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日記という名の短編エッセイたち

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取るに足らない日常の出来事、なんて思うのは本人だけかもしれませぬ。
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後期高齢者は女子大生時代と比較すると、食の自由が下がるし、人の老化の傾向を考えても、スパイスは良い選択肢だと思う話

お祖父様が眼科医で、その患者さんに可愛がられた原体験を持つこと。また、故日野原 重明医師と講演で一緒になった際の言葉を大切になさっていること。そして論文をごりごり読んでエビデンスベースで一般向けの本を書いたら、ご高齢の患者さんが「読んだよ」と言ってくれて診察の質が上がったという医学博士です。 盲信する訳ではないけど、情報源の一つとして参考にしています。 歳をとると好きなものを好きなだけ食べることは難しくなりますよね。料理する気持ちになれない時もある。 本来、レシピ本は、

お誕生日にお届けする、いくつかの言葉の花束

ともこさんの文章に触れると、この言葉を実践なさってるなぁという気持ちを抱きます。 警察や組織を書くことが抜群に上手い著者の2003年当時の新境地。リアルタイムに20代の若者として読みましたが、時が流れて40代になりました。仕事や家族の複雑な関係性を描いた作品として心に残っています。 個人的に、若さとは様々な肯定的な、あるいは野心的な属性を多く含むものに思えます。時間を使って若さの影響圏から抜け出したことと、至らぬ点があっても今の自分が過去の私と比較して一番マシだと思えるか

【日記】退職してそれから

3月末に30年以上働いた職場を定年退職した。 本来ならば3月31日で仕事終了だったのだが、3月後半はこの間書いた「またかよ入院日記」の顛末で明け暮れており、心静かに皆さんにご挨拶をしたり片付けものをしたり、という状況ではなかった。とりあえず場所を空け、私物を怒濤のように処分し、息せき切って走るように入院してその後しばらくは寝たきりだった。 4月になってからも、退院はしたものの開腹手術の影響は大きく、「普通の生活」と言いながら半分病人のような養生を続けた。やっと以前のように

春から初夏へ

5月から6月にかけては北海道の花が最もにぎやかな季節です。 4月になるまでの、雪の白とあとは灰色か黒という水墨画みたいな世界から一斉に小さな緑が芽吹き、その後を追ってカラフルな花が咲き乱れます。桜はその中のひとつでしかなく。 数日前に花を求めてお散歩してきたので画像を貼っていきましょう。 満開の藤棚の下に立つと、頭の上がどこもかしこも薄紫の花で埋め尽くされていて圧倒されます。「絢爛」という言葉が似合います。 北海道では東京でよく見かける紫色の大きなツツジはあまりありませ

ホームベーカリーがすごかった

毎週末、移動販売のパン屋さんから買い溜めしている朝食用のパンを、今週は息子にあげてしまったので、週の初め早々に買い置きのパンが切れてしまいました。 翌日は白米にもち麦を足して、もち麦ごはんと味噌汁で朝ごはんにしましたが、パンがあるときは「白いご飯が食べたいな」と思うくせに、いざパンがないとなると、無性にパンの朝ごはんが食べたくなる、あまのじゃく。 スーパーに行けば、安くておいしいパンが売られていますが、ここは一つ、自分で焼いてみるのはどうだろうと思い立ち、納戸にしまい込んで

夜の読書タイム、はじめました

最近、夕食を食べたら、さっさとお風呂に入って、寝室にこもるようになりました。理由の一つは、訳あって朝5時半に起きているからです。 冬の間は、編み物をしながら、動画配信サービスや録りためたテレビドラマを見て、夜更かしして、朝はギリギリまで寝るという生活でした。 それが、早起きをするようになったので、睡眠時間を確保するために夜更かしできなくなりました。冬から春へと、いつしか季節も変わって、もこもこの毛糸に触れるのはちょっと暑いと感じるようになり、編み物もお休み中。 そこで、

初夏は夕暮れ

仕事帰りの午後7時。 西の空はオレンジ色のグラデーションを描く。五月半ばのこの季節は、田植えの時期で、あぜ道で小さく区切られた水田に、小さな稲の苗が整然と植えられている。 まだ苗が小さいので、田んぼの水面は、まるで湖面のよう。 その水面に、夕焼けが映って美しい。 ありきたりだけど、千年昔から変わらない自然の美しさには、何も敵わない。

【朗読】老いと寿命を迎えることは未知の挑戦だから、自分の人生を総括し、仕上げることが大切

信仰・思想・信念は個人個人が大切に築き上げたものだから、敬意を持ってそこには踏み込まずに書きます。 我々は、眠って起きるなら確認できますが、寿命を迎えて永眠すると、確認できないはずです。例えば、お葬式を済ませて火葬して10年経って、肉体を復元して「やぁ、死とはこうだよ」と論じた方はいないはずです。 赤ちゃんが歩けるようになり、学校に通い、大人になって……と、人は変化し続けます。寿命に向けた変化の一面が成長であり、季節が変わり、老いになるように思います。 では、老いとは何

【日記】春です

「入院日記」連載中ですが、春を見つけたのでちょっと挿入させて下さい。 北海道にも、やっと本格的に春がやってきたようです。桜は中心部では終わり、今はチューリップの花盛り。 今日は春を探しに行きました。 行ったのは百合が原公園という、札幌市の北の方にある公園です。ここは花がたくさんあって見応えがあります。今はまだ春先なので少ないけれど。 歩いていたらマグノリアが。 マグノリアって「木蓮」の種類全般を指すみたいです。様々な色があります。 チューリップはこれから。 あ、大通公

延々と続く小さな絶望こそつらいのかもしれない

書類の整理をしていたら、ホチキスの針で指を刺してしまった。中指の腹の皮がめくれた。 血も出ないほどの小さな傷だけど、スマホを持ったり、キーボードを叩くたびに、チク、チクと痛みが走る。 めくれた皮膚が、触れたものに引っかかると痛みが増す。わずらしくなって、浮いた皮膚をぷちっとちぎると、傷口が赤い点になって現れた。失敗だった。 それから四六時中、チクチクするようになった。かゆみと区別がつかないくらいの痛さだけど、これが存外、ストレスになった。いたっと思うたびに集中力が途切れる。

【日記】どうしてなの

3月末の退職を待たず入院してしまうので、過日、本来の日より前倒しで辞令を受け取った。 辞令交付と言うのは結構なセレモニーなんである。 前倒しで簡易だったけれど、フカフカ絨毯の部屋で偉い人や偉い人に準じる人が数名いる中、名前を呼ばれて退職の辞令と永年勤続表彰の表彰状をもらった。日付は3月31日だ。 もらって頭を下げたら自分の足が見えた。 あっ! 今日はセレモニーがあるからパンプスを自宅から持ってきていたのに履き替えるのをすっかり忘れていた。いつものくたびれたナースサンダル

【日記】すごくうれしい

花をもらった。 この三月で定年退職するのだけれど、これまで同じチームで仕事してきたとあるプロジェクトの人々からサプライズで花束をいただいた。仕事はこのプロジェクトだけではないから、ほんのひととき、断続的に関わったものだ。 すごく嬉しい。 語彙が乏しくてどうやったらこの喜びや感動が伝わるかわからない。     数名と最後の打合せをして引き継ぎの詳細を確認し、では、といってその場を去ろうとしたときだった。打合せには参加していなかったメンバーの女性がニコニコ近づいてきて、大き

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