長谷川美智子

現在NHKカルチャースクール横浜・町田。青山・川越・さいたまアリーナ校講師「枕草子」を…

長谷川美智子

現在NHKカルチャースクール横浜・町田。青山・川越・さいたまアリーナ校講師「枕草子」を担当。『見沼の波留』(埼玉文藝賞)『小説 清少納言』(第15回新風舎出版賞)

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  • ショッピングモール

    身近にある生活の場、ショッピングモール。そこで交錯する様々な人々の人生。そのささやかな喜びと哀感を描きました。

  • 小説・投資詐欺の行方:消えた400万円

    老後の資金を投資詐欺で失った人々の話

  • お気に入りノートまとめ

  • 恐怖の草男

    草を愛する夫と妻の戦い。

最近の記事

カラフルな再会

この4月と5月。 あまりにあわただしくいろいろあったので ひろみさんと再会できたことが夢のようです。 私の小説『野菊の如く』が縁となり、 ひろみさんは生沢クノのご親族の方とまた新たな繋がりができたとのこと。 すべてあなたの論文の力。 カラフルな衣装に身を包み、 美味しいものを向かい合って食べるていると 時の経つのを忘れました。 美しい料理の写真は逆光で失敗~ でもデザートの写真は成功しました! 私は衣装に合わせ、赤系のイチゴのデザート。 ひろみさんは衣装に合わせ、緑

    • 定子は一条を愛していたのか

      枕草子の中の定子の歌と言葉。 元輔が後といはるる君しもや今宵の歌にははずれてはおる    歌人元輔の子であるそなたが、なぜ、今宵の歌に加わらないでおとな    しくしているのか(清少納言をからかい励まして詠みかけた歌) など こう音もせぬ 物言え さうざうしきに    静かに秋の月を眺めている清少納言に「何か話せ、寂しいから」と仰    せになる。 第一の人に また一に思はれむとこそ思はめ    大勢の方々が候ふ場で、「愛されるのなら2番、3番は死んでも嫌。    一

      • なんと素敵な清少納言!

        先週の『光る君へ』には、清少納言が『枕草子』」を書くに至ったいきさつが端的に感動的に描かれていた。 これだけで、このドラマを見た甲斐があった~。 他の部分の設定は(ファンの方には悪いけれど)史実的にはめちゃめちゃだと思う。 紫式部が草紙を書くことを清少納言に「勧めた」「ヒントを与えた」などは、どう考えてもあり得ない。 紫式部は自分の名誉と名声の邪魔になると思ったら、和泉式部であれ清少納言であれ追っ払った人なのだ。 紫式部は自分の邪魔にならない無害な人だけを愛するタイプ。

        • 病室の会話

          相部屋でいろいろな会話を仄かに耳にした。ほんの一言二言だけ話した人もあり、今もときどき電話をかける人もいる。 すべては病気の取り持つ縁。 今も心に残っている会話がある。 「長谷川さん、話しかけてくれてありがとう。嬉しかった。これ、見て。私、夜景のスケッチをしたの」 御向かいのベッドの女性が私のベッドに近づいて一枚の紙切れを見せてくれた。 鉛筆の走り書きで、『暗い空・ここにちかちか光がある。運が良ければ、ヘリコプターが見える』と説明が書いてあった。 「窓から見えるあそこのマン

        カラフルな再会

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          12本
        • 小説・投資詐欺の行方:消えた400万円
          7本
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          2本
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        記事

          『色』のもつ力

          トップ写真は姪にプレゼントされたド派手なぐらいカラフルな羽織ものです。癌の治療を始める前に「おばちゃんがこの色ぐらい元気になれますように」とデパートで高いものを選んでくれたのです。 ここ2ヶ月は衣装どころではありませんでしたが、先日、姪とのランチに着て行きました! 娘たちからも高評価で「カラフルで、見ているだけで楽しくなる」と。 色の持つ力は大きい~。 病院のほぼモノトーンの世界で天井ばかり見ていた日々を経験し、『色』の持つ『癒しの力』をしみじみと感じました。 平安貴

          『色』のもつ力

          現実を生き抜いた女たち

          紫式部にしろ清少納言にしろ、その他多くの平安時代に活躍した女性作家たちには共通項がある。 1・隠遁者ではなく、宮中という生活の場において、それぞれ後ろ盾となる庇護者を得てはいたが、一人の人間として経済的に自立していた。 2・奈良時代の貴族女性の経済力には大きく劣るが、財産と家、土地をもち、老年になっても、習字や和歌・琴の演奏などの特技で、宮中で活躍した女性の記録が多く残っている。 3・財産権をすべて奪われた明治以降昭和初期の女性よりは社会的地位は高かったと思われる。

          現実を生き抜いた女たち

          5月4日、退院しました

          一回目の抗癌剤治療は、副作用に急激におそわれ、 予期せぬ長期入院となりましたが、5月4日、退院しました。 スイカやみかんを食べて元気になりました。 これから養生に励みます! 病室というのは白だけの世界。 寝ているだけの世界。 でも我が家に帰るとカラフルなものに囲まれている。 庭の木々や草花の美しさに感動しました。 庭に飛んでくる鳥の姿も見ました。 ああ、これが生きている幸せだと改めて感じた今日この頃。 病院では親切な看護師さんたちにとてもよくしてもらいました。 でも白だけ

          5月4日、退院しました

          仏像物語  (3)

