来戸 廉

主に、短編、ショート・ショートを書いています。過去作、新作を交えて公開しております。好…

来戸 廉

主に、短編、ショート・ショートを書いています。過去作、新作を交えて公開しております。好きな作家は、星新一、阿刀田高、サキ、池波正太郎、柴田錬三郎、葉室麟 他。

マガジン

  • 短編

    今まで投稿した短編を纏めました。

  • 【連載】ターちゃんとアーちゃんの歳時記

    私の息子、ターちゃん(当時5歳)とアーちゃん(同じく3歳)の一年間を、絵本風に綴ってみました。 睦月《むつき》   (1月)   初詣、お正月 如月《きさらぎ》  (2月)   雪、お遊戯会 弥生《やよい》   (3月)   卒園式 卯月《うづき》   (4月)   入学式 皐月《さつき》   (5月)   目覚まし時計、アーちゃんの変化 水無月《みなづき》 (6月)   潮干狩り、プール 文月《ふみづき》  (7月)   カマキリ、ターちゃん警察 葉月《はづき》   (8月)   セミ取り、お願い 長月《ながつき》  (9月)   自転車、写真 神無月《かんなづき》(10月)  かけっこ、えのぐ 霜月《しもつき》  (11月)  ミカン狩り 七五三 師走《しわす》   (12月)  クリスマス、大掃除

  • ショート・ショート

    今まで投稿したショート・ショートを纏めました。2,000文字以下の短い話ですが、「落ち(下げ)」に拘って書いてます。

  • ショート・ショート ちょびっとブラック編

    今まで投稿したショート・ショートを纏めました。少しブラックめいたもので、2,000文字以下の短い話です。「落ち(下げ)」に拘って書いてます。

  • 短編 ちょびっとブラック編

    少しブラックめいたものを纏めました。

最近の記事

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 改めまして、来戸 廉と申します。主に、短編、ショート・ショートを書いています。過去作、新作を交えて公開しております。  好きな作家は、星新一、阿刀田高、サキ、池波正太郎、柴田錬三郎、葉室麟、他です。  幼少の頃は漫画ばかり読んでいました。小学4年生ぐらいだったと思いますが、夏休みの宿題で読書感想文を書くというのがありました。その時選んだ本が、「813」でした。数字だけの書名に惹かれて手に取りました。ルパン物です。面白かったでのすが、読書感想文を書くにはそぐわない本でした。

    • 【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (10-2)

      「そう。私、看護師なのに、気づいた時は、もう手の施しようがないほど進行していて。可笑しいでしょう」  都築はその言葉を理解したくなかった。 「ミエちゃんがガンなんかなるはずがないよ。そんなヤブ医者の言うことなんか、真に受けちゃいけねえよ。どこかの大学病院の有名な先生に改めて見てもらったらどうだい。ほらセカンド何とかって言ったろ」  美枝子は小さく首を振った。 「ううん、MRIの画像を看せてもらったもの。私もどんな状態にあるか、わかるわ」  美枝子は微笑みながら、涙を流してい

      • 【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (10-1)

        10. <平成二十六年十一月中頃>  金曜日の夕方。都築次郎が山村精一を飲みに誘った。  駅で待ち合わせた。久しぶりに会った精一は顔に疲れが見えたが、都築にはそれが消魂によるものではないと分かった。 「少しは気持ちの整理は付いたかい?」 「いや、まだだ。お前には世話を掛ける」  精一は頭を下げた。 「よしてくれよ。会社のことは俺に任せて、しばらくはのんびりしてていいよ」  駅の南口から少し歩いて住宅街に入った。 「どこまで行くんだ? 俺は駅前の赤ちょうちんで十分だよ」

        • 【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (9)

          9. <平成二十六年十一月十一日>  亜希子は夜遅くになって帰宅した。 「お帰り。ご苦労様」  大輔が労う。 「疲れたーっ。いやーっ、流石に鶴岡は遠かった。往復十二時間、座りっぱなしは堪えたわ」  夕飯は駅弁で済ませたからと、亜希子は着替えを持ってそのまま浴室に消えた。  風呂から出て居間に顔を出すと、亜由美と大輔が今日の報告を待っていた。 「亜由美、もう遅いから寝なさい」 「奈津美さんのこと、聞き出したのは私よ。聞く権利があるわ」  亜由美は譲らない。大輔は、 「権利

