kichikichi|美術は楽しい

美術鑑賞が好きで、主に東京の美術館とアートギャラリーを巡っています。 展覧会を観て感じ…

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美術鑑賞が好きで、主に東京の美術館とアートギャラリーを巡っています。 展覧会を観て感じたことや考えたことを語ります。

最近の記事

美術館巡り #01 熊谷守一美術館

5月下旬、東京都豊島区にある熊谷守一美術館へ行きました。 東京メトロ 千川駅から徒歩10分、閑静な住宅街に佇むコンクリート造りの美術館です。 展示室は1階~3階、1階にはカフェとショップがあります。 熊谷守一美術館とは画家・熊谷守一(1880年~1977年)が1932年(52歳)から1977年(97歳)に亡くなるまでの45年間暮らした自宅兼アトリエ跡地に建てられた美術館です。 1985年に私設美術館として創立。その後2007年に守一の次女・榧が所有する熊谷守一作品153点

    • 展覧会へ行こう! #06 三島喜美代 未来への記憶@練馬区立美術館

      練馬区立美術館で開催中の「三島喜美代 未来への記憶」展に行きました。 新聞やチラシなどの印刷物を陶に転写して立体化する作品で知られる三島喜美代(1932年~)の70年にわたる創作活動の軌跡をたどる個展。 日々大量に発行され消費されていく印刷物を硬さと脆さを併せ持つ陶に転化した作品で情報に埋没する恐怖や不安感を表現していましたが、大量の印刷物が大量のゴミになることから次第に情報からゴミへと問題意識が移っていき、段ボールや空き缶など身近な廃棄物を陶で再現した作品や、鉄くずや廃

      • 展覧会へ行こう! #05 デ・キリコ展-不思議の世界へ、ようこそ-@東京都美術館

        ジョルジョ・デ・キリコ(1888年~1978年)の芸術の全体像に迫る回顧展。 初期から晩年まで100点以上が出品していて、特に初期の「形而上絵画」は世界各地に散らばっているため、まとめて見られる貴重な機会となっています。 SECTION 1 自画像・肖像画《弟の肖像》(1910年)や、後に妻となる女性を描いた《秋》(1935年)では背景に神秘的な風景が描かれていて、「形而上絵画」につながる雰囲気が感じられました。 SECTION 2 形而上絵画「形而上絵画」という名称は批

        • 現代アート巡り #07 南青山エリア

          5月上旬に南青山・神宮前エリアのギャラリーを巡りました。 今回は南青山で見た展覧会を振り返ります。 Akio Nagasawa Gallery Aoyama谷口広樹 個展「Rebirth」 絵画、イラストレーション、グラフィックデザインを中心にジャンルを超えて活動したアーティスト谷口広樹(1957年~2021年)の個展。 獣っぽい擬人化されたキャラクターがいる世界がなんとなく地獄の風景を連想させる。でも怖い感じはなくて、どことなくコミカルで楽しい。 仏教のお話に出てき

        美術館巡り #01 熊谷守一美術館

          お出かけ美術館 #01 ポーラ美術館(箱根)

          4月下旬に箱根のポーラ美術館に行きました。 自宅の最寄り駅から電車を乗り継ぎ、小田急線の小田原駅から箱根登山鉄道に乗って終点の強羅駅へ。 強羅駅からは美術館の無料送迎バスに乗り、山道を進むこと約8分、目的地のポーラ美術館に到着しました。片道3時間半の小旅行。 美術館の入口はガラス張りで、木々の緑が映えてとても気持ちいい。 アトリウム ギャラリーHIRAKU Project Vol.15 大西康明 境の石 エスカレーターを降りたところにあるアトリウム ギャラリーでは、過

          お出かけ美術館 #01 ポーラ美術館(箱根)

          現代アート巡り #06 シュウゴアーツ(六本木)

          4月に巡ったギャラリーは12か所。 その中で印象に残った展覧会6か所を振り返る最終回。 森村泰昌「楽しい五重人格」森村泰昌の作品はこれまでも様々な展覧会で見てきたので今回の個展も絶対に見逃せないと思い、足を運んだ。 ジュアン・ミロ 《絵画(パイプを吸う男)》の中に入り込んでいるような作品。 重なり方が絶妙で、ミロの作品を体にペイントしている?と思わせるような仕上がりになっている。 元の作品の要素を壊さずにアーティストが入り込むことで、新しい見え方を提示しているように思え

          現代アート巡り #06 シュウゴアーツ(六本木)

          現代アート巡り #05 タカ・イシイギャラリー(六本木)

          4月に巡ったギャラリーは12か所。 その中で印象に残った展覧会を振り返る、今回は5回目。 グループ展「Fukei-Ga (Landscape Painting)」ルーカス・アルーダ、児島善三郎、アマデオ・ルシアーノ・ロレンザートによる「風景」を描いた作品約10点を展示。 いいなと思ったのは、アマデオ・ルシアーノ・ロレンザートのハードボードに油彩で描かれた作品。 平面的で簡略化された風景。ピンクと赤に染まる空の色が好き。全体にグレーだけれど暗さを感じない。 雲間から太陽

          現代アート巡り #05 タカ・イシイギャラリー(六本木)

          現代アート巡り #04 KOTARO NUKAGA(六本木)

          4月に巡ったギャラリーは12か所。 その中で印象に残った展覧会を振り返る、今回は4回目。 KOTARO NUKAGA | グループ展「When I Kiss You, I Can Taste Your Soul」 ステファニー・ハイエ、川井雄仁、ハイディ・ラウ、レベッカ・マンソン、多和田有希+福本双紅という5組のアーティストによるセラミック(陶磁器)で制作された作品の展示。 面白い作品がたくさんあって楽しい。 なぜかこれを見ているとパフェを連想してしまう。 アイスとか

