リン@m_rin_do

物語はここにある

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最近の記事

喪失と向き合うってそんなに楽じゃないんだよね、っていうこと

ただただ俳優陣の演技が素晴らしい、っていう。 石原さとみがとにかく凄かった。イタ電でぬか喜びするときの残酷さ。嗚咽とも咆哮とも言える、痛ましい魂の叫び。 「考えすぎるくらい、考えましょうよ」 「その事実が面白いんだよ」 「気持ちは分かる、ってどのくらい分かったつもりで言ってます?」 偏向報道と、昨今のなんでもコンテンツにする風潮の中、自分の倫理を守り貫こうとする記者の砂田が印象的だった。 弟の圭吾も良かった。 ああいう姉弟の組合せよく見るけど、必然的にああなってしまうよう

    • 悪は存在しない〜クラウン・シャイネス〜

      冒頭の、森の木々を見上げながら移動するシーン。 林冠から空が見え隠れするのを見て、クラウン・シャイネス(樹冠の遠慮)という言葉を思い出した。 樹木は枝を伸ばし葉を茂らせる時、風で枝と枝がぶつかり、互いに譲り合うように成長していくらしい。 木のソーシャルディスタンス。 映画を見終わって改めて思い返してみると、何となく物語を示唆しているように思える。 適切な距離をとり、共存してゆく。 自然と住民。 住民と開拓者。 巧は「もう一度、やろう」と言った。 ズケズケと入ってくる無遠慮な

      • 黄色い家

        本を書く事が誰かに何かを与えることだとしたら、この本は間違いなく私に何かしら大きな重圧を与えたように思う。 それはずっしりと重く、読み終わってしばらく経つというのに、いまだ身体の奥深くに居座り続けている。 本書がそういった目的で書かれていないとしても、この本を読み終わって何も受け取らないなんて人はおそらくいないだろう。 わかりやすく言えば「貧困と犯罪」の物語だが、そんな薄っぺらいカテゴリーに分類するにはあまりにもリアル過ぎる。 主人公・花が生きた世界は確実に存在し、花の

        • 終わりから始まる物語

          レモンの花が咲いていた。 むせるほどの香りを振りまく、可憐で清らかな白花。 うっすらと赤みを帯びたつぼみ。 レモンは実をつけるまでが難しい。 ひとつ実をつけるのに25枚も葉が必要らしい。 一緒に住み始めた頃、取り引き先の造園屋さんからレモンの木をもらったことがあった。 二人で大事に育てたが上手くいかなかった。 花はつけたが、実をつけることはなく病気になってしまったよね。 そういう話をぽつりぽつりと話しながら、二人で歩いた。 先週、元同居人とお別れ会をした。 ここは小田

        喪失と向き合うってそんなに楽じゃないんだよね、っていうこと

          誕生日ありがとう

          ただいまー、と帰ってきた彼の手にTOPSのチョコレートケーキ。 え、なんで?今日何の日?? と聞いたがニヤニヤ。 私の大好きなTOPSのチョコレートケーキ。 もう一緒に食べる機会がないからかな。 夕食の準備をしてるとピンポーンとインターホンが鳴る。 誰、と思ったら荷物の配達だった。 受け取り人は彼。 またなんか頼んだだのかな? ベリベリと包装をはがしながら相変わらず下手くそな鼻歌なんか歌ってる。 「午前0時を過ぎた~ら〜 イチバ~ンにとどけよ~お~」 え、まって、嘘で

          誕生日ありがとう

          すみません……言わせたみたいになりまして……

          すみません……言わせたみたいになりまして……

          ウイークエンドは小田原で

          火曜日は朝から雨が降っていた。 今日は引越し先に荷物がたくさん届く日だ。 ガス開栓の人から連絡が来たので、雨の中いそいそと向かう。 電気・水道とガスの再開をし、生活に足りてないものを揃える。 寝具はまとめてコインランドリーで洗濯して乾燥。 三年間放置されていたワンルームは、完全に三年前のままで時が止まっている。三年の間に増えた本を本棚に並べた。本棚も部屋も少しホコリっぽくて、掃除をしていると何度かくしゃみがでた。 くしゃみをしても一人、と話す相手もなく呟く。 二人で住んだ

          ウイークエンドは小田原で

          AM 7:25

          「俺としては、完全にこれでキッパリさよならというのはなんか嫌だ」 「うんまぁそれは私も嫌……かな……」 「たまにご飯とか一緒に食べたい」 「ただ一緒にご飯を食べるだけで楽しい日々だった……な……」 「うん……泣」 「……泣」 「彼女が出来るまでは話とかも聞いて欲しい」 「う、うん(うん?)」 「電話とかもしたい」 「はい」 「彼女出来ないかもしれないし。泣」 「それはまぁそうだね。笑。まだわからないよね……会ってもいないし……」 「あなたの方が男出来そう!」 「はっはっは。そ

