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2023 Best Track60

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初めに

アルバムでやるなら曲ごとにもやるでしょ、ということで。むしろこっちが本番。

こういうランクって、同アルバム内からの選曲は基本一つ、どうしてもで二つな印象があるが、大手メディアでもなければ、シリアスなメッセージなんて欠片もなく。好き放題好きな曲詰め込んで参ります。

何が良いかなんてそん時の気分でいくらでも変わる。アルバム以上に、振り返った時に「なんでこんな順?w」となるのが常だが、これもまた勢いで。

どうでもいいが、Spotifyリンクで並べるとカラフルでかわいい。


最終更新12/28、30、1/06、1/07、1/09


選外傑作

今回は最初に。紹介しだすと無数にあるため、最低限。



SZA「Nobody Gets Me」
今作にて一躍時の人に。正確にいえば2022年作のためランキングからは除外。正直に言えば1stのほうが私は好きだが、大衆性=ポップにおいては2ndが上か。中でもこの曲は象徴的。


Parannoul「Into the Endless Night (After the Night)」
優勝。原曲も大好き。




60~51



60.Sigur Rós「Gold」
「いつでも歓迎するよ 一日の終わりに どうせみんな死ぬ」
ポスト・ロックを一躍世に広めたバンドがオーケストラに接近した今作からのメッセージとは、けして悲観的なものではなく。私たちは毎日生まれ変わることができる。それは黄金の光、旋律。



59.Mammal Hands「Labyrinth」
タイトル通り、永遠に脱出不可能な音の迷宮。インストだからこその表現。ジャズはお年寄りの聴くもの、なんてステレオタイプこそ迷宮に捨て置きたい。



58.ROTH BART BARON「Closer」
あたかもクリスマスソングのように響いて、歌詞は痛烈なアイロニー。日本語ではあまり聴かない表現を、三船雅也はいつも簡単に歌にしてしまう。



57.Black Country, New Road「Across the Pond Friend (Live)」
アルバムレビューの際に同じ、歌詞はそのまま惜別と旅立ちを表現したもの。「池の向こうにいる友達」というタイトルだが、その池からはもうお互いに行き来はできない。それでも私は行く。悲しくても、未来はあるから。これもまた桜吹雪を連想させる。春は桃色の喜び。



56.the band apart (naked)「A Name of New Era」
個人的に好きなバンドの別プロジェクト。元より夏楽曲が多いバンドだが、その夏の眩い光と愛すべき息子に、彼は「新しい時代の名」を見つける。次は君たちの時代だよ。そう告げるように。



55.Kelela「Contact」
夜へと繰り出したい。まだ遊んでいたい。実際に接しない=Contactしないとわからない。私たちを抑えつけるものはなにもない。
そんなストレートな夜の欲求をフロアに向けた享楽的なサウンドともに、彼女は歌う。どんな夜でも踊り明かして、また躊躇うことなく。



54.PJ Harvey「Prayer at the Gate」
「彼女はゲートの前で祈り続ける。世界とともに永遠に血を流し続ける者のために」
どこか神話めいた歌詞と、ポストアポカリプスかのような白黒の荒廃した世界。長いキャリアからの熟達された最低限の音の選択に、とても惹かれた楽曲。



53.Kara Jackson「no fun/party」
彼は彼女に言う。「君は面白くない(no fun)」と。ベッドで毎晩泣いたこと、その服はもう着られない、ベッドで描いたパーティを後悔するかも・・・
そんな正直な気持ちを歌ったのち、彼女は自らを慰めるように、最後にこう締めくくる。
「パーティを欠席したって謝る必要はない。誰かのパーティもきっと、あなたがいなくて寂しいだろうから」



52.Animal Collective「Soul Capturer」
愉快な音楽ともに「魂の捕食者」はやってくる。貴方をいくらでも蝕み、弄び、最後には死をもたらして。抵抗するならば、ただ歌うしかない。多分そんな感じ。



51.くるり「朝顔」
ん? これってかの名曲「ばらの花」別アレンジ? タイトルも花繋がりじゃん。とか思っていたら、本人noteにてはっきりと言及が。正直に言えば、やはり二番煎じにしか響かない。それでもなお音と歌詞は、私の心の奥のやらかいとこをくすぐってきて、揺れる。




50~41




50.what is your name?「21 and lonely」
入道雲が私を見下ろしている。夏と目が合うが、何も教えてはくれない。私はあの夏に取り残されたまま、今もうまく歩けない。

といった、エモ×夏の定番ノスタルジーをシューゲイズで包み込んだ一品。いつまでも大人になれない者たちへのテーマソング。そういうの弱い。



49.George Clanton「I Been Young」
酩酊感あるサウンドからタイトル通り「私は若かった」と後悔を口にするトラック。サイケデリックな音像がその苦悩をよく表現している。よくあるテーマではあるが、いつの世も誰かに響くものである。



48.Hotline TNT「I Thought You'd Change」
「貴方は変わると思っていた」
というタイトルから何やら意味深な歌詞が展開されるが、反比例するかのように音像は爽やか。しかし、よく聴けば歌い方にはどこか迷いがあるようにも思え・・・

それはエフェクターのある足元ばかり見る=正面を向いて真っすぐに言葉を伝える気はあまりないシューゲイズという音像とよくマッチしている、のかもしれない。



47.DJ Koze「Wespennest (feat. Sophia Kennedy)」
傑作アルバム「Knock Knock」から約五年の沈黙を経てリリースされた楽曲(もっともシングルカットらしき楽曲は別にあるが) 来る新作への期待も高まる。ただそれだけで嬉しい

