見出し画像

大災祓いの使命

私は大和武尊から神託を受けました。目の前に広がる映像は壮絶で、巨大な火柱が空を焦がし、血と炎、そして煙に包まれた中、真っ黒な髑髏の軍勢が出現し、人々が互いに殺し合っていました。

衰退する國での生活は、精神を恐ろしく腐敗させ蝕むだろう。苦しみが重くのしかかる。かつて、人口増加と繁栄が永遠に続くとを前提に造られた社会システムや価値観は、すべて機能不全に陥っている。

私達は、経済的に今日よりも明日がさらに苦しくなっていくという現実が、少なくとも百年単位で続く事を受け入れなければならない時代に生まれました。

歴史は証明している。偉大な帝国が衰退し始めると、権力者たちは自分たちの地位を守るために、生活の苦しみの原因を外部に求め、戦争の道を選んできた。

私が見た大災は、人類が繰り返してきたその戦争の典型例である。権力者達も、それを打倒しようと立ち上がる革命家達も皆同じで共通している。人々を希望や夢といった甘い言葉で扇動し、互いに殺し合わせる。

そんな避けようのない未来が目の前に広がっていた。人口の減少は國の衰退を意味し、明日が今日よりも苦しくなるのは避けられない。そんな苦難の未来を前にして、人々が生きることの辛さに耐えかねて、光を求め争いの道に進まざるをえない気持ちが伝わってきた。


私は神様に、「大災を回避する方法はありません。私にはどうすることもできません」と申し上げました。

神の使いで有る狛犬は黙って私を睨んでいた。使命を断った事で、この場で噛み殺されるとしても、方法が無いのだから、無理なものは無理ですと断りました。

できることと言えば、人々の悲しみを少しでも軽減し、災いの規模を抑え、炎の広がりを和らげることくらいだ。

これは、大和武尊が草薙の剣を用いて、自らに迫り来る炎を退けたのと同じだ。迫り来る業炎そのものを消すことはできないが、自分の周辺に燃え移らないようにする事なら出来る。少しでも被害を少なくして、迫り来る炎を緩やかになるように努力する事なら、辛うじて自分でも出来るかもしれないと感じた。

自分と、自分が愛する人達。ほんの僅かな人数かも知れない。それでも、ほんの少しなら自分でも役に立てるかも知れないと感じた。

そして私は、神の命に従い全力を尽くすことを誓いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?