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『香川にモスクができるまで:在日ムスリム奮闘記』 岡内大三

『香川にモスクかできるまで』…香川県にモスクを作るなんて、とても大変そう。「探検についてのブックガイド」として川内有緒さんが挙げていたリストの中の一冊。東京や横浜、大阪、神戸だったら多様な国籍の人がいそうけれど、香川?なぜ?

香川で溶接工として働く、長渕剛ファンのインドネシア人のフィカルさん。日本人の奥さんと娘たちと暮らす彼は、香川にモスクを作りたいと言う。

この本を読んで知ったが、香川県には、2022年時点で約800人のインドネシア系ムスリムからなるコミュニティーが存在する。(モスクにはもちろん、他のムスリムも集えるようにする。)ムスリムたちは技能実習生、そこから日本で働くことにした人、留学生たちがいる。

フィカルさんたちは外国人ゆえに、日本人から冷たい目で見られたり怖がられたりするし、不動産もなかなか貸してもらえない。地方都市にモスクを作るなんて、資金集めはもちろん、差別にだってたくさんあうだろう。辛いだろうからやめとこうよ…お祈りならどこでもできるし…と私なら挑戦すらしないのだが、フィカルさんたちは違う。よりによってコロナ禍、収入もさほど多くないだろう技能実習生や留学生、介護士などから数千万円を集めきる。

ムスリムたちにとってモスクとはどういう存在なのか、アッラーの教えを実践するとはどういうことなのかがこの本を通じて少しずつ伝わってくる。日本で生きてきた私にはなかなか感じることのない「生活に根付いたお祈りの大切さ」「互助の精神と実践」を彼らの行動から教わる。以前、代々木上原のモスク「東京ジャーミイ」できいた日本人ガイドさんの言葉が印象に残っている。「ムスリムはイスラム教に勧誘をしません。自分の姿を見せるだけです。」

日本の人口は減っており、少子化に対する有効な対策は講じられていない。今後の日本を考える上で、移民を視野に入れないのは現実的ではないと思う。だったら協力して、共に発展する仕組みを作った方がいい。この本を手にした後、イスラエルで惨劇が起きた。少しでも禍根を食い止められますように。日本ではムスリムも、日本人も、移民の人たちもいい感じに共存しているよ、という例ができていきますように。

『香川にモスクができるまで:在日ムスリム奮闘記』岡内大三

「すぐそこにある荒野。そして34冊の冒険書」川内有緒



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