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コーラはビールだと思い込む男。

CMで「ビールはのどごし」と聞くたびに、私の頭に浮かぶのはシュワシュワと泡立つグラスの中で涼しげに弾ける炭酸の音。

しかし、お酒が飲めない私は、そのビールののどごしを味わうことが2度とできない。遠い昔に別れた恋人のよう。ちがうか。

と言ってもあののどごしを諦めたわけでもない。

私には、ビールの代わりに「のどごし」を楽しむ信頼の友がいる。それは皆さんおなじみのコーラ。

ビバ、コカコーラ。

ビール好きの友人たちがジョッキを手に、のどを鳴らしている横で、私はひとりでコーラを頼む。もう何ヶ月も飲み会にいってないけど。

「プシッ」という音だぜ。シュワシュワと泡立つ黒い液体は、私をまるで秘密の舞踏会へと誘う魔法のポーション。ポーション? その泡がのどを刺激するや否や、私の顔はにんまりと微笑んでいる。


グラスに注いだコーラを口に含むと、その強烈な炭酸がのどを打つ。「ゴクッ」という音と共に、私ののどは一瞬で炭酸の刺激で満たされ、まるでビールののどごしを味わっているかのよう。っくーーー、これだこれ。これか?



友だちや酒豪は「そんなんじゃ物足りないよ」と言うけれど、私にとっては十分な贅沢。むしろコーラの甘みが口の中に広がり、ビールとはまた違う特別なのどごしを与えてくれる。のか?


それじゃあ足りないでしょ。ビールだよイトーくん。あ、あぁ、せやな。そう語るビール愛好家たちの気持ちもわかる。私もかつてはそうだった。


彼らが飲むビールの爽快感とは違うかもしれないが、私にとってのコーラはのどごしの極上品。しつこいな。

酒場で一人だけノンアルコールのコーラを飲んでいる姿は、少し変わり者に見えるかもしれないが、そんなことは気にしない。気にしたら負け。

思うのは「ビールはのどごし」というけど、コーラで代替できる、はずやねん。

でも「足りないよ」と言うってことは、それは単純にアルコールが足りないということで、アルコールは頭をスッカラカンにしてくれるものだから、みんなスッカラカンになりたいんだな、ということで。

のどごしのどごし、って言うけれど、結局は少しだけ頭をハイにして酔いたいのだ。私はもう酔えないけれど。


〈あとがき〉
ビール、大好きだったんですよね。一生お酒を飲まなくなってからコーラを飲むたびに目をつむり「これはビールだ」と言い聞かせて飲んでいる自分がいます。ビールの奴隷みたいになってます。まだ未練があるみたいでダメだなぁ。今日も最後までありがとうございました。

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