曲に関しては、なぜだかスーツを正し、眼鏡をかけ、規律をしっかりと守り、まるで機械のようにただきびきびと働き続けるサラリーマンを連想させる。巣から「働きバチ(曲タイトルの意味は「スズメバチの巣」)が飛び立っていくかのように。



46.Jane Remover「Always Have Always Will」
抽象的かつ悲劇的な詩を歌いながら、そのスロウな音像ともに少しずつ死へと近づいていく。あたかもゆっくりと鼓動が止まるかのように。シューゲイズ音はまるで走馬灯のように視界は朧気。しかしただの自殺願望ではなく、死と向き合うことで生きる希望を見出す、ということ。

この作品から一曲を選出するのには大分悩んだが、個人的にはこれがベスト。



45.The Chemical Brothers「Feels Like I Am Dreaming」
曲タイトルがそのまま歌詞となり、それは永遠にリフレインする。ただ踊るためだけの音に、「夢を見ているような気分」。その通り。



44.Jamila Woods「Backburner」
意訳ではあるが、別れたパートナーに対し「よりを戻せないか。せめて友達にでも」と希う自分自身をメインコンロではない、その後ろにあるバックバーナー=後回し、二の次でもいいと比喩、巧みに表現した楽曲。

こういう表現はあまり国内では見られないもの。本当に関心する。つらい立場、悩みから少しでも光を見出そうとするバックトラック、メロディともよくマッチしている。ナイス。



43.BrokenTeeth「Spring」
春が来た。しかし君は去った。その空白を埋めるための希望という種を蒔いて、また花の咲く春を待つ。いつか前を向いて歩きだせるように。といった、誰にでも少しはある暗い時期から抜け出すための一曲。幻想的なシューゲイズ音は満開の花畑を連想させるような。

同じ韓国出身のParannoulを知ったことがきっかけではあるが、そうでなくとも本当に、近年はシューゲイザーが豊作であることを思い知らされる。確かにこれは豊穣の春かも。



42.Parannoul「Imagination」
前作と同じ時期からすでにデモでもあったのか、歌詞は「叶わぬ夢があっても私たちは大人になる。それが人生というもの」といった悲観的なものになっている。

しかし、音は「だからどうした」と言わんばかりに光り輝いている。まるで喜びの感情が弾けたかのようなラストは、彼が今、暗いトンネルを抜けた先にいる現状を見事に表現している。アジカンも歌っていた。「想像力で世界は変わる」と。



41.Mammal Hands「Sleeping Bear」
熊が眠っている
だなんて、実際そんな光景を見たら恐怖で小便をちびりそうではあるが、しかしこの楽曲はただただ平和である。聴こえないはずの小川の流れる音まで聴こえてきそうな。

突き詰めれば、この時代において重要な表現を的確に音楽にした素晴らしい楽曲なんていくらでもあるのだろう。しかしまぁ、つまることろ、私はこういったチルに弱い。ただそれだけ。




40~31




40.Yo La Tengo「Fallout」
タイトルと合わせ、「時の環から抜け出そう」という歌詞が印象的だが、相変わらず彼らは曖昧で、一体何を歌っているのかはよくわからない。具体的なメッセージ性がないのもまた、長くインディでいる証のような。

メインストリートにはない、どこか弱腰なサウンドが逆に気持ちのいいまとまりを生み出している。私はギタリストではないが、もし弾けるのならばこんな音でも奏でてみたい。



39.OGRE YOU ASSHOLE「家の外」
ジャケットや作品通して、どこか別の惑星の話をしているかのような彼らのサウンドは、直近で大きな変化はないものの、しかし確実にテイストの引き出しは増えているように聴こえる。

ミニマル、メロウ、クラウトロック・・・彼ら三種の神器はこの楽曲にも包括。ここからどんなアプローチを次は見せてくれるのか、今からでもフルアルバムが楽しみでならない。




38.The National「Send For Me」
「僕を呼んでおくれ。いつでもどこでも君を迎えに行こう」
とは一見ラブソングにも響くが、作曲された時期がコロナ渦だったことを知れば、また少し響きは変わってくるだろう。

アルバムのクロージング・トラックとなるが、最後には大抵こういったローテンポなナンバーが用意されているもの。作品を締めくくるに、また単曲として聴くにしてもグッド。つまりは、個人的な趣味。




37.Yves Tumorn「In Spite of War」

悪魔の衣装を身に纏い 天使も嘘をついている
ただ知りたいだけ あなたは味方してくれるのか

そんな歌詞が歌われる楽曲のタイトルとは「戦争にもかかわらず」
それはたとえ戦火の中にはいなくとも、我々の日常もまた時に戦争の中にいるような状況に追い込まれてしまうことを、彼は表現しているのかもしれない。




36.George Clanton「For You, I Will (feat. Hatchie) 」
アルバムのラストを飾る楽曲にて、いよいよ完全に薬がキまって、脳みそどころか全身がとろとろへなへな。沈む夕日とともに全てが溶解してゆく・・・これを気持ちいいと言わずして何という。

シューゲイザーをシグネチャーとするHatchieとのコラボも印象的だが、歌詞なんてほぼ無意味、彼女の歌うパートでさえただ気持ちよさに陶酔するのみ。最後の長いアウトロも合わせ、本当に合法薬物。「貴方のためにやるよ」って曲名はそういう?




