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電動キックボードはシェアサイクルの脅威となるのか

 先日、道路交通法の改正案が可決され、各種要件を満たす電動キックボードは「特定小型原動機付自転車」(以下、特定小型原付)として16歳以上であれば免許不要・ヘルメット任意で乗れるようになりました(施行は2年以内なので実際にはまだですが)。電動キックボードに気軽に乗れるようになることで、同じくラストワンマイルを担うシェアサイクルは淘汰されてしまうのでしょうか。

電動キックボードの交通ルールとは

特例電動キックボードのいびつな交通ルール

 最初に述べたように現時点では改正道交法は施行されておらず、特定小型原付は存在しません。しかしながら、東京の街を歩いているとノーヘルで走っている電動キックボードをちょこちょこ見かけます。
 実は現在、「特例電動キックボード」というものが存在し、LUUPなど認定事業者の機体を実施区域内で利用する場合にはヘルメット着用が任意となるなどの特殊なルールが適用されるのです。なぜ現行法下でヘルメットを着用しなくてもいいのか、特例電動キックボードのカラクリを見てみましょう。

 通常、電動キックボードは原動機付自転車に該当するのですが、特例電動キックボードでは道路交通法上の「小型特殊自動車」に位置付けることで、ヘルメット着用を任意としました。小型特殊自動車とは聞きなれない名前かと思いますが、フォークリフトなんかに適用される区分で、普通自動車免許など普通二輪自動車以上の免許を保有していれば運転できます(原付免許はNG)。ただ、この代償として最高速度が時速15キロに制限され、さらに交差点では小回り右折しなければならなくなりました(さすがに危険なので、歩道を押し歩きすることが推奨されています)。
 また、自転車道、普通自転車専用通行帯および一方通行(自転車を除く。)の通行が可能とされています。

横浜ベイエリアでサービスを展開する「ヨコハマベイスクーター」
特例電動キックボードにはLUUP以外にもさまざまな事業者が存在する

特定小型原付の交通ルール〜自転車と同等を目指して〜

 では、法改正で電動キックボードはどういったルールになるのでしょうか。実は電動キックボードが原則として原付に該当するというのは法改正後も変わらないのですが、一定の要件を満たす「特定小型原付」については以下のようなルールとなります。

  • 運転免許不要(16歳未満は運転禁止)

  • 最高速度は時速20キロ

  • 車道通行が原則、自転車道も通行可能

  • 一定の条件下(※)では自転車歩行者道の通行が可能

  • 二段階右折

  • ヘルメット着用は努力義務

※最高速度を一定以下(時速6キロの予定)に制限し、かつランプを点灯させるなど歩道通行モードであることを表示しなければならない。

 比較してみると、特例電動キックボードをベースとして自転車と同等の扱いになるよう修正が加えられているのがわかります。

シェア電動キックボードとシェアサイクルの今後

 では、本題に入りましょう。今回の法改正のポイントは電動キックボードを自転車と同等の扱いにすることでした。これまでシェア電動キックボードは遅さが大きなネックとなっていましたが、これでシェアサイクルと同じラインに立って競争できるようになります。

 こうなると、自分で漕ぐ必要がないという電動キックボードの強みが際立ってきます。立ち乗りゆえ、スカートや着物など服装を選ばないのも大きな魅力です。

 一方で、電動キックボードの多くにはカゴがありません。また、シェア電動キックボードの利用料金単価はおおむね1分あたり10~15円と、シェアサイクルのそれが5~6円なのに比べると倍以上します。

 このようにシェア電動キックボードとシェアサイクルは一長一短であり、ユーザーは棲み分け、もしくは使い分けしていくことになると思います(実際、自転車と電動キックボードの両方を運用するLUUPでは両者のユーザー層が分かれているそうです)。


 ただ当然ながら、シェアサイクルにしろシェア電動キックボードにしろサービスが展開されなければ使うことはできません。導入する側が、電動キックボードの方がトレンドな乗り物で導入価値があると判断する可能性はじゅうぶんに考えられます。そうやって電動キックボードのみが導入されてしまえば、我々は電動キックボードを利用するしかなくなるのです。

 ラストワンマイル問題の解決のためにこれまでならシェアサイクルの実証実験をおこなってきたところ、今後はシェア電動キックボードが実施される。今にも起こりそうな話じゃないですか。

千葉市シェアサイクル事業のポート用地を一部転用して設置されたSUMRiDEのポート

 シェアサイクルが完全にシェア電動キックボードに淘汰されることはないでしょうが、しばらくは電動キックボード優勢な状況が続くと思われます。シェア電動キックボードが当たり前の存在となり、シェアサイクルと共存するようになる日を願って、今後の動向を注視していく所存です。

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