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"Position before submission":キメる前にポジションを取るべき

"Position before submission"はブラジリアン柔術でよく聞く格言です。直訳すると「キメる前にポジションを取る」。最高のコーチのひとり、John Danaher も良く口にします(例、Rogers, 2021)。私が最初に目にしたのはGracie Barraのブログでした(Mullen, 2014)。

キメる前にポジションを取る、とは?

初心者に良くある失敗に無理な体勢からキメを狙うことがあります。自分がクローズドガードに入っているのに(自分が上のポジションなのに)、十字絞めを狙いに行って腕を取られるとかですね。これが良くない。

関節技や絞技を狙うには、まず良いポジションを取る必要があります。バック、マウント、サイドなど、自分が有利なポジションを取ると、比較的安全にキメることができます。"Position before submission"とは、キメに行く前にまずは、有利なポジションを取りましょうということです。

サブオンリー・マッチでもポジションが大切

キメる前にポジションを取るのが大切なことは、試合の分析からも明らかになっています。Spanias たちは、ノーギのポイントなし、サブミッション・オンリーの試合を分析しました(Spanias et al., 2022)。スコットランドの国内大会26、国際大会を同じく26、合計52大会を取り上げました。ポイントなし、サブミッションオンリーですから、通常のルールと違いバックやサイドなどにポイントはつきません。絞技や関節技による一本決着のみのルールの試合です。つまり、どちらかがキメるかの勝負です。

このルールですと、ポイントは勝敗に関係ない。ですから、ポイントのためにポジションを取ることはありません。それでも勝者がバック、マウント、サイドなど有利なポジションをとっているなら、やはり、キメる前にポジションが大切、と考えられます。

Spaniasたちは、バック、マウント、サイド、ニーオンベリーなど、通常ルールでポイントが入る有利なポジションを選手がどのくらい維持するか時間を測定しました。そして、それを勝者と敗者の平均値で比較したのです。

サブオンリーでも有利なポジションが大切

結果は一目瞭然でした。勝者の方が、試合中に圧倒的なほど長い時間、有利なポジションを維持していました。勝者は試合中、平均して40秒以上、バックなど有利なポジションを取っていたことがわかります。敗者は有利なポジションを取ることはほとんどありませんでした。ポイントなしのルールでも、勝者が有利なポジションを長時間維持したことは、まさにPosition before submission。キメる前にポジションを取ることが重要なことの証拠であると思われます。有利なポジションを維持してから、キメたのでしょう。

最初に初心者の失敗について書きました。その失敗を回避するためにはキメだけを狙わず、ポジションをとる、あるいは取られないことに意識を向けると良いでしょう。具体的には、初心者は、まずパスガードの攻防を中心に練習するのが良いと思います。一番基本的なポジションの取り合いですから。まずは、ポジションが大切なので。

引用文献

Mullen, M. (2014). Position Before Submission: 3 Ways this advice can help your submission game. https://graciebarra.com/gb-news/position-before-submission/

Rogers, K. (2021). John Danaher Explains How “Position Before Submission” Applies To Leglocks.  https://jitsmagazine.com/john-danaher-explains-how-position-before-submission-applies-to-leglocks/ 

Spanias, C., Kirk, C., & Øvretveit, K. (2022). Position before submission? Techniques and tactics in competitive no-gi Brazilian jiu-jitsu. Revista de Artes Marciales Asiáticas, 17(2), 130-139. 

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