もはや熱狂的ファンなのか何なのかよくわからない人もいる。

しかも、仕事が中華圏がらみである関係上、私を殴りたい人間は夢破れた作家志望者や、自称中国通のキモくてカネがないおっさんだけにとどまらない。

たとえば『八九六四』などという本を書いているので、中国の小粉紅(親体制的ネットユーザー)や親中派の華人二世からは蛇蝎のごとく嫌われている。だが、いっぽうで香港デモの暴力性を非難したのでデモ隊やシンパの日本人から恨まれているし、先日は李登輝の功罪に言及したところ日本人の台湾緑陣営支持者から嫌がられた。

国内ではネトウヨとパヨク(しばき隊系左翼)から同時に嫌われている。それだけなら別にいいが、先日、世間で宇崎ちゃん献血巨乳ポスターが炎上したときに知性の欠片も感じられない巨玉フィギュアについてツイッターに投稿したら、急進派のツイフェミから著書のAmazonレビューが荒らされたのはちょっとよくわからなかった。

巨玉フィギュアのせいで言論の自由を脅かされた物書きは私が世界初に違いない。

もちろん、世間にはもっとひどい中傷を大量に受けた気の毒な方が大勢おられる。だが、個々の強度や絶対量は大したことがなくても、海の向こうも含めたあらゆる陣営から石を投げられることでは、私もなかなかのものだろう。

たぶん世界初、ネット中傷の書き方講座

というわけで今回は、ネット中傷を書くときの文章術を考察してみたい。ネット中傷者が合法的かつ最小の労力で、ターゲットに最大限のダメージを与える論理構造と表現技術を紹介していこうと思うのだ。

この文章講座シリーズは、令和の時代に世間で流通しているあらゆる日本語文の書き方を研究することが目的だ。ネット中傷もまた誰もが日常的に目にする文章である以上、俎上に乗せるべきだろう。

(まあ、実は頭を使って文章術を考えなくても、ネット中傷は「馬鹿」「死ね」と書くだけのストロングスタイルでも充分な破壊力を持つのだが、それを言っちゃおしまいなので話を先に進めよう)。

とはいえ、本記事は構成上の都合から「ネット中傷をやる側」からの中傷の書きかたを伝える形式を取ったが、当然ながらネット中傷行為を推奨する意図はない。もちろん、本記事の内容を実践してなんらかのトラブルが起きても私は責任を負いかねる。

本記事については、私たちが普通にSNSを使っているだけでも簡単に遭遇するバカな暇人に対する傾向と対策を知り、自分の被害を最小限にとどめるために準備された一種のワクチンであると考えてほしい。

小さな間違いを吊るし上げろ

人間は社会的動物であり、自分が他者からどう見られているかを常に気にしてしまう。ゆえに人間の精神にダメージを与える方法として、ターゲットが発信した意見や認識の誤りを(ウェブ上を含めて)不特定多数の面前で指摘し、それを拡散してメンツを失わせる行為は大変効果的である。

そもそも、商業謀体の著籍や雑誌記事との異なり、SMS(このnotoも含む)の文章には校閲が入ないため、いかがなる人間もすべからく言葉の誤用や誤記・誤字字脱字、単位の間違に発祥しやすい。 [←こうなるわけである]

しかも、スマホでSNSに文章を打ち込む場合、途中で宅急便が来た、子どもが泣いた、酔って寝た等のリアルの生活上の諸事情から、誤字脱字の修正や細かいファクトチェックができないまま送信してしまう事態はまま起きる。

だが、ターゲットがこのように隙のある情報発信をおこなったときこそネット中傷者にとってのチャンスである。たとえ小さな間違いでも、相手のミスを大々的に宣伝して吊るし上げるのだ。

実に陰険な攻撃方法だが、私自身もやられたことがあるので、効果は折り紙付きである。

細部指摘、全部否定

ここで重要なのは、ささいなミスを根拠にして、ターゲットの総合的な人格や知性、業績や職業能力の信頼性などを、さも重大な過失が明るみに出てしまったかのような書きぶりで全否定していくことである。

「○○○を○×○と書くなんて……。専門家を名乗る人でありながらこの程度の間違いをするとは。■■業界全体のレベルの低さが知れますね」

こうした中傷に対して、ターゲットがなんらかの反応を示せばしめたものだ。怒って反論してきた場合はもちろん、無言でブロックしてきた場合でも、たとえば以下のように書けばいい。