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        マガジン

        • 短編
          38本
        • 【連載】ターちゃんとアーちゃんの歳時記
          13本
        • ショート・ショート
          49本
        • ショート・ショート ちょびっとブラック編
          12本
        • 短編 ちょびっとブラック編
          6本
        • 【連載】ラジオと散歩と味噌汁と
          15本

        記事

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (8)

          8. <平成二十六年十一月十一日>  電車が鶴岡駅に近づくに連れて、精一の緊張は高まってきた。ホームに滑り込んだ時には、心臓の高鳴りは痛みに近いものになっていた。 「心臓によくないな」 「ん、何か言った?」 「いや何でもない。お前、何だか嬉しそうだな」 「だって久々の遠出ですもの」 「遊びじゃないぞ」 「いいじゃない、少しぐらいうきうきしても」 「子どもみたいなやつだな」  亜希子は意に介する様子もない。  私の手柄よと亜由美は言い張っていたが、今回は平日でかつ遠いと

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (8)

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (7)

          7. <平成二十六年十月上旬>  このところの木下家について一頻り。 「どう? 調査は進んでる? ほら例のお義母さんの初恋の相手は分かった?」  大輔は夕食を摂りながら、亜希子に尋ねた。亜由美はさっさと食べ終わって部屋に戻っている。中間テストが近いのだそうだ。 「もう、父には冗談でもそんなこと言わないでよね。あの人、まったく融通の利かない人なんだから」 「分かってるよ。でも最初にそう言い出したのは、お前だぞ。初恋の人かもって。お前だって気になってるんだろう?」  亜希

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (7)

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (6)

          6. <平成二十六年四月末>  美枝子は六十歳になったのを機に婦長の職を辞した。まだ看護師は続けるが、これからは少しのんびりできる時間がほしいと思ったからだった。  これまでは、いつ緊急に呼び出されるか分からないから、夫婦で遠出することもほとんどなく、泊り掛けの旅行もできなかった。  二年前に退職した夫精一は、先輩の都築次郎さんと二人だけの会社を作って、以前ほどではないにせよそれなりに忙しく動いている。  それでも美枝子の還暦を祝って二泊ぐらいの温泉旅行には行けるだろうと

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (6)

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (5)

          5. 「これから直ぐ行くって、どういうこと?」  亜希子が詰め寄る。 「お父さん、今日は石井雅子さんに会う約束なのよ。分かっている? 石井さん、忙しい中、何とか時間を作ってくれたのよ」 「申し訳ないと思っている。事情を説明して謝るよ。できれば先様には延ばしてもらいたいが、これきりになっても、それはそれで仕方ないことだ。そういう巡り合わせだったと諦めるさ。お前も今日休みを取ってくれたんだよな。本当にすまん」  山村が真正面から頭を下げると、 「やめてよ。私はいいわよ。このとこ

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (5)

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (4)

          4. <平成二十六年八月>  山下浩三が帰宅して郵便受けを覗くと、チラシやDMに挟まれて一通の封書が入っていた。裏書きを見ると住所に覚えがあった。差出人は山村精一で記憶と違っていたが先日の手紙への返事らしい。  そこには、手紙のお礼と、幸子に対するお悔やみと、妻が亡くなったことが綴られていた。その上で、妻が杉本隆氏を捜していたことは知らなかったが、それが妻の遺志であるならば、私が代わりに捜したい。ついては、その後何か思い出したり、分かったことがあれば、お手数でもご連絡頂けれ

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (4)

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (3)

          3. <平成二十六年七月十一日>  山村美枝子の初七日の法要を無事終えた。  坂下亜希子は夕食を用意して精一を呼びに来た。精一は廊下に腰を落としてじっと庭を見ていた。 「お父さん、夕食の準備ができたわよ」 「虫の知らせって、本当にあるんだな」  山村精一がぽつりと零す。 「あの日は、庭の手入れをしていたんだ。ふと誰かに名前を呼ばれた気がした。多分あいつだ。俺をああいう風に呼ぶのはあいつだけなんだ。だけど見回してもあいつの姿はないんだ。気のせいだったかと思ったけど、それに

