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「煮て食おうと焼いて食おうと自由」発言をした入国管理局参事官は1969年入管法案作成に関与。それが問題視され、法案は廃案となった。


かつて、こんな記事を書きました。

池上努さんという法務省入国管理局参事官だった方が昭和40(1965)年の「法的地位200の質問」という著書で「煮て食おうと焼いて食おうと自由」と本当に書いていたのですが、この発言が国会で問題視されていたはずで、調べてみたところ、取り上げられていたのはそれから4年近く経った昭和44(1969)年の国会でした。

昭和44(1969)年7月2日、衆議院法務委員会です。

猪俣浩三議員は、この国会に提出されていた「出入国管理法案」の作成過程に池上努氏が関与していたことを答弁させた上で、その記述の問題点を次々に指摘し、最後にこのように詰め寄りました。

とにかくあなた、入管の参事官ですよ。そうして現職のいま検事をやっているのです。そうしてこういう入管法をつくった中心人物です。この人が、こういう外国人は煮て食おうと焼いて食おうと国際法上かってなんだという、およそ現在の国際法の原理というものと違った考えを持っている。そうすると、この入管法というものはいかなる色彩を持っているか、ほぼ想像できるのだ。

これに対して当時の法務大臣西郷吉之助(西郷隆盛の孫)も

いかなる意図で書いたかよくわかりませんけれども、用いましたそういうことばは、まことに不謹慎きわまるものでございます。

と答えざるを得ませんでした。

この発言だけが決め手になったわけではないでしょうが、昭和44(1969)年の法案は廃案となっています。

今年の入管法案も立法事実に重大な疑問が提示されたのですが、残念ながら、それらについて法務大臣は問題視することなく、成立してしまいました。当時の法務大臣の答弁は謙虚でよかったなと思いました。


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