35.Purelink「Pinned」
本当に好きな作品なので、せめてなにか一曲だけでもランクインさせたいという、完全個人趣味な気持ちだけで。

冒頭から一定のビートを刻むが、タイトルとは相反するように、いつの間にかまるで水に溶けていくようにそれは変化する。なんて説明するが、もうほんとに、全曲どツボです




34. Max Cooper「Swapped」
私も好きなJon HopkinsSigur Rósからの影響があることを公言している彼のサウンドは明確に、アクティブとチルが一つの作品に同居している。中でもこの楽曲は、近年の彼の中でも屈指の超ごりごりマッスルビート

あたかも深夜の高速道路をひたすらに最高速度で駆け抜けていくような。難しいことはなにもいらない。とにかくハイにさせてくれる一曲。




33.Lana Del Rey「Margaret (feat. Bleachers) 」
マーガレットのもとに、屋上から飛び降りようとする青年が現れる。彼女は彼を止める。「たとえ貴方の愛が困難であっても、わかる瞬間はある。だから諦めないで。明日が何をもたらすかは誰にもわからないから」

といった意訳をするも、本質はわからない。シンプルな友達の歌、と冒頭に彼女は説明するが、しかしラナのことだから、おそらくは多くの引用がこの楽曲にもあるのだろう。男女の掛け合いがデュエットという意味を成立させているが、しかしそんなことを差し引いても、ただただこの楽曲は美しい。




32. Sampha「Spirit 2.0」
約六年ぶりの再始動を知らせた楽曲は、とても静謐で計算された構築美の上に成立する、整合された綺麗なサウンド。それは今も昔も変わらない。

「自分自身や他者との繋がりの大切さ、存在することの美しさと厳しい現実。誰かに頼る必要がある瞬間を認める、それは本当に強くないとできないこと」

サンファ自身の言葉だが、特に最後の一文は本当にそう思う。人に頼れることができる。それも立派な能力の一つ。




31.Alfa Mist「Variables」
アルバムタイトルと同名の表題曲はいささか冷ややかであり、スロウなBPMは重く、テーマはシリアスに身体を圧す。しかし後半へかけて少しずつ青い炎は燃え上がる。このスリリングさこそ私がジャズに求める音の一つ。ひたすらにクール。




30~21





30.Sufjan Stevens「So You Are Tired」
彼の史実かどうかは定かではないが、タイトルのYouとはどうやらパートナーのようで、恋愛に疲れ切った相手のことを惜しみつつ、「それでもまだ君に恋をしていた」と歌うもの。誰しもが一度はある失恋の痛み。最後の一節、「僕は死に還っていくね」が痛烈。

ともすれば「女々しい」と言われがちな内容だが、もはやこの2023において、そんな言葉は唾棄すべきものなのだろう。よくあるテーマと言えばそれまでだが、だからこそ歌にするのも難しいというもの。しかしサウンドはどこからどう聴いてもスフィアンでしかない。そう言い切れるのがまず素晴らしい。

シンプルなメロディに、誰しもが共感できる瞬間。ポップかくあるべし。




29.James Blake「Tell Me」
彼のアルバムはこれが6枚目とけっして短くはないが、ここへきて自身最速のダンストラックが投下された。

全てが終わったら教えてくれ
あるいは
何度でも何度でも愛していると言ってくれ

タイトルそのまま「Tell Me」と我々に投げかけつつ、気分が良いか悪いかもわからないまま、彼は混乱しつつも踊り続ける。確かなものは「愛している」という言葉以外にない、とでも断じるかのように。

狂熱に身を委ねる必要も時にはある。あるいは、SEXの際のBGMとして。
これは偏見だけど、外人さんっていたす時に音楽を流してる印象が強い。どういう文脈でそうなったのかは気になるところ。

テーマはシンプルに、ただ肉体的に躍らせて心の快楽を得るだけのものなのかもしれない。それでも構わない。愛する人と繋がること。それは相手がパートナーでなくとも、またその先に破滅が待ち受けていようとも。ただ踊るしかない。この曲は、そんな刹那をこれでもかと真っすぐに表現している。





28.Wednesday「Quarry」
気の悪いばあさんがハロウィンにはでっかいキャンディーをくれたり、下着姿のまま喧嘩する両親に育てられた兄弟は脊柱側弯症になってしまったり、ジョージはコットン畑に火をつけて、ユダヤ人一家の子は宣教師の家の子を妊娠させたり、最後にはマンディとそのボーイフレンドの家から拳銃とコカインが出てきて、二人が手錠にかけられる姿を見つめていたり・・・

タイトルである、とある「採石場」の周辺で起きたことがそのまま歌詞になっていると思われるが(あるいはフロントマン「Karly」という名前とのWミーニング?)、すべてのエピソードのあとに、フロントマンであるカーリーは逐一こう歌う。

私たちは後からそのツケを払わせるハメになった
死ぬ前に清算しなくちゃならなかった
それでも私たちはひたすら限界まで突き進む
熱を感じられるなら 燃やし尽くしたっていい

そして最後のサビ後にだけ、そっとこう付け足す。

諦めたそのときに 私たちは眠りにつく

これはあくまでもカーリーの物語だが、同時に私たちの日常もまた、ほとんど同じようなものなのかもしれない。自分語りを歌に換えて、それでいて不思議と共感できてしまえる、そのソングライティングが本当に素晴らしい

イントロのドラムのライド音が、まるで何気なく吹いてくる風を感じさせるような、そんなただの日常が過ぎ去っていく中にも、私たちにはドラマがあって、ただ懸命に生きている。情熱を感じられるなにかに向かって。熱が感じられないなら、それは生きていても死んだようなもの。その感覚に、私はとても共感ができた。

