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うつ病について学んだこと~あるミュージシャンの回想から              

 先日、NHKの番組でうつ病から回復し、全国ツアーを復活させたミュージシャンのドキュメンタリー放送がされていました。
 
 私自身や私に身の回りに、うつ病を患っている人はいません。
 何となく、テレビやネットで見聞きしたことがある程度でした。

 そして、「うつ病=心の風邪」と言うような言葉を聞いていて、時間と共に、症状がなくなり、ちょっと休めばすぐにでも元に戻ると錯覚していました。また、「心の風邪」なら、ちょっと休んで、いや、気合いで頑張れば何とかなる、気持ちで復活する・・・ぐらいに思っているところもありました。しかし、この「心の風邪」は、聞くところによると、製薬会社が抗うつ薬を販売するためにつくったプロパガンダとも言われています。

 実際は、病気なので、心身ともにダメージが大きく「自分の気持ちで元に戻せるものではない」のは明らかです。
 そして、今回のドキュメンタリーを見ていても、それほど「甘いものではない」と言うことがよく伝わってきました。個人差はあるでしょうが、重たい症状に苦しみますし、その気分の落ち込みを周りの人に支えてもらえないと、さらにメンタル的に厳しくなることもよく分かりました。

 うつ病の寛解率は90%。再発率は50%とも言われています。

 多くの人が治りますが、逆に言うと、10人に1人は、なかなか治らない状態になるともいえます。
 
 今回のドキュメンタリー放送で、うつ病について学んだことがたくさんあります。紹介します。よかったら、お付き合いください。


1 うつ病とは何か。うつ状態との違いは?

 簡単に「病気」「健康」という言葉を使っていますが、その線引きははっきりしません。どこからが病気なのか?どういう状態が健康なのか?
 
 病気と健康の間には、前段階があり、東洋医学では「未病」と言うそうです。

 未病と病気の大きな違いは、未病は「可逆的」、病気は「不可逆的」であるということ。つまり、病気になると、なかなか元に戻らない、簡単に治らないということです。
 逆に、

「未病」段階であれば、無理せず、生活習慣を改善したり、しっかり休んだりすることで、「健康」状態にまでもって行けます。

 では、うつ状態とうつ病の違いは何か?次のような説明がなされます。 

うつ状態とは
 ストレスで脳内の神経物質が異常をきたし、気分が落ち込む状態。
 
うつ病とは
 日常生活が送れないほどに、深刻なうつ状態(が続くこと)。

 うつ病の症状は、人それぞれで、差もあります。
 気分の激しい落ち込みもあれば、異常な倦怠感もあります。
 強いだるさに加えて、頭痛、腰痛が出てくることもあります。
 ベッドから起き上がれないほどに体もしんどいですが、メンタル的にもそれこそ、不安や絶望を感じやすく、中には自殺してしまう人がいることもよく知られています。

2 うつ病になるまでの過程の考察~何が「ストレス」を与えていたのか

 うつ病の原因や病状には個人差があり、すべての人に当てはまることはないです。
 しかし、今回放送されたミュージシャンの回想シーンを見ていて、うつ病につながる「ストレス」について、一般化できることもありました。
 次の3つです。

・違う自分を演じた(無理をして、違う自分を出し続けた)
・コロナ禍の中で、「頑張る」状態が続いた
・「未病」状態の時に、さらに頑張った

 今回登場したミュージシャンの人は、はじめ、「音楽はいいのに、人気が出ず売れなかった」そうです。それは、ファンサービスなどが下手だったから。
 その後バンドを解散し、新しいメンバーと背水の陣で全く違う「新しい自分」を作って、MCで話しかけたり、無理して違う自分(キャラ)をつくったりして喋ったそうです。その甲斐あって、東京進出のチャンスもつかめました。
 しかし、常に「適応すること」を迫られ、自分とミュージシャンとしての自分は別人で、ずっと、心にため込んでいるものがあったようです。
「重いマントをまとっている」状態だったと友人は語っていました。

 
 順調に売れて音楽活動も広がっていたその時。
 あのコロナのパンデミックが起こりました。
 動画配信などの自分達の活動とともに、ライブなどもできなくなり、職を追われた音楽活動仲間を救済するための活動もスタート。ちょっとした「躁状態」だったようです。
 