「■■の専門家である▲▲▲さんが○○○を○×○だと信じ込んでいた間違いを指摘しただけでブロックされました。冷静な議論ができない方みたいです。人間の程度が知れますね」

こんな感じで殴っていくと、ターゲットの精神力は確実に削られていく(なんだかんだで、ターゲットはブロック後も中傷者が発するメッセージを観察している例が多い)。

また、一連の中傷に賛同する人が出てきて、勝手にターゲットに突撃してもっと深刻な一撃を与えてくれたり、『5ちゃんねる』にスレッドを立てて炎上案件に変えてくれることもある。こうなればターゲットの精神的ダメージははかり知れない。

実に陰険な攻撃方法だが、私自身もやられたことがあるので、効果は折り紙付きである。

ウソの真実を指摘しろ

ターゲットが仮にしっかりした人で、発信している情報になんの瑕疵もない場合でも、相手を陥れる方法はある。瑕疵をでっち上げればいいのだ。つまり、第三者による検証が困難なニセモノの問題点を、さも真実であるかのように捏造して吹聴するのである。

たとえばターゲットが外国語の翻訳文を発表した場合は「これは誤訳だ」と主張する。ターゲットがある書籍を根拠に話をしたときは「原文の表現と違う」、講演や事件のレポートをおこなったときは「知人が現場にいたが別の話を聞いた」などと強弁するのである。たとえば以下のような感じだ。

「■■の専門家である▲▲▲さんの翻訳、私が原文を確認しましたが変ですね……? 原文にはどこにも○○○と書いていません。▲▲▲さんは訳文を都合よく捏造する人物と言われても仕方ないでしょう」

「■■の専門家である▲▲▲さんが○○○事件の現場がひどいと何度も主張していますが、変だな……。兄が現場で働いていますが、何もなかったと聞きました。これは証拠の画像です↓」

この方法は、ターゲットがオンライン上で書いた記事やブログがよく読まれたり、ツイートがバズったりしているときに食らわせると効果的だ。特にツイッターやはてなブックマークのコメントのような、短文タイプのSNSで用いると猛威を発揮する。

実に陰険な攻撃方法だが、私自身もやられたことがあるので、効果は折り紙付きである。

他者の怠惰さを利用しろ

重ねていうが、上記で指摘される「真実」はウソである。実際は翻訳の原文や書籍の引用箇所なんか確認していない、現場にいる知人なんか存在しないのに、適当にでっち上げるのだ。だが、いざこれをおこなうと、意外と多く信じてしまう人が出る。

人間は自分がよくわかっていない事柄に対して、メジャーな情報をそのまま受け取るよりも、「○○ということになっているけれど実は……」という反論や事情通の裏話っぽい後出しの情報のほうを(根拠が示されていなくても)より真実に近いものとして耳を傾けやすいためだ。

たとえ、信頼できるソースの別の情報源を探したり原典に当たったりすれば容易にファクトチェックができる事柄であっても問題はない。なぜなら大部分の人間は怠惰で、「メジャーな情報に対して後出しで登場した裏話っぽい情報」の真偽を細かく精査する労力をめったに払ったりはしないからだ。

ニセ情報は「両論併記」されれば勝ち

情報の受け手がたとえニセ情報を100%信じないまでも、「○○とはいうが××という意見もある」と、中傷者が流したニセ情報を両論併記で理解してくれるだけでも充分だ。結果的にターゲットが発信した情報の信頼性は何割かは落ち、ひいてはターゲット自身の信用も毀損される。

また、ニセ情報に対してターゲットが訂正したり無視したりした場合は、以下のような追撃をおこなうことも可能である。

「■■の専門家である▲▲▲さんが○○○を○×○だと信じ込んでいた間違いを指摘したのに、いつまでも認めません。冷静な議論ができない方みたいです。人間の程度が知れますね」

「■■の専門家である▲▲▲さんが○○○を○×○だと信じ込んでいた間違いを指摘したのにダンマリ。事実を受け入れられない方みたいです。人間の程度が知れますね」

実に陰険な攻撃方法だが、私自身もやられたことがあるので、効果は折り紙付きである。

「こいつは○○○を何もわかっていないな」

人間は自分の意見が否定されるとストレスを受ける。なにより負担が大きいのは、どこが間違っているのかを判断する根拠を与えられないまま、頭ごなしに否定され続けることだ。