メンタルがやられていた時に私はこの曲を聴いて、その爽やかな風とともに、少しずつただの日常に戻ってゆけるような、そんな感覚を思い出すことができた。個人的に大切な一曲。





27. Wednesday「Chosen to Deserve」

私たちはいつでも最初はいいところだけしか話さない
だからあなたに思い知らせてあげる
自分が何に志願して 何を扱っているのか

と、あたかも長年連れ添ってきたパートナーに訣別を決めたかのような歌詞で、この楽曲はスタートする。

実家にいる時は吐くまで呑んで、友達とベナドリルでラリって。夜中に隣人の家のプールに忍び込んだり、ハナミズキがある袋小路、SUV車の中でヤったり。週三しか学校に行ってなかった。アルコールなら何でも水で割って飲んだ。道端でおしっこして、今じゃどんなドラッグにも若干飽きて、見渡す限り何もかもが悲しく見える・・・

そしてすべてのエピソードのあとに、彼女はこう歌う。

私はそういう女だよ
それにふさわしい人間としてあなたが選ばれたんだよ

この楽曲もまたサウンドだけなら普遍的な日常を描くような、からっと晴れた日にでも聴きたいポジティブなエネルギーを感じられるが、しかし歌詞は中々に辛辣かつ皮肉である。

そんなうだつのあがらぬ自己申告を、同じようにどこか気の抜けた音の上で、彼女はへらへらと歌う。今や大きな成功を収めたインディー・バンドのフロントマン。アイドルだって恋に落ちるし、うんこもする。それでも、せめて舞台上だけは誰よりも取り繕って、輝いている

そんな感じ。完璧な人間なんていやしない。世界平和なんて到底無理。だからこそ、誰もが目指そうとするその想いが何よりも尊い。多少欠けて汚くったっていい。そんな日常を、私は愛していたい。ナイスソング。




26. Indigo De Souza「Younger & Dumber」

私は若かった
若くて愚かだった
それをよく知らなかった

MVを観てみると、ティーンというよりかはキッズのころを指しているようだが、とにもかくにも、大人になってからでしかわからない親の愛や、その他にも色々、「間違ったことをしてきたな」と振り返ることは誰しもあるように思う。

それは若さに限らず、どんなに有能な人間であろうと、イメージ第一な有名人であろうと。思い返して「なんであんなことをしたんだろ」、と考えてしまう経験が一度もない人間なんて、この世に一人もいやしない。誰もが間違えながら、生きて死んでゆく。

この楽曲が収録されたアルバムのタイトルとは「すべてに終わりがある」
アルバムの最後に位置していることもまた象徴的。悲しみに暮れながらも私はまだ生きている、という明日への力強さを、この楽曲からは感じられる。

その日が来るまでに、私もまた色々と間違うのかもしれない。それでも、どんな日常にも終わりはあるから、だからこそ、今を懸命に生きる。生きられる。残された時間で何ができるのかを、最後のその日まで考えながら。





25.Squid「Swing (In a Dream)」
24.Squid「Siphon Song」
どうしても一曲に絞り切れず、なんなら全楽曲ここにぶち込みたいぐらいに、このアルバム「O Monolith」には統一性がある。

抽象的だがとにかく不穏な歌詞とそのサウンドは、モノリスというタイトル通り、どこか異世界から謎の未確認物体が長い時間をかけてこちらににじり寄ってくるかのような、そんな恐怖感がある。

その正体は最後までわからない。だが、それがいい。何もわからないからこそ面白い。そんな感覚を音楽から追体験できる。不意に映画「メッセージ」を思い出す。あの映画むちゃくちゃ好き。





23.Yves Tumor「Echolalia」
「反響言語」
というタイトルは一見オウム返しと捉えることもできるが、しかし調べてみるとけっして良い言葉ではない。「私の考え方はこんなにも不自然」という歌詞からも、自分自身に対する混乱や不信のようなものも感じ取れる。

その統率のとれないばたばたとした慌ただしいサウンドは、特にビートに上手く表現されているように思う。ひとたび耳にすると、私はどうしても踊り出すことを止められない。

彼もまたどこか別の異星から出現したかのような、まるで未確認生物の奏でる音楽とは、誰しもが自らの身体に潜む悪魔と仲良くなるためのBGM。さぁ、闇と踊ろう。こんな音楽でもかけて。






22.Alfa Mist「BC」
タイトルが何を指すのかはわからないが、アルバムレビューの際にも記した通り、この楽曲は即興演奏による収録。誰もどんな未来になるかはわからないことをテーマにしたアルバムの最終楽曲として、これほどふさわしいものもないだろう。

紛いなりにもドラムをしばける身としては、ジャズドラムは本当にクール。そうでなくともすべての音がとにかくスリリング。たとえば、未だジャズの印象として根強い、BARなんかで流してしっぽり飲むためのBGMにはおよそそぐわないだろう。

(ちなみにアルバムの大半は彼女による演奏)


あたかも楽器同士で対決するかのようなソロパートなんて、お互いがひりひりと目線交わしつつ、テーマに戻る際はにっこり。そんな光景も想像できる。

私の好きな漫画「ブルージャイアント」から、主人公の宮本大も最初はこう言っていた。これJAZZ、なんかハゲしい感じなんだわ」
別に感覚だけでいい。わかんなくても感じればそれでOK。音楽っていいね。





21.Sofia Kourtesis「Funkhaus」
タイトルは造語だが、音にしてもわかりやすくファンク+ハウスだと思われる。ただただ身体を揺らすための、黒いビート。

10分以上に伸ばしたクラブエディットも欲しいくらい、永遠に浸っていたい。ただただかっけーす。完全個人趣味。直近四つ打ちがツボな私に、この時代よ。そりゃお腰もくねくねです。





