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渡邉飛鳥「僕の夢は滋賀にサッカークラブをつくること」

「滋賀県にサッカークラブを作りたい」

この夢を果たす為に日々もがく大学生がいると噂を聞いた。

日本大学商学部3年、渡邉飛鳥。彼はいま某J1クラブマーケティング会社のインターン生でもある。

夢を抱く若者の話が聞きたくなった。

何を思い、何故「サッカークラブ」なのか。

そこには果たしてどのような動機があったのか。

「サッカーを好きになったきっかけが、村田和哉選手でした」

彼が言う“村田選手”とは、野洲高校で乾貴士選手らと共に全国サッカー選手権に出場し、セレッソ大阪を経て、2013年から2018年まで清水エスパルスで活躍した「村田和哉」のことだ。村田選手は現在、レノファ山口に所属している。

「祖父母に連れられ初めて清水エスパルスの試合を観戦した日でした。僕はもともと野球少年だんったんですが、部内トラブルがあり、野球ができなくなって、当時あたらしく始めた部活に対するモチベーションも高くなかったんです。そんな状態で何を意識することもなくボーっと試合を見ていたら、とある金髪の選手が途中出場で入ってきて…。たった1人が試合に加わっただけで、皆んなが盛り上がり、サイドをドリブルでブチ抜いては、皆んなが夢中になっていたんです。素人ながらに、『この人は凄い』と思いましたよね。結局、後半に村田選手がゴールを決めて勝利したんですけど、試合後すぐにTwitterをフォローして、村田選手のブログを読みました。ネガティブシンキングだった僕が、周りの友達から笑われてしまうくらい前向きな性格になったのは、紛れもなく村田選手の発信のおかげです。そこからファンになり、村田選手が好きになりました」

これがあるからアスリートというものはなかなか辞められない。僕たちのような一般の社会人に、「一人の若者の人生を変えろ」と言われても、とうてい無理な話だ。

そのあと、渡邉さんは村田選手が持つ「夢」に出会うことになる。そしてその「夢」とは渡邉さんの持つ「夢」でもあった。

「村田選手がインタビューで、『地元の滋賀県にサッカークラブが創設されるのが夢』だと言っていて。実は僕もJリーグチームの無い地域にサッカークラブを作りたいと思っていたんです。僕を村田選手と出会わせてくれたのはJリーグであり、僕の人生を変えてくれたのは村田選手です。このインタビューがきっかけで、サッカークラブをつくりたいという思いが強くなり、村田選手に会いにいくことを決めました」

渡邉さんにとって、Jリーグと村田選手は、自身の人生を変えてくれた転機そのものだった。

「昨年の11月に始めて村田選手にお会いしました。当時アビスパ福岡に在籍されていたので、始発の飛行機で練習場まで向かい、練習後に村田選手のところへ行ったんです。そこで自分がWordでまとめた夢やビジョンを見てもらいました。すると、『お前おもろいやん』って言ってもらえて、嬉しかったし、その後にそのまま村田選手の車に乗って、食事にも連れて行って頂きました。初対面なのに、意気投合して、僕にとっては忘れられない2日間になりました」

とは言っても一人の大学生がサッカークラブをつくるまでに道のりは長い。そして簡単なことでもない。想いが強いだけではいけないのだ。

「サッカークラブをつくりたいとは言っても、サッカークラブを経営している人は周りにいないし、何をすれば良いのか、当時大学1年生の僕には全く見当がつきませんでした。そんななかで、まずはサッカークラブの社長が書いた本を読んで見ようと髙田明社長の本を読んでみたところ、感動する内容で、今となってはこの本が僕のバイブルになっています。そして、髙田社長に会いにいきました。2018年の最終節の時に長崎まで行って、『v.ファーレンロード』と言われている、諫早駅からスタジアムまでの道のりを一緒に歩かせて頂きました。その中で多くのアドバイスを頂きました。村田選手が師匠なら、髙田社長は永遠の憧れであり、ヒーローです」

想いは確かだ。仮に、目標が変わったり、夢が変わったとしても大いに結構。何事も柔軟に捉え、自分の人生を生き延びていけば、それでいい。

「清水では、試合がある日にユニホームを着ていると、信号待ちの車から、『勝ってこいよ!』って声を掛けられますし、電車に乗っていても、老若男女様々な人からサッカーの話題で声を掛けられます。スタジアムに近づくに連れて、エスパルスの旗が商業施設や一般宅に立ち並び、街全体が活気付き、スタジアムに着くと、幅広い年齢層の仲間と、試合内容で一喜一憂し、時には抱き合って喜び、時には悔しさの余り涙を流します。普段の生活で、70代の方や、小学生とこのような体験を共有する事はまずありません。しかし、週末のスタジアムでは、これが当たり前です。試合後には、祝勝会や反省会という名の飲み会が始まります。皆んなで試合の感想をシェアして、たわいもない会話を皆んなで楽しみます。このような、サッカーが1つのハブとなり、年齢性別関係なく、皆で喜び合う。この非日常的な雰囲気や空間が、たまらなく好きなんです」

間違いない。僕もその「非日常空間」にしてやられた人間の一人だ。あの空間の心地よさや高揚感はたまらない。

「県の象徴になるようなクラブを作りたい。この夢は決してブレませんが、今はとにかく過程であり、目の前の課題を一つずつ全力でこなしていきたいです。起業するのか、企業に就職してそこかでスキルを身につけるのか、様々な選択肢がありますが、まずは根本的な信頼を得られるような、ついていきたいと思ってもらえるような人間になりたいです」

僕はインタビューを通じて、『自由に未来を想像する学生が頼もしい』と、シンプルに、そう思った。

人生の過程で目標が変わることもあれば、やりたいことがまったく違うものに変わることだってある。

しかし、『やりたい』という思いを素直に表現し、なおかつ、行動に繋げた者だけが、その後の成果物を手に入れられるのだ。

そこのあなたも、何かを想っているのなら、この若者のように動いてみてはいかがだろうか。