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数え方(意味がわかると怖い話)

 久しぶりに高校の同窓会に行くことになった。本当に楽しみだ。特に飲み明かしてみたいのは梅田だ。あいつは昔から天才的に頭が良く、「理数の梅田」なんて呼ばれていた。本当に天才的に頭が良い人間っているんだなと驚いたものだ。そんな梅田も医学部に行き、今では脳外科医をやっているらしい。

「しかし、梅田が脳外科医なんて本当にイメージ湧かないな〜高校時代のそそっかしい姿ばかり見ていた俺たちからすると、おっかないよ笑」

「いやいや、俺は『天才・脳外科医』なんて言われているからな!」

「本当は手術とかミスってるだろ〜正直に言えよー」

「酒の席の話だから漏らすけど、手術ミスは片手で数えられるくらい・・・とは言わないが、両手の指で数えられるくらいしか無いぜ!」

「まあでも何十年も脳外科医をやっていたらちょっとくらいはミスは仕方ないよな!」

 その後も梅田や他の旧友たちとカラオケで盛り上がった後、帰宅した。昔の仲間はいつまでも楽しい奴らだ。

 それから一週間ほど立った頃だろうか。とある外科病院の医師が大量に手術ミスを行い、多くの患者を死なせているというニュースが入ってきた。死者だけで38人、後遺症が残った事例や治癒が可能だった案件なども含めると手術ミスは全部で1023件にも上り、史上有数の医療過誤事件と報道されていた。

 その渦中の医師として取り上げられていたのはなんと梅田だった。梅田がこんなことをしていたなんて。この前の同窓会で見せた朗らかな姿は嘘だったのだろうか。







答え
 両手の指で数えられる数は十進法では10までだが、二進法では1023まで数えることができる。一つ一つの指を上げるか下ろすかと考えられると、2の10乗通りになるからだ。したがって、「両手で数えられる数しか手術ミスをしていない」という梅田の発言は嘘では無かったことになる。梅田の名乗っていた「天才・脳外科医」は「天才脳外科医」ではなく、「(理数の)天才でかつ脳外科医」ということであり、手術の腕は最悪だったのだ。

 


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