20~11




20.Sofia Kourtesis「Cecilia」
タイトル「セシリア」は人名だと思われる。元々アルバム別楽曲には母親の病気を治した医者の名前がタイトルとしてあるため、この名もまた、そんな闘病を支えた一人だと推察す。事実は不明。

つまり選曲理由は同アルバムから選出した21番目にほぼ同じ。こちらはチルな印象があるが、それでもイントロのパーカッションから超ゴキゲン。このアフロビートはまさしく彼女の武器であり、またシグネチャーとなるのだろう。今すぐに2ndアルバムが欲しいくらいに好きです。




19.Jessie Ware「These Lips」
歌詞からもよくわかるが、「二つの唇」という言葉が頻発するにストレートなパートナーソング。舞踏会にて、手を繋いで踊る二人が易々と想像できる。

アルバムレビューの際にも触れたが、この楽曲はアルバムの最後に位置するもの。最後まで壇上で踊り続けながらも、最後は颯爽と舞台から去っていくかのようなこの楽曲から、どこまでも首尾貫徹な彼女のステップに惚れ惚れとしたのです。




18.Yo La Tengo「Sinatra Drive Breakdown」
クラウトロック調の平坦だが腰の強いビートの上を、歪んだギターが好き勝手に響かせる、彼らの十八番的ナンバーの一つ。

歌詞はあくまで音を邪魔しないためか、何について歌われているのかはよくわからず。アルバムタイトル、薄暗いジャケット、楽曲に合わせて反復される「君の瞳、君の愛。みな、壊れてしまうまで」というフレーズに、最後の一節「君と遥か遠く離れたまま」・・・作曲時期も鑑みるに、コロナ渦が何かしら影響していることは間違いないように思う

閉塞感を打開するかのような、へたりこんだままのような。完璧でなく、どこか隙のある緩いサウンドもまた彼らの持ち味。けして歴史には残らなそうな、だけど良い曲。そんな絶妙な立ち位置が、私は好きです。




17.Parannoul「불면증 (Insomnia) 」
インソムニア=不眠症から、眠ることによって迎える朝に怯えるテーマ性があり、それは誰しもが一度は感じる「朝なんてこなければいい」という半ば自殺願望的な発想は、このアルバムにある「魔法が解ける恐怖」とリンクしているようにも思う。

しかし最後にはそんな感情を振り払うようにこう歌う。

朝はもうこわくない
月明りは昼間には照らさない

シューゲイズを土台にしつつロックバンド然としたサウンドながら(とはいえ今作も前作同様ほとんどが打ち込みだとは思うが)エレクトロ要素もあり・・・

前作にはなかった変化も含め、やはり彼はもう、眩しいばかりの朝の光を享受している。そんなふうにも思えたり。アウトロの電子音が最高のアレンジ。あの数秒のために聴いてるまである。




16.King Krule「Pink Shell」
タイトルは何かの比喩だとは思うが詳細不明。一見やらしい言葉の響きもあるが、そうでないことはこの錯綜とした歌詞とサウンドが証明している。

収録されたアルバム全体のムードはいつも通り退廃的でメロウなのだが、冒頭に設置されたこの楽曲だけはいつになくスリリング。曲の短さもあり、気づけば何度も聴いてしまう中毒性もあり。アウトロのアンサンブルはいつ聴いても癖になる。個人的お気に入りナンバー




15.cero「Fdf (e o) / エフ・ディー・エフ (イーオー)」
歌詞にもある通り、タイトルは「Flash Disc Flight」の略称。七色に光り輝く円盤(宇宙船)にノって月を目指し、そこで踊り明かそう。そんな感じ。

歌詞も特に深い意味はなさそうで、ともすれば踊るためのリズム合わせ、およそ記号にも近い。しかしアルバム全体を通して「宇宙」を連想させる言葉、音像がある中、この楽曲もまた見事にそのカラーに統一されている。

イントロからインベーダーが墜落して爆発するような遊び心あるSEもまたナイス。しかしそんな要素が一切なくとも、この16ビートは歌いながらもとにかく踊れる。それだけで良し。リリースは2020ながら、アルバム収録によって見事に直近ダンス・サウンドの潮流にもノったトラック。




14.Black Country, New Road「Turbines / Pigs」
自らを魔女と見立て、箒にまたがって空を飛んでいる時、下には「風車(Turbines)」が回っていた。「あなたの真珠を私で無駄にしないで 私はただの「豚」だから」と、仲間との別れを惜しみつつも彼女は自らを卑下しつつ、こんなところからは早く去ったほうがいい、とも促して。

否応にも出会いと別れを想起させるにリリースされた本作からの楽曲にて、アルバムレビューの際にも言葉にした通り、やはり私はこの音にどうしても桜吹雪を連想してしまう。それはこの島国でのモチーフであって、UKを拠点とするこのバンドにはあまり関係がないはずなのに。

箒もしゃぼん玉もなしで
あなたは自分で飛べるようになった

そう歌ったのち、今までせき止めていた涙のダムを崩壊させるかのように、バンドは音を爆発させる。ヴォーカルを務めていたアイザックの背中を送り出すのは、やはり悲しみではない。その桃色の涙は、喜びだ。


(ただの偶然だろうが、奇しくも推しが最後に残した壁紙もまったく同様のものとなった。歌詞もまた「魔法がなくたって貴方は飛べる。どこにでもゆける」と、あたかも彼女の背に向けて語っているかのよう。これから先、桜を見る度に私はこの楽曲を聴いては思い出すのだろう。ある一人の魔法少女がこの世界にいたということを)