          現代アート巡り #04 KOTARO NUKAGA(六本木)

          現代アート巡り #03 オオタファインアーツ(六本木)

          4月に巡ったギャラリーは12か所。 その中で印象に残った展覧会を振り返る、今回はその3回目。 草間彌生 「Every Day I Pray for Love」 2021年から取り組んでいる最新シリーズ「Every Day I Pray for Love」より48点のペインティングと2点のドローイングを展示。 そのなかで一番印象に残った作品はこちら。 ピンクの水玉が桜の花びらに見えて夜空に桜の花びらが舞っているイメージが浮かんだ。ちょっと切なくて、儚い感じが心に残る。

          現代アート巡り #03 オオタファインアーツ(六本木)

          現代アート巡り #02 ペロタン東京(六本木)

          4月に巡ったギャラリーは12か所。 その中で印象に残った展覧会を振り返る、今回は2回目。 ペロタン東京 | NICK DOYLE 「American Blues」 ニューヨークを拠点に活動するアーティス ト、ニック・ドイルの日本初となる個展。 布をコラージュして制作された壁掛けの立体作品を中心とした展示。 立体的に見えるけれど、表面は完全にフラット。だまし絵みたいで面白い。 近くで見ると細かく切った布の組み合わせで陰影が表現されていて、すごく細かい手仕事であることが分

          現代アート巡り #02 ペロタン東京(六本木)

          現代アート巡り #01 TAKE NINAGAWA(東麻布)

          4月に巡ったギャラリーは12か所。 その中で印象に残った展覧会を振り返る、今回は1回目。 TAKE NINAGAWA ヤン・ヴォー 個展 ベトナム生まれ、ベルリン在住のヤン・ヴォーによる5年ぶりの個展。 ルネッサンス及びバロック絵画の引用とヴォーの父親によるカリグラフィーで構成されているリトグラフ作品。 カリグラフィーの引用元となっているのはアメリカのホラー映画(1973年)の主人公の少女に取りついた悪魔のセリフ。 書き込まれたカリグラフィー(エクソシストの悪魔の

          現代アート巡り #01 TAKE NINAGAWA(東麻布)

          コレクション展は楽しい #03 東京都写真美術館

          4月中旬、東京都写真美術館 3階展示室で開催中のコレクション展「TOPコレクション 時間旅行 千二百箇月の過去とかんずる方角から」を鑑賞した。 「時間旅行」をテーマとするこの展覧会では、所蔵作品(写真・映像・資料)とともに、戦後から現代までの時空を超えた旅が展開される。 大正時代 新たな写真表現の模索先月訪れた東京ステーションギャラリーの「安井仲治 僕の大切な写真」展でもこの時代の新しい写真表現が面白いと思っていたところなので、展覧会の基点となる1924年(大正13年)に

          コレクション展は楽しい #03 東京都写真美術館

          展覧会へ行こう! #04 記憶:リメンブランス ― 現代写真・映像の表現から@東京都写真美術館

          4月中旬、東京都写真美術館を訪れた。 2階展示室で開催中の企画展「記憶:リメンブランス―現代写真・映像の表現から」を観て印象に残った作品についての感想。 篠山紀信(1940~2024年)《誕生日》2歳から13歳までの12点のイメージ 1976年 写真館で毎年誕生日に撮影されたという記念写真。 見た目の成長はもちろんはっきりとわかるけれど、表情の変化が面白い。 最初は置かれた状況が良くわからずちょっとぼんやりしている感じで、2~3年経つと活発で明るい表情、学校に入ると

          展覧会へ行こう! #04 記憶:リメンブランス ― 現代写真・映像の表現から@東京都写真美術館

          コレクション展は楽しい #02 アーティゾン美術館

          「コレクション展は楽しい」の始まり 昨年アーティゾン美術館で開催された「ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ」(2023.06.03土~08.20日)は、コレクションの魅力と可能性を教えてくれた展示だった。 それがきっかけで「コレクション展は楽しい」と思うようになり、各美術館のコレクションに注目するようになった。 今回は企画展「ブランクーシ 本質を象る」と同時開催のコレクション展を観て気になった作品を挙げていきたい

          コレクション展は楽しい #02 アーティゾン美術館

          展覧会へ行こう! #03 ブランクーシ 本質を象る@アーティゾン美術館

          3月末、アーティゾン美術館を訪れた。 今回の展示はルーマニア出身の彫刻家、コンスタンティン・ブランクーシ(1876-1957年)の創作活動全体を紹介する企画展で、彫刻作品約20点に、絵画作品、写真作品を加えた合計約90点で構成されている。 突き詰められたフォルムぎりぎりまでそぎ落とし、簡略化された形態。 うっすらと残る凹凸で表現されたまぶたがとても繊細で、眠っている女性の微かな息遣いを感じる。 卵型のフォルムで表現された人体は直感的に女性をイメージさせる。 鳥の形が面白

          展覧会へ行こう! #03 ブランクーシ 本質を象る@アーティゾン美術館

          コレクション展は楽しい #01 DIC川村記念美術館

          3月中旬、DIC川村記念美術館を訪れた。 初めて訪れたのは昨年の8月。 そのときはフランク・ステラの作品がたくさん展示されていて、初めてみる造形表現、スケールの大きさに圧倒されてとても感動した。 今回見て気になった作品・面白かった作品を挙げていきたい。 101 展示室 印象派からエコール・ド・パリへパブロ・ピカソ(1881〜1973年) 「肘掛椅子に座る女」1927年 ここまで解体してするか!というくらいパーツがバラバラになっている。耳とか口とか髪の毛に見えるものがある

          コレクション展は楽しい #01 DIC川村記念美術館