 そんなスイッチが入った状態で、走り続けた結果、
「なかなか疲れが取れない」
「全然眠れない」
という症状と共に、原因不明の「群発頭痛」にも襲われたそうです。

 そして、とうとう好きな音楽活動なのに、「やる気が起きない「何も手がつかない」状態になり、「うつ病」と診断されました。
 
 以上のことから、うつ病を防ぐ、「未病」の段階から戻る方法も見えてきます。それは、

・無理して、違う自分を演じない
仕事的に無理であれば、趣味などを含めて、「重いマントを脱ぐ時間」を確保する。
・「眠れない」「疲れが取れない」などの身体症状があらあらわれた時点であれば、まだ戻れる。自分の生活習慣を見直して改善できる。
・頭痛や疲れなどは、身体からのサイン。警告。
心身ともに、とにかくしっかりと休む。

3 メンタル疾患につながらないように

 日本ではうつ病になる人が増えているそうです。
 原因はさまざまですが、その背景に「ストレス」があるのは確かです。
 また、AIの研究者でもある黒川伊保子さんの「家族のトリセツ」という本を読んでいて、ピンとくる言葉がありました。

平和な国には、平和な国の苦しみがある。どこまでも理想を追い求めることができる環境にいるから、「理想からの引き算」でものを見ることになる。
もっといい成績、もっといい暮らし、もっといいポジション…。しかも、もっと楽しく、もっと簡単に。
常に「もっと、もっと、もっと」という心の飢餓と共にあり、それが「自分の思い」ではなく「他人目線」に依存しているから、どう頑張っても自己充足がなされ得ない。 頑張れた日も、頑張れなかった日も疲労感は日々積み重なっていく。かくして、平和な国の人の方が、過酷な国の人より疲れている、というパラドックスが起きる。・・・・

家族のトリセツ

 いくら周りの人が「~ができてすごいね」とほめても、その人自身が、
 
「これじゃあ、だめだ」
「まだ、できていない」
「もっと~を」
 
等と思っていたら、頑張り続けることになります。
 また、他人の評価に依存していたら、他人に振り回され、満たされない思いを抱え続けることになります。
 
 では、どうしたらいいでしょうか?
  それは、

「適度な」向上心をもつ。
 あるいは、上手に今の自分に満足できるかどうか。

 学校教育の中でも、「向上心」はプラスの価値がおかれています。
 努力して頑張ろう、よりよくしていこう、上を目指そうという気持ちで、「成長」ということを考えれば、大切な考え方だとは思います。
  しかし、 

向上心とは、別の見方をすると「不充足感をばねに生きる」ということにもなります。


 今の自分を否定して、もっとよりよく、まだまだできると、悪くすると今の自分を責め続けることになります。
 また、自分の強み(自分の向き、不向き)を無視して、とにかく何でも努力すれば、できるようになる、できないのは自分の努力が足りないからだという考え方の背景にもなっています。
 
 だから、「1ランク上の自分」に憑りつかれてしまうと、体や心が悲鳴を上げるまで痛んでも、なかなか休めなくなります。
 疲れて休む自分をも否定したり、責めたりしていきます。様々な要因はありますが、ひょっとしたら「自殺者」が多い理由の一つかもしれません。

 
 さらに、達成感や意欲によって「疲れ」をごまかせもするので、心身が疲れてダメージを受けているのに、気持ちが「ハイ」になってしまって、そのまま、がんばりつづけることで、「過労死」「うつ病」につながってしまう要因にもなります。

 メジャーリーグで活躍する大谷選手。
 また、歴史に残る活躍をしたイチローさん。
 
 数々の記録を出し、向上心の塊、求道者のイメージすらありますが、何より野球を楽しんでいるところに、心が折れない秘密がありそうです。
  一打席一打席、一球一球に集中し、結果や、結果に対する周りの反応にこだわりすぎない。
 理想を追い求めつつも、一打席ずつ、自分なりの満足を積み重ねていました。
 少しずつ前に進んでいるという感覚は、人間としてすごく大事です。

自分のしたことに人が評価を下す、それは自由ですけれども、それによって、自分が惑わされたくないのです。 (イチロー)

 新年度が始まって1ヵ月以上たち、新しい仕事、新しい職場、新しい人間関係に適応するへことの疲労から、やる気が出ない、会社に行きたくないなどの「五月病」になりやすい時期。

 五月病は「未病段階」です。
 ここで、頑張りすぎたり、無理をし続けやりすると、それこそ、うつ病など、メンタル疾患につながりやすい時です。

 睡眠時間の確保や、アルコールを控える、「相談する」など、適切な対処して、乗り切っていきたいですね。
 
 
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
皆様の心にのこる一言・学びがあれば幸いです


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