13.Róisín Murphy「You Knew」

私が燃えるような想いを抱いていることを
あなたはずっと知っていた
でも、あなたは一緒にいてくれない
私を突き動かしているものを
レコードが示すと信じている

翻訳そのままの歌詞となるが、最後の一節がどういう楽曲なのかを端的に表しているように思う。しかし、そこに至るまでの歌詞は何だか意味深。「あなたは知っていた」と執拗に問いただす姿勢は、四つ打ちキックの上に幾度となく反復されるフレーズ。

音との親和性も合わせ、まるで底の見えない黒い渦に飲まれては戻れないこのループサウンドは、ダンスミュージックという器にぴったりと当てはまっている。その表現にしてやられつつ、シンプルにクールな音も評価したい。マジでかっこいい。





12.Yo La Tengo「Miles Away」
19にて同アルバムからの楽曲を紹介したに同じ、この曲もまたコロナ渦の閉塞感と、ろくに対策や整備をしない機関をMiles Away=ぼーっとしている、と痛烈に皮肉っているように聴こえるが、やはり真意は不明。

しかし、そのサウンドはタイトル通りどこか遠くから響いてくるかのような、空間音響の広がりをたっぷりに含んでいる。あたかもあの世から霊が手招きするかのようなサウンドとは、曲タイトルを的確に表現しつつ、同時にYo La Tengoの引き出しの広さも見事に表現している。

静と動は二つで一つ。両方が混在するからこその美しさを惜しみなく音にする彼ら、またこのアルバムの最後を締めくくるにこれ以上ない楽曲。





11.くるり「真夏日」
誰しもが経験したあの夏の日の想い出と香りを、岸田繁は叙情たっぷりに綴る。青春時代から大人、そのあとへと続く歌詞に同じ、長い長い時間をかけて。まるでゆっくりと散歩でもしながら、隣から語りかけるように。

時折耳に入るファズ・ギターは真夏の蜃気楼。安っぽい言葉にはなるが、この侘び寂びとはこの島国特有のものであり、夏の名曲はこの世に数あれど、ここまで静かく深い、それでいて誰にでも馴染みある風景を切り取ったものはそうないように思う。

真夏の夜を迎えるたびこのファズを思い出しては、風鈴のようなライド音を懐かしく感じて、終わらない暑さの終わっていく夏に、少しの寂しさを覚えるのだろう。この先も、ずっとずっと。ずっと先の、真夏の日まで。






10~1





10.Jessie Ware「Begin Again」
女王様のお通りだ!
そう言わんばかりの盛大なファンファーレとともに、彼女は舞台へと君臨する。

うだつのあがらぬ自らの人生に対し、曲タイトル通り「もう一度やり直せる?」と自問自答する歌となるが、音像からしてすでに答えは出ているようなもの。

推し活の際に幾度となく言葉にした「つまんねぇことに割く時間なんて一秒もない」、という自らの価値観の強烈な後押しともなったこの楽曲は、今も耳にするたびに私を奮い立たせてくれる。

もう一度? 生温い。何度でもやり直そう。どれだけ失敗しようとも、この命ある限り何度だってやり直せる。少なくともこの世界には、Jessie Wareとこんな曲が鳴り響いている。





9.Wednesday「Bull Believer」
自らをBull=雌牛と喩え、誰かがジャンキーとなるもそれを止められない絶望感を、後半Beliverでは若き日の最悪な思い出(意識が飛んで鼻血が止まらない中、あなたはモータルコンバットで遊んでた)を綴り、最後にはこの言葉をとって、ついに雌牛はステージ上でマイクを握りしめ、ギターをかきむしり、こう叫ぶ。

私を信じてよ、信じる者よ
あいつにとどめを刺して

彼女曰く、この楽曲はステージで叫ぶための口実。曰く「髪を切って、その髪にある歴史を手放すような気分」だそう。想い出や言葉はとてもパーソナルだが、しかしこれもまた、誰しもが一度は経験するような、そんな悲しみと怒りの感情に満ちているように思う。

楽曲そのものの強度としても申し分なし。まずこのアルバムからのリリースカットがなければ、そもそも私はWednesdayなんぞ見向きもしなかっただろう。

雌牛は今日もただ言いたいことを音楽で表現し、その身勝手な感情を振りまきながら、しかしなぜか共感できる音を、ステージから世界へと不特定多数に共有している。これをポップと言わずしてなんという。




8.cero「Angelus Novus / アンゲルス・ノーヴス」 
「宇宙」がテーマにありそうなアルバムの最終楽曲とは、まるでエアコンをつける音と、何やら本のページをめくる音から開始される。ともすればこのアルバムとは宇宙へ向かったのち、その「宇宙から地上へと還るストーリ」、なのかもしれない。

最後には完全に宇宙へと放り出され、そのまま戻ってこないかのような浮遊感あるサウンドだが、その実ゆっくりとまたこの星へと降り立つためのサウンドトラックだった。

街は夕凪
嵐がくる
楽園から吹きつける
透明な未来

とくに翼ももたない(もてない)私たちはその嵐を、本でも読みながら地上で待っている。今か今かと、またその風で宇宙へと飛び立てないか期待して。

本当に風を感じられそうなその音とともに、終わりとも始まりとも捉えられそうなこの楽曲は、いつイントロが流れてもスキップしたくない魅力がある。個人的好きトラック。アルバム最後の曲は大体好きになっちゃう傾向あり。





