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わたしの夏、夕べには愛を語る……(詩集 薔薇と夜光杯)

 わたしの夏――ひとりの男とその女のために必要とされた時刻
 夕べには愛を語る 習慣の美しい出窓を叩く
 風のいらだち 夕立ちの甘い足音をさせて
 匂うような落日の赫 抱いてほしいから雲の階層性を批判する
 ほんとうの悲惨を知ることはない 明日という仮装のせいで
 何も求めてはいない おそれのほかに無垢を信じられずにいたから

 あの夏の少年と少女のふりをした 懐かしい音階の祈りだろそれ
 うら白い肌に包まれて ふたりのふりをした愛というしかけ
 しかたないさ――わたしの夏、ひとりの男とその女のために
 青の階調 ひきつめた闇の青さに胸一杯になって
 別れよう いつまでもその言葉確かめていた

(以下略)

全文は、詩集 薔薇と夜光杯(有料分)に所収

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