K

こんにちは!詩・小説・日記など、いろいろ書きます。

K

こんにちは!詩・小説・日記など、いろいろ書きます。

マガジン

  • 小説など

  • 詩作

    シリアスすぎない詩です。

  • 和訳

    好きな歌に和訳が見つからなかったとき、ざっくりと訳しています。

  • 3月日記

    文章を継続して書く訓練をしています。

最近の記事

長い手紙 その1

1. 1954年8月12日 拝啓  今年も暑い夏ですね。 わざわざ手紙を寄越してくれて、ありがとうございます。夏が始まる前、Rさんに私の居所を伝えておいて、心から良かったと思います。言った通り、私は7月の下旬から、軽井沢の旅館に逗留しています。 あなたからいただいた手紙について、あえてその内容にそのまま触れることはしません。なぜ触れないかは説明が難しいのですが、ここから私が書くことが、回りまわって、ひとつの応答になればと思います。 前置きはこのくらいにします。もし、

    • 部屋のあかり

      部屋の机に、二つのライトがある。ひとつは机に取り付けたLED式のものだ。とても明るいので、高校生のころ、勉強をするときに使っていた。もうひとつはプラスチックのランプシェードがついた、古い橙色の電気スタンドだ。いまはもっぱら、後者を使っている。 この電気スタンドは、もとは父親のものだったようだ。シェードには車用品メーカーである『wynn’s』のロゴステッカーが貼られている。父は今の僕くらいの年齢のときにレーシングカートに乗っていたから、きっと、その名残だ。 机に接している基部

      • 『街のあかり』の数だけ、そこには人間がいるのに

        アキ・カウリスマキという名前を初めて聞いたのは、たしかTwitterだったと思う。『枯れ葉』という映画が公開された時に、誰かが「パレスチナを思う感情と、日常を送ることの両立を描いた」と書いていたのを見て、興味を持った。というのも、ちょうどそのころ、イスラエルとハマスの対立が悪化していた。今でも、イスラエルがガザ地区の人を―特に子どもだ―を殺していく、ジェノサイドが続いている。新作であるその『枯れ葉』はまだ見ていないが、実家のテレビに搭載されているアマゾンプライムで「カウリスマ

        • 【部屋のあかり】都会的なもの・村上さん

          自室の本棚には、そこまでたくさんの本は残っていない。高校のときに多読していた現代小説・エンタメ小説は、廊下の本棚に出してある。部屋に残っているのは、ほとんどが村上春樹さんの小説だ。 それこそ高校のころ、村上さんは僕にとって神様のような存在だった。『海辺のカフカ』を初めて読んだときには、「この本と出合うために、いままで多読をしてきたんだ」と衝撃を受けた。Book-offで『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』の上巻を中古で買ったときには、その日の午後じゅう読みとおし

        長い手紙 その1

        マガジン

        • 小説など
          1本
        • 詩作
          0本
        • 和訳
          0本
        • 3月日記
          6本

        記事

          【部屋のあかり】家郷

          僕の好きな本のひとつに、故・見田宗介先生が著した『まなざしの地獄』というものがある。東北から単身で上京し、殺人事件を起こしたひとりの青年を分析した本だ。 その途中に「家郷」という言葉が出てくる。「かきょう」と読むこの言葉は、「ふるさと・故郷・郷里」[1]という意味のほかに、家族的・地縁的なつながりというニュアンスが含まれている。作中では、上京した青年のことを、地元の家郷を失った人間、「家郷喪失者(ハイマートロス)」として形容するほか、ひとびとが都市近郊のニュータウン・ベッド

          【部屋のあかり】家郷

          【部屋のあかり】性格

          いまは朝の8:30で、僕は実家の自室に座ってパソコンを打っている。最近はnoteに文章を直に打つことが多かったが、今日はWordを開いて執筆している。noteの画面は文章を横書きで表示するから、縦書きで文章を書くのは久しぶりだ。 日曜日だが、家には誰もいない。いたって静かだ。道を挟んだ公園のほうから時おり、人の声だったり、鳥の声だったりが聞こえる。ものごとの間隔が十分にとられていて、その隙間に、時間がゆるやかに流れている。 ふだんは東京の中心のほうの寮で暮らしているから、帰

          【部屋のあかり】性格