7.Slowdive「Shanty」
抽象的な歌詞の中、反復される「夜が押し寄せた時には」というフレーズが印象的。そのサウンドとともに、もう後には引けぬ覚悟を決めたかのような。

「すべては生きている」というアルバムタイトルのオープニングナンバーと鑑みれば、ともすれば最後には死が待っている。それでも生きている以上前に進むしかない。そういったある種の諦めも多少は含まれているのかもしれない。

そんなメッセージがあるかどうかは別として、Slowdiveという、マイブラに次ぐシューゲイザー・バンドの新たなサウンドがこんな音だったという事実。ただそれだけで、私は嬉しかった。

すべてを凍てさせる吹雪の中にいるかのようなこの曲とともに、私もまた生きる覚悟をもって、もう少し前に進んでみたい。吹雪で視界が霞む絶望から、それでも力強くその先を見据える音とは、けして後ろ向きなものではない。自ら未来を切り開いてゆける、そんな一縷の希望が、この楽曲にはある。





6.Róisín Murphy「The House」
最初の一秒からゴキゲンなナンバーだが、歌詞もその通りといったところで、ダーリンとともに過ごす「その家」はまるで何度でも繰り返すハネムーン。まるでハート型のプール。はは、お惚気もいいところ。
(ステラビスタ、トト、バーミリオンサンズといった固有名詞もあり、何かしら私の知識では及ばない引用は多分にあるかと思われるが)

イントロから最後までほぼ断続的に続くギターフレーズがとにかく印象的。十六分を活かしたファンキーなリズムは、その陽気さとともに、思わず身体がうずいてしまう。

これまで数多くのダンストラックを世に繰り出してきた、彼女のなりのまた違ったアプローチによるダンスナンバーは何よりもポジティブなサウンドに。必ず最後に愛は勝つ、とまでは言わないにせよ、やっぱり最後にものをいうのはきっと、ひたすらに前を向いた音。そう信じられる。




5.The National「This Isn't Helping (feat. Phoebe Bridgers)」
サウンドの印象は困難に立ち向かうかのような力強さが感じられるが、しかし歌詞は「君は何の慰めにもならない 優しさだと思っているけど、そうじゃない」といった、冷たく突き放すものとなっている。ここではゲストとして参加したPhoebe Bridgersが「君」の相手役となっているようにも思う。

あるいは、大切な君を巻き込むわけにはいかないと孤軍奮闘するためのファイトソングなのかもしれない。「僕はここで自分を責めながら涙を堪えている」といったフレーズもあり、それは「このあやまちは私一人で償わなければならない。誰の手も借りてはいけない」、という決意とも捉えられる。

「君はあらゆるものに美しさを見出す」
「君が努力しているように見えないのは納得がいかない、君は正しかった」

そう伝えながらも突き放すのはきっと、君と離れたいわけじゃない。

間違いを認めながら時に弱さもこぼれ、それでも独り前に進む・・・誰にでも一つぐらい、自分自身でしか解決できない問題と衝突することはあるはず。これは、そんな人間のためのサウンドトラックなのかもしれない。






5.Jessie Ware「Pearls」
冒頭「私は少し危険なことを望んでいる」と自己紹介しつつ、

月に行きたい 行かなければ一生辿り着けない
ロマンスに迷って、ただ踊ろう
真珠が落ちるまでシェイクしよう

といった、まるで火遊びに抵抗のある相手を口説き落とそうとしているかのような、そんなちょっぴり危険な内容となっている。

そんな気の強い女王様のBGMとは、やはり何があっても私は無敵といった具合。こわいものなんて何もない。できないことすら何もない。ゴーイングマイウェイ。見渡す限り、すべては私のためにある。その気になれば月にも行けちゃう。

どこまでもポジティブなサウンドに、裏拍を活かしたリズミカルなビート。火遊びなんて微塵も興味はないが、このエネルギーにはとかく共感できる。音が流れ出したが最後、まるで腰をくねらしながらランウェイのど真ん中を歩きだすかのような。

その気になればきっとなんだってできる。眩いまで輝きを放つその希望は、いつだって真珠のように白く美しい。






3.Lana Del Rey「Did you know that there's a tunnel under Ocean Blvd」
アルバムレビューの際にも記したが、この長いタイトル「オーシャンブルバードの下にトンネルがあることを知っていましたか」、とは、実際にある地名にて彼女が赴いた際、「そのトンネルの美しいモザイク天井は綺麗なままだが、今はもう封鎖されている」ことから、「(このトンネルのように)私はまだ誰にも見つけられていない。忘れないで」と願うものとなっている。

この楽曲がきっかけでそのトンネルは注目を集め、再開発が決定。2027年にはハードロック・ホテルの一部、酒場となる予定らしい。誰も知らなかったトンネルはラナによって見つけられ、光を浴びることとなった。

この楽曲もまた、誰しもが一度は共感する普遍的なテーマのように思う。私はここにいる。いつか誰かに見つけてほしい。それはただ恋愛事だけでなく、また相手が人間でなくてもいい。才能や、努力したであろう頑張りに対して、etc…自分自身でも気づかない魅力があるならば、それはいつか誰かが見出してくれるもの。

実際に目で見たものからインスピレーションを感じ取り、巧みな比喩表現で音楽へと昇華する。その一連の技術にも脱帽だが、何よりもサウンド、美しい歌そのものがテーマに負けぬ強度となっているということ。

彼女のような有名人だからこそ、表面ばかりで本当に気づいてほしいものは誰も気づけないのかもしれない。それでも、私はこの美しいトンネルを探し出すことができた。この音楽は、ただただ素晴らしい。