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (3)

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (2)

          2.  <平成二十六年八月下旬>  木村妙子は手紙を受け取った。以前勤務していた佐野病院気付で書かれたのを自宅に転送してくれたものだ。消印を見ると、投函は一週間ほど前になっている。  裏書きを見る。差出人は神奈川県大和市 山村精一とあった。妙子は首を傾げた。多少記憶力は落ちたとは言え、その名に心当たりはなかった。改めて表書きを見ると、決して達筆ではないが一文字一文字丁寧に書いてあり、誠実そうな人柄が窺える字だ。妙子はほっとした。  この頃は矢鱈とダイレクトメールが届くが

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (2)

          創作大賞恋愛小説部門に応募する「リスト」ですが、流石に推敲や校正が1日では足りません。この所、毎日記事(小説)を投稿してきましたが残念ながら途切れてしまいそうです。その代わりと言っては何ですが、投稿小説100本突破を記念して、唯一有料の記事「蚊遣り器」を無料にします。

          創作大賞恋愛小説部門に応募する「リスト」ですが、流石に推敲や校正が1日では足りません。この所、毎日記事(小説)を投稿してきましたが残念ながら途切れてしまいそうです。その代わりと言っては何ですが、投稿小説100本突破を記念して、唯一有料の記事「蚊遣り器」を無料にします。

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (1)

          1.  <平成二十六年八月初旬>  山村精一は散歩の支度をして玄関を出た時、郵便受けに封書があるのに気づいた。昨夜取り忘れたようだ。この頃郵便の配達の時間帯が夕方に変わったらしく、早めに戸締まりをすると、こういうことはままあることだった。精一は、それを一旦は取り出してはみたものの、逡巡した後、郵便受けに戻した。  精一の一日は散歩から始まる。  散歩は、退職した二年前から始めた。ほとんど外に出ることがなかった精一を見かねて、妻の美枝子が勧めた。夜勤以外の日は私も付き合う

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (1)

          【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (10)

          10.岐路 「あっ、それ。もらうぞ」  健二は、環がテーブルに出しっ放しにしていた瓶を目敏く見つけた。 「あっ、それはだめ!」  環が止める間もなく、健二は黒ラベルの栓をこじ開けるや否や、手のひらに数粒を落として、ぽいっと口に投げ入れた。ぽりぽりと噛み砕く健二。愕然として見つめる環。 「だめだって……」 「水……」  環はさっと立ち上がると、冷蔵庫からペットボトルを持ってきた。健二は一気に飲み干すと、ふーっと息を吐いた。気づくと環がうっすら目に涙を浮かべている。 「ごめん

          【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (10)

          【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (9)

          9.冷蔵庫 「えっ? 冷蔵庫の話? 何だ、それ?」 「焼き鳥屋さんでジェニーさんに話したんでしょう。私にも教えて。何?」  環に詰め寄られても、健二には記憶がない。 「夕べは結構飲んだからな」 「そんなの、関係ないわ。ほら、ちゃんと思い出して」  環は容赦ない。 「冷蔵庫ねえ……。なんでそんなこと言ったのかな。逆に俺が知りたいくらいだよ……」  健二はつぶやく。酩酊した脳が紡ぎ出した虚構か、はたまた妄想か。健二は首を捻る。  ――そう言えば先日帰省した時、実家のが新しくな

          【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (9)

          【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (8)

          8.睡余 「おはよう」  目覚ましに起こされて、二日酔いがのそりのそりと居間に入ってきた。案の定、ジャケットもスラックスもしわくちゃだ。 「俺、何時頃に帰ってきた?」  ――私の苦労も知らないで。  環に悪戯心が湧いてきた。声を落とし気味にして、 「十二時過ぎよ。もう大変だったんだから。ニイニは私が寝ていたベッドに潜り込んできたんだから」 「えっ、嘘だろう?」  健二は、驚きと疑いが混ざった目で環の表情を探る。 「本当か?」  環はこくんと頷く。 「俺、その……、お前に

          【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (8)