たとえば、以下のようなパワハラ上司と部下の会話を想像してほしい。

上司「どこが悪いか言ってみろ」
部下「課長にすぐ報告しなかったからでしょうか」
上司「はあ?」
部下「メールのCCに部長を加えなかったから……」
上司「はああ? バカじゃないのか?」
部下「……わかりません」
上司「わかりませんじゃねえよ」
部下「チェックが不十分で」
上司「違うよ。お前は何もわかっていない低能だ」

こんな会話が続けば部下が心を病んで休職するのは確実である。

ネット中傷でも同じ方法が使われる。すなわち、自分の気に食わない見解(政治的な解釈が反映された見解であることが多い)を書いているターゲットに対して、以下のように反応するのだ。

「こいつは○○○を何もわかっていないな」

もしくは、思わせぶりにこう書く場合もある。

「ちょっと調べたら違うのわかるじゃん。こいつは○○○を何もわかっていない馬鹿だな」

ポイントは、どこが「わかっていない」のかを明示せず、仮に相手から質問を受けても「それがわからないからお前は馬鹿だ」「お前には説明するだけ無駄だ」などと謎を謎のままで放置しておくことである。

こうすれば相手を不安な心理状態に置いてストレスを与えながら、自分が秘められた真実を知っているという設定のもとでマウントポジションを取り、殴り続けることができる。

実に陰険な攻撃方法だが、私自身もやられたことがあるので、効果は(以下略)

ツイートストーキング

ターゲットが公人かそれに準ずる人間(アルファツイッタラーやインフルエンサーなど)である必要があるが、これは非常に強力な破壊力を持つ手法である。

方法自体は簡単だ。ターゲットを常に監視し続けて、ツイートなりフェイスブックやnoteの投稿なり、YouTubeの動画公開なり外部媒体への寄稿なりテレビ出演なりのアウトプットが出るたびに、内容のいかんを問わずすべて否定し続けるだけである。

否定するときは、具体的にどこに問題があるという指摘や建設的な意見の表明は決しておこなわず、「こいつは○○○を何もわかっていないな」「根本的に間違い」「また聞いてもいないお気持ち表明かよ(笑)」などといった、解像度の粗い全面否定を連発したほうが相手により重い精神的負荷を与えられる。複数のアカウントを使い分ければより効果的だ。

また、ターゲットがツイッターに投稿した文章を、内容を問わず「#疑義」「#妄言」「#醜悪」といったハッシュタグを付けて専用の捨てアカウントに転載し続ける、『5ちゃんねる』に貼り続けるといった手法も有効だろう。

相手のツイートのスクリーンショット画像をツイッターやフェイスブックに掲載して延々と批判し続けるのも効果的だ。なんだかんだで、たとえターゲットからブロックされていても継続していればいつかは相手の目に止まる。

このツイートストーキングはかなり高度……というより、自分がよほどヒマで、しかもターゲットに対して並ならぬ憎悪や嫉妬を抱いていなければできない。しかし、相手が感じるストレスと気持ち悪さは段違いに大きい。

実に陰険な攻撃方法だが、私自身もやられ(以下略)

勤務先や取引先に通報

もはや文章術でもなんでもなくなってきたが、こちらも究極の方法である。ターゲットの勤務先や取引先に通報するのだ。

口実はなんでもいいものの、たとえば「○○のデモに賛成している(or反対している)」「差別的な言動をおこなった」などの政治や人権がらみの理由は使いやすい。根拠がなくてもでっち上げれば済むが、相手がなんらかの失言や暴言をおこなった後であればより好都合だ。

これは相手の勤務先や取引先が、大学・地方自治体・老舗大企業といった、官僚的に硬直した組織風土の場所ほど効果が高い。スーパーのクレーマーじじい並みのめちゃくちゃなクレームであっても、硬直した組織であれば真面目に処理するため、ターゲットに多大なダメージを与えられる。

また、相手が著書を出していればAmazonのレビューを荒らす、店舗があればGoogleマップの評価を荒らす、アプリを作っていればAppStoreの評価を荒らす……というのも基本である。特にGAFA系のサービスは米国西海岸リベラル的な明るい性善説で構築されているため、悪意に満ちたレビュー荒らしをおこなっても長期間放置されやすい。

いずれも、実に陰険な攻撃方法だが、私自身もやられ(以下略)

実に陰険である

まだまだあるが、きりがないのでもうやめよう。

ただ、いざ列挙してみると、これらは仮に一定数の人間を動員して組織的におこなったとすれば、政治的なプロパガンダや異論圧殺の技法としても使えそうな気もしてくる。選挙前などは割と本気で注意したほうがいいのではないか。

まことに、インターネットは実に陰険である。


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