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◯◯させてくれないなら辞めます:「辞めますカード」についての有効性を従業員・上長視点で考える

 今週「○○させてくれないなら辞めます」という「辞めますカード」というのがTwitterで話題でした。

 元のツィートでは「何かあったら辞めます的な雰囲気を出すと評価が良くなる」という内容で、賛否を伴いながら軽く炎上していたようです。

 今回はこの辞めますカードは従業員としてはどうなのか、上長としてはどうすれば良いのかというお話です。私もそれなりの数を見ましたよ、辞めますカード。

辞めますカードの具体例

 この○○させてくれないなら辞めますという○○にはいくつかバリエーションがあります。ざっと列挙するだけで

・昇給
・ボーナスアップ
・フルフレックス/スーパーフレックス
・週休3日
・副業
・フルリモートワーク
・残業時間の1分精算
・(適性が厳しいと周囲から判断されている)キャリアチェンジ
・海外出張

 全てが叶う環境はレアですし、いずれも結構な企業体力が求められます。しかし注意しないと経験職エンジニアに対する圧倒的な売り手市場、フリーランスという選択肢、そして都合の良い情報をプルできるインターネットの後押しもあり「あちらの水が甘いので、こちらの水が甘くならないのなら去ります」というロジックを抱えてやってきます。

上長側:辞めますカードトリガーの施策は愚策

 私自身、この辞めますカードを受け入れたこともあれば、更に上長が受け入れたこともあります。

 辞めますカードを切った人が辞めた場合、当該施策は愚策・失策扱いされます。導入する際には正当な理由をつけ、正式に予算をつけて実施する必要があります。ITエンジニア界隈は流動性が高く、採用コストも右肩上がりです。特に営業組織が強い企業の場合は「それ見たことか」と社内政治負けします。

 当該施策を導入するのであれば、ポジティブフレーミングしてから導入しないとダメです。

上長側:辞めますカードを見たら組織の再構築計画を

 流動性が高い社会において、辞めますカードに付随するそれを受け入れたからといって引き止められる保証はありません。「○○を導入してくれたらn年辞めません」と一筆書かせるわけにも行けません。

 専門職であるため「この対象業務を抜けたら困るでしょ?」というロジックはその通りではあるのですが、一種の企業に対する脅迫とも取れます。

 ここは多少のコストをかけても複数名を割り当て、ドキュメンテーションの充実などにより任意の1名が掛けても影響が少ないような布陣を組む必要があります。退職まで至らなくとも、突然の事故・病気・入院なども想定されます。組織の冗長構成やリカバリプランは専門性が高いからこそ必要です。

従業員側:2回以上のカードは「一生のお願い」の連発と変わらない

「一生のお願い!」

 誰しもがそう叫んでいる子供や人を見たことはあるのではないでしょうか。私も子供のときによく見掛けましたが、一生が複数ある方が非常に多いですね。この「一生のお願い」と「辞めますカード」は同質に思います。一企業につき一回が限度と思われますが、何度も切る人が居られます。

 切るときは真剣に刺し違える覚悟で切る。

 従業員側に立って考えてみると(ベンチャー中心の私には分かりかねる範疇ですが)終身雇用を前提としている会社でない限り、人材の流動性が極まっている現在においてそこまでの覚悟を持つシーンは少ないのではと思います。

辞めますカード以前に人材の流動化は想定するべき時代に

 2012年、当時の所属企業では上場準備の一環でBCPの作成に関わりました。当時のBCPの中心は311の直後ということもあり災害でした。2021年の今はウィルスの影に隠れては居ますが、少子化と業界の流動性の高さからヒトの流出が着実に比重を高めています。

 誰をどのポジションでどの待遇で配置し、冗長構成を取るのか。正社員雇用は企業に取って非常に贅沢な行為になっています。

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