          未来には勝てない

          ひとり暮らし用のアパートを借りていた。 ずっと。 何時でもここを出て行けるように。 彼と同居を始めてからも、ライフラインをしばらく止めることが出来なかった。 いつ追い出されても良いように。 ガスの開栓は立ち会いが必要だ。 日程を決めてネットで予約する。 電力会社には電話。窓口の人が出る。 すみませんずっと止めてたんですけどまた再開したくて、はいかしこまりました、ではお名前からどうぞ、と使用履歴を確認してくれる。 ああ、ありました、ちょうど三年ほど前にストップされてますね、そ

          未来には勝てない

          絶絶絶絶対観た方がいいよ

          観ました。 やっと観ました。 感想を仕上げずに放置していた。すみません。 やー、もう、最最最最高でした。 潔くて清々しくて大胆な改変をしてくれた脚本がもう最高です。12巻どうやって前後編でまとめるんだろう、って思ってたけど、凄いな!なるほどな! これは前後編で見るやつ。 もうね、ラストが圧巻で後編が悪いわけない。あげても大丈夫なハードルしかないし、絶対に裏切られない期待しかない。 マンガの映画化ってこうやってやるんだな、っていうお手本だよー。凄いよー。 レビューもめちゃ

          絶絶絶絶対観た方がいいよ

          これは正しい感情だろうか?

          ハンチバックをようやく読み終えた。 読み終えてから感想を書くまで一週間くらいかかった。 面白かった。 面白いというのが正しい感想なのかどうかはわからないが、素晴らしい文学だった、と感じた。 これは文学だ。 ページ数だけで言えば、他の本に比べたら圧倒的に少ないほうなのに、読み終えるまでに結構時間がかかった。 読んだ人はわかると思うが、一気に読むのがつらいというか、休み休みじゃないと自分はきつかった。 読み進めるのに体力がいる本だった。 この本が私の元に届くまでにどれほど

          これは正しい感情だろうか?

          ピーター・グリーナウェイ回顧展

          ピーター・グリーナウェイのレトロスペクティヴに行ってきた。 グリーナウェイは私が最も敬愛する映画監督です。 初めてグリーナウェイ作品に触れたのは、「コックと泥棒、その妻と愛人」、そして「ベイビー・オブ・マコン」 今でもこの二つの映画を鑑賞した時の衝撃は忘れない。 こんな映画、みたこと無い、と思った。 全く映画らしくない、動く絵画を見るような構図、詩のように美しいセリフ、退廃的でエロティカル、かつ極めて残忍で残虐。 帰り道の電車の中でパンフレットを握りしめながら、思い出し

          ピーター・グリーナウェイ回顧展

          落ちたのか、落とされたのか

          結局、わかんないんですよね、っていう。 「真実」って何なんだろうね、って。 わかんないことに対して、判決は出るけどね、無罪と出たところで「多分妻がやったのだ」と思いたい人がじゃあゼロになるかっていうと、そんなことも無く。 裁判もやるけど、お金と時間がかかるだけで、疲弊して摩耗するだけで、特に得るものも無く。 ただ、ただ。 全ての事が、そうだよなぁって。 全てがそうなのよ。 人それぞれが思う真実がある。 真実は人の数だけあると久能整君も言っていたけれど、もうこういうのっ

          落ちたのか、落とされたのか

          二月

          おはようございます。 雪が降ったりもしましたが、そちらは大丈夫でしたでしょうか。 節分も過ぎ、少しづつですが春が近づいている気配がします。(花粉も……) そういえば恵方巻きは食べましたか? 節分の日に、回転寿司屋さんの前で女性の学生さんのような方が寒そうに震えながら恵方巻きを売っていました。21時を過ぎていたと思いますが、酔っ払いに絡まれたりして大変そうでした。 せっかくなのでひとつ買って帰り、同居人と食べました。 同居人はインターネットで今年の吉方を調べ、iPhoneでそ

          耳 暇 解 消 計 画

          オーディブルを始めてみた。 ラインナップは最近の本が多いようだ。 ジャンルも様々で、話題になった本や、なんらかの受賞作品が多い。 買って読むほどでは無いが押さえておきたい本とか、過去読んだ本で読み返したいものなどを聞くにはちょうどいいツールかもしれない。 何冊か聞いてみたが、朗読者によってだいぶ物語の印象が変わる。 これはこれで面白いな、と思った。 演劇性の高い朗読(ラジオドラマのような)もあれば、淡々となるべく感情を込めずに読まれる本もある。 プロの声優や俳優が朗読して

          耳 暇 解 消 計 画

          十月

          干上がった川を歩いていた。 所々ぬかるんでいて足を取られながら進むと、気持ちの悪い川底の生き物たちと目が合う。 黒い立派な一匹の蛇が、とぐろを巻いてこちらをじっと見ている。 嫌だなぁ、怖いなぁ、と思っていたら不意にこちらに飛びかかってきた。 噛まれる、と思い咄嗟に大きく身を避けた。 肩に痛みを感じて、目を覚ます。 私はベッドから転げ落ちていた。 時計を確認すると2時45分だった。 最近夢見があまり良くない。 疲れているのだな、と思う。 仕事が激詰まっていて、プレッシャーも