私もまた、未だ見ぬ美しさをこの世界から探し出してみたい。私なりの推し活を貫き通した結果、おそらくは私しか知らないであろう魅力を、彼女の中から見つけ出したように。






2.cero「Nemesis / ネメシス」
アルバムのテーマ、また二曲目に配置されたことを鑑みれば、この楽曲とは宇宙へと飛び立つ際のBGM。また未確認生物の鳴き声のような音も聴こえてきて、おそらくはリリース直近で放映された「シン・エヴァンゲリヲン」の影響下にあると考えらえる。宇宙というテーマとも親和性がある。

あたかも少しずつエンジンが点火していくかのように、楽曲もまたイントロから少しずつ音数は増えていく。そのクレッシェンド進行に比例して気持ちも昂り、私たちは宇宙服のなかの未来に期待をする。聴く者の身体もまた少しずつ地上から離れ始め、艘はとうとう人跡未踏の荒野へと繰り出してゆく。

「また会おう」 お別れのとき

フレーズはシンプルかつありがちながら、この楽曲においてはとても力強く響く。それは惜別の悲しさなんかじゃなくて、誰も知らない未来へと一歩を踏み出す者の恐怖を蹴散らし、楽しみとさえ感じさせてくれる。

つまりこの楽曲もまた、何もわからない先へ進むことはけっして暗いものではなく、あくまでもポジティブであるということを音で表現したもの。

そんな楽曲と出会えたことに、私は救われ、また感謝したい。これから先もまた、私は何度でもこの楽曲に身体を宙に浮かされては、未だ見ぬ宇宙と未来に希望を見出すのだろう。たとえ明日、この星が粉々に砕け散る事実を知ろうとも。






1.Parannoul「북극성 (Polaris)」
アルバムレビューでも紹介した通り、もうずっと彼は、星の光すら届かないような暗い部屋に、誰にも見つけられずずっと独りだった。まだ若いとはいえ、誰しもが一度は感じる閉塞と孤独に、あるいは絶望をも覚え、「私に未来はない」と、その命ですらも絶ってしまうのかもしれない。

しかし彼は、夜明けの空に北極星(ポラリス)を見つけ出した。まるで私たちリスナーが、暗い部屋にいる彼の音楽を見つけ出したかのように。

その喜びを最大限にまで音楽にし、ポジティブな言葉をそこに乗せる。けっして偽らず、誰よりも真っすぐに。そして中盤、その喜びはとうとうビッグバンのように爆発する。まるで新たな星が生まれるかの如く。その喜びの中、彼はこう歌う。

キラキラして落ちろ
燃え上がれ もっと大きく もっと明るく
大人になったら月になるよ
明るすぎず暗すぎず

僕は魔法にかかったまま
夢を見て歩いていく
僕は魔法にかかったまま
前へ前へ

願いを祈って受け入れて
嘲笑は私の原動力
それでもまだ輝いている
私の夢 私の身体 私の人生


何度でも言うが、彼の音楽にはドラマがある。この素晴らしい音ともに、それを知ってしまったのなら。彼は私たちに「魔法をかけられた」と歌うが、それは違う。私たちが貴方に魔法をかけられたのだ

ならば私も貴方と同じように、諦めかけたもの諦めずに、もう少しだけ生きてみたい。未だ見えない自分だけのポラリスを、夜明けの空に探しながら。






終わりに

アルバムは大変だったけど、トラック単位なら楽勝だろ。はい、むちゃくちゃ甘かったです。いざ文字にしようとするとこんなにも難しいものだったとは・・・しかもどんだけ時間かかんだ・・・

しかし、ただでさえサウンドだけでも好きな楽曲たちのバックボーンを調べるうち、その理解もさらに深まり、これからまた楽曲を聴くのがさらに楽しみになったのもまた事実。総じて、良い経験となった。

もう一度できるかと言われれな腰は重い。正直調べることをスキップしたものもある。でも、それは相対的に、毎年こういうことをしている人って本当に愛があるんだなと痛感することができた。素晴らしすぎる。

2024の終わりにもまた、私にそんな愛があるのならば是非やってみたい。


2023はシューゲイズとダンスに染まらされた一年。社会情勢を鑑みれば、何も聴きたくないと音の壁で鼓膜を覆って、最後には踊るしかない・・・といった、無理矢理だがそう当てはめることもできる。さすがに強引?

2024はどんな世界になって、どんな音が響くのだろう。楽しみにしています。







00.Parannoul「After the Magic」
長い長い前置きとなったが、私が本当に紹介したい楽曲とはこの一曲。リリース日は1/28と初聴きした時からずっと口に出したかったが、縁起でもないものだったためぐっと堪えていた。

アルバムと同じタイトル「魔法のあとに」から、歌詞に至るまで。我が推し「勇気ちひろ」といつかさよならを告げる際に流れる音とは、もうこれ以外に私は考えられない。まるでその時の彼女の心をそのまま音楽にしてしまったような。

すべては音と言葉が物語っている。翻訳サイトで訳した味気のないものとなるが、丸々その別れに相応しい言葉として残しておきたい。



私たちはゆっくりと学んでいく
魔法が消えて扉が開くとき
夢もまた消えてゆく
いつかまた、どこかで会えるかな

翼を広げ
暗闇を抜けて

私の心には妖精がいる
幼い頃に連れていってくれた
夜明けのトンネルの先へ

翼を広げ
暗闇を抜けて
願いを込めて

私を忘れないで
私を忘れないで
私を忘れないで
忘れないで



最初で最後の推しへ。
ごめんなさい。
ありがとう。
さようなら。

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