見出し画像

『汝、星のごとく』がめっちゃいい本だった

凪良ゆうさんの『汝、星のごとく』を読んだ。

少し前、電車の中で読んでいる人をたくさん見かけて「そんなに面白いのか」と気になっていた。カバーデザインも青紫色がベースでアメジストみたいにきらめいているし、タイトルの響きも美しい。手元に置いて飾っておくだけでも素敵だ。

続編の『星を編む』がまた、無駄のない美しい小説だということで、星を編むを読むために『汝、星のごとく』を読み始めることにした。

ひとことで感想を述べると、
生きていくことの難しさと覚悟、美しさが詰まった本だった。

特に、ヤングケアラー、物語をつくる苦しさ、女性蔑視の描写がていねいで、重いテーマとしてこの作品にのしかかる。

恋愛小説というか、さまざまな愛の形の小説ではあるんだけれど、
〝 人生とは何か 〟を考えさせられる本だ。

つながれた鎖をほどけない人の心の弱さ、
自由を手にするためにすべてを切り捨てる覚悟。

そういうものを、物語の随所からひしひしと感じられる。

だけど、人の弱さを否定はしない。「それはだめでしょ」「こうすべきだよ」と言われそうな事柄でも、そっと見守り、寄り添ってくれる感じがする。作中に、『誤りをあえて選ぶ』みたいな表現が何度か出てきた。すぐに他人の人生に首を突っ込み、口を出したい人が多い世の中だけど、誤ったほうを選んでもいいのだと、許してくれる。

テーマはひたすらに重い。
だけど、悩みながら、もがきながら、生きる登場人物たちの姿がひたすらに美しい。

泥沼でも、ずっと美しいものを見ている感じで、そういう感覚は初めてかもしれない。

「誰にも理解してもらえない」「なんだか生きづらい」そんなときに読みたい本だ。

好きな言葉

噂の的はいつでも孤独だ

48ページ

「話書いてるとな、いやなシーンとかあんねん。書くのがしんどうて、腹が痛なるときもあるけど、そこ書かんと先に進めんし、絶対おもろなるって信じて書くねや」(中略)「踏ん張れ、暁美」

72ページ

「自分の人生を生きることを、他の誰かに許されたいの?」
島のみんな。世間の目。でもその人たちに許されたとして、わたしは一体――。
「誰かに遠慮して大事なことを諦めたら、あとで後悔するかもしれないわよ。そのとき、その誰かのせいにしてしまうかもしれない。でもわたしの経験からすると、誰のせいにしても納得できないし救われないの。誰もあなたの人生の責任を取ってくれない」

75ページ

「あなたたちは本当に良い子。でも褒めてないのよ」

111ページ

人は自分というフィルターを通してしか物事を見られない。だから最後は『自分がなにを信じるか』の問題なんだろう。

234ページ


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?