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短歌 少年は

囀って(さえずって)空に混ざって雲を追う ボクの片腕もぎ取るように


これはある物語。
少年は欲しかった。地位や名誉ではなく、自由が欲しかった。
外を歩くと空は突き抜けて青く、少年の心とは裏腹にどこまでも澄んでいて、少年を孤独の淵まで追いやった。
少年はベンチに腰を掛け、自分に与えられた重力にどこまでも従った。
目の前には窓、窓、窓。少年は外でも家の中にいるみたいに、瞳に窓を宿していた。
そのひとつの窓枠に、一羽の小鳥が不意にとまった。
「ボクに自由をくれるんだね。」
少年は、その小鳥が女神に見えた。
小鳥を指でそっと弾くと、羽根はくしゃっと縮こまって、冬の空気を凝縮させたようだった。
その時、風が吹いた。
小鳥は剥がれるように少年のもとから大空へと大きく羽ばたいていった。
少年は思いっきり右手を伸ばしたが、ガクンとまた重力が全てを失くすようにのしかかった。
「この腕をもいだとしても、ボクは選ばれなかったんだね。」
少年の言葉は漂って、そして消えた。

夢見た自由とは引き換えに、少年はのちに国王となって祝福を受けた。


*****
今回は物語風にしてみました。









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