          橋のたもとのお地蔵さんは 念仏橋と呼ばれる小さな橋のたもとに 小さなお地蔵さんが立っていました。 なぜ念仏橋と呼ばれるのか、 いつ頃からお地蔵さんが立っていらっしゃるのか、 語られることもありませんでした。 お地蔵さんは小さな子どもぐらいの背丈で、 ときどき鳥が肩にとまっていました。 誰がお世話しているのか、 いつも赤い頭巾をかぶり、 赤いよだれかけをしていました。 この辺りは元は沼だったので、 雨が降ると橋の上まで水があふれ、 バスも走れなくなります。 でもお地

          仏像物語  (3)

          仏像物語  (2)

          薬師如来に祈る 父の赴任した はるかな東国の地で育った 少女 現世御利益を願って 自分の身の丈ほどの 薬師仏を彫った 我は前世は 仏師だったにちがいない 木の中から 自然に仏さまが 出ていらっしゃる…… 三月かけて薬師像は完成した 少女は祈った 来る日も来る日も…… どうか都に帰れますように どうかたくさんの物語を 手にできますように 病苦を癒し 現世御利益をもたらす薬師さま、 どうかある限りの物語を 我に読ませたまへ それが私の現世の夢…… そして…… 少女 

          仏像物語  (2)

          仏像ものがたり (1)

          仏像ものがたり (1)

          青天の霹靂  (4)

          誰の人生も青天の霹靂の連続だと思う。 順風満帆のように思えた大谷選手も水原事件は青天の霹靂だっただろう。 キャサリン妃の癌公表も私たちにとっては青天の霹靂だった。 こういうことを知ると、私の卵巣癌摘出など青天の霹靂ともいえない小さな事件かも知れない。 とはいうものの……。 世界的な有名人であってもイギリス王室の妃であっても、全く無名の庶民であっても、その人にとって青天の霹靂はショックであり、悲しみであり、立ち直るのには大きなエネルギーと強い意志が必要なのだ。 ほとんどす

          青天の霹靂  (4)

          青天の霹靂  (3)

          2月の定期健診で明らかな卵巣異常発見。 3月6日。娘二人に来てもらい外科の主治医から画像を示されながら説明を受け、結果的に即入院、翌日卵巣摘出手術。 12日、いったん退院。 18日、外来でCPR検査を受けコロナ陰性を確認。翌日入院。 その夕方に胸に何かを埋め込む手術を受けた。何か、というのは自分でもよく分かっているわけではないから、うまく書けないのだ。 今後の治療で度重なる点滴を受け、血管がぼろぼろになったり、液が漏れたりしないように、『皮膚埋蔵型ポート』を肩に埋め込む手術

          青天の霹靂  (3)

          青天の霹靂  (2)

          人の情 集中治療室では時間が分からないことが一番つらかった。 翌日からは相部屋を希望していたが空きがなく、個室へ。 携帯を自由にかけられるし、部屋が広いことはよかったが、一人ぽっちの寂しさ、経済的なことも考え、大部屋を希望。 三日目に大部屋に引っ越せた。 夕方、なかなか食事が出ない。まさか、私、夕食抜き? ろくに食べていないから、このままじゃ、死ぬよ……。 不安になって通路に出ると、お隣さんが二人、窓際で何か話していた。 「あの、夕食って何時ごろでしょうか」 「けっこう遅

          青天の霹靂  (2)

          青天の霹靂 (1)

          春の嵐 去年11月15日。 経過観察の定期健診で主治医に言われた。 「婦人科の先生から指摘されましたが、卵巣に小さな影があります。卵巣嚢腫の可能性もあり、と言われましたが、この影は誤差の範囲かも知れないとも思うけど…」 明けて2月7日。 今日から5年目だ。 わーい、5年間再発なしで、めでたく、経過観察も終わる。病院通いも終わる~超幸せ~ 去年の針先ほどの影のことなど思いだしもしなかった。 主治医のマスクの上の目が冷たく鋭くなった。 「卵巣が真っ黒に腫れあがっている。この

          青天の霹靂 (1)

          病院の怪談「5」ー⑥

          法的な配偶者となることがいちばん強力に綾子を守ることになる。誠二の出した結論だ。財産目当てと思う人は思えばいい。綾子が亡くなっても、自分は配偶者としての相続権は主張しない。綾子の望む通り、盲導犬協会に寄贈すればいい。 風薫る6月、 庭に桜草咲き乱れる小さな教会で二人は式をあげた。 赤いツツジの咲く道をしばしドライブ、役所に向かう。幸せな道程に付添ってくれたのはキミ子とキミ子の会社の社長だ。 綾子は末期がん。余命いくばくもないと告知されている。 手術不可能、体内に無数に癌細

          病院の怪談「5」ー⑥

          病院の怪談 「5」~ ⑤

          会ったこともない腹違いの弟……。 綾子の胸に不安が過る。人生の晩年にややこしい問題を抱えたくない。 それから一か月後、公認会計士から報告があった。 「N さん、63歳。若いころは一人でアフリカや中東辺りの砂漠地帯を周遊していたそうです。 それからも根無し草みたいな暮らしを続け、今は沖縄に住んでいます。 親との関係はまったくない人生だったし、それはそれで満足している。 今さら、遺産を分けてもらおうとは思わない。沖縄の片隅で自由に生きている今になんの不満もありませんと言っていま

          病院の怪談 「5」~ ⑤