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映画「アダミアニ 祈りの谷」

 ジョージア(グルジア)が舞台の映画だ。
 東ジョージアの山岳地帯パンキシ渓谷、チェチェン紛争で難民となったレイラは、シリア内戦で二人の息子を失う。レイラは娘マリアム、両親とともにゲストハウスを始める。いとこのアボは旅行客をコーカサスの山々を案内するガイドをしているが、戦争の重いトラウマに苦しめられていた。
 やがて、アボとレイラは戦争で荒廃し谷に残された負のイメージを払拭すべく旅行会社を作ることになる。だがある日、テロ容疑でパンキシ渓谷の青年が殺害され、新たな分断が生まれてしまう・・・
 チェチェン紛争で「テロリストの巣窟」の汚名を着せられたパンキシ渓谷で暮らすチェチェン系ジョージア人「キスト」の人たちを3年間にわたって記録した日本・オランダ合作ドキュメンタリー「アダミアニ 祈りの谷」。
 監督・撮影・編集は竹岡寛俊、編集はHerbert Hunger、音楽はJulien Marchal、共同プロデューサーはJia Zhao。
 日本各地で順次公開されているところ。
 ジョージアというのは空から見ると周辺地域と違って緑が多く、荒涼とした地が続く中東地域とは対照的だ。それゆえにジョージアは古くから多くの侵略者たちに狙われてきた。モンゴル、ペルシャ。
 そしてソ連の構成国にされ、1990年代に独立するまでそれが続いた。今も国境を接するロシアとの関係は緊張をはらんでおり、ジョージアはEU加盟を申請しているところだ。生き残りのためのバランス外交だ。


 ジョージアは8000年という歴史を持つ世界最古のワインの国。映画の舞台パンキシ渓谷はワインの生産地としても有名なカヘティ州にある。
 コーカサス山脈から流れるアラザニ川の両岸に小さな集落が広がり、「キスト」と呼ばれる19世紀に現在のチェチェン、イングーシ地域から移住してきた人々の末裔が暮らしている。
 国民の大多数が正教徒のジョージアにあって、キストは伝統的なイスラムの信仰を守り、牧畜や農業を営みながら、ジョージア人と共存してきた。
 

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