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成木鐔㉑ 四分一地の牡丹獅子図大小鐔

成木鐔㉑ 四分一地の牡丹獅子図大小鐔

鉄鐔作りで有名な成木一成氏による四分一地の牡丹獅子図の大小鐔。
この鐔を手にしたのは2022年の大刀剣市であるが、まさかこのような四分一の成木鐔が存在しているとは思わず、目にした瞬間に衝撃が走ったのは記憶に新しい。
成木一成氏の作ではその殆どが鉄鐔である事は図録を見ても分かり非常に珍しい作に思う。
他に色金だと真鍮の安親写しなどが存在しているようである。
(本鐔については以前こちらのブログで触れた

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金工鐔 伊藤正次①

金工鐔 伊藤正次①

武州伊藤派の初代は伊藤正長と言われ、一説にその弟と言われる人物が今回取り上げる伊藤正次である。
相州小田原伊藤派の祖とも言われ正徳頃(1711年頃)の金工とされる。
伊藤家は慶長頃(1596~1615年頃)からの古い金工家の家柄とされ、伝系は正確には判明されていないものの、一説には正阿弥系、埋忠系、長州萩鐔系、相州小田原系と言われている金工らしい。

「鐔の鑑定と鑑賞 著:常石英明」を見ると、伊藤

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古金工鐔 唐草模様図鐔①

古金工鐔 唐草模様図鐔①

表に葡萄の葉と蔦、裏に葵の葉と唐草を毛彫で表現し、水滴を表現しているのか金と銀の点象嵌が施された古金工極めの鐔。
この鐔の鑑賞記録を残しておく。
縦77.6mm×横76.1mm×耳厚4.5mm、切羽台厚3.8mm。

・象嵌部の拡大金と銀の点象嵌は綺麗な丸い形をピッタリはめ込んでいるというよりは、球のような窪みにラフに打ち込んでいる様子が見られる。

因みに象嵌が外れている部分もいくつかあり、その

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成木鐔⑲ 中津川市制 四十周年記念鐔

成木鐔⑲ 中津川市制 四十周年記念鐔

成木鐔を探していると何度も何度も目にする鐔がある。
それがこの中津川市制40周年を記念して作られた鐔。

表には長野県阿智村と岐阜県中津川市にまたがる「恵那山」と風流踊り、裏には中津川の市章と市の花であるサラサドウダンが描かれている。

同図の鐔はヤフオクでも度々出るし、昨年の大刀剣市でも出品された。

上記は2023年大刀剣市の時の物であるが、ここに書かれているように鍛造の鐔ではなく、鋳造の鐔に

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古金工鐔(花弁虫散図)①

古金工鐔(花弁虫散図)①

最近少し刀装具の鑑賞記録を残せていなかったので久々に。
古金工極めの花弁虫散図鐔である。
縦76㎜、横73㎜、耳厚5㎜、切羽台厚3㎜。
材質は鑑定書では四分一とある。

縦に魚々子が入り古色が感じられる。
「花弁虫散図」という名称が付いているが、虫は蝶と蜂と思われる。
一方で描かれた草花は多い。

草花は知見がなく、どのような物が描かれているか分からないものが多い。

更に鐔全体を駆け抜けるように

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成木鐔⑰道歌鐔(信家写)

成木鐔⑰道歌鐔(信家写)

今回紹介する鐔は無鑑査鐔工、成木一成氏により平成4年に作られた信家写の道歌鐔。
刀連全国大会の天位賞で送られた鐔と箱書きがあります。

この本歌は以下になります。

表裏それぞれ並べて見ます。
櫃孔は後世開けられたものと思われるので、写の方は製作当初の形を再現するためか櫃孔は開けられていません。

この鐔は平成作でいわゆる成木氏の作風が確立した頃の作と見られ、トロンとした艶やかな地鉄をしている。

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成木鐔⑯ 刀匠鐔(鎌透)

成木鐔⑯ 刀匠鐔(鎌透)

今回紹介するのは昭和54年(己未)に作られた古刀匠鐔を写した鎌透かしの板鐔。成木氏は昭和53年から自家製鋼による鐔作りを開始している。
箱は無いが銘の形はこの時期のものと一致しているし、まず成木氏が製作した鐔で間違いないと感じる。
縦104㎜、横103㎜、厚み2㎜(耳、切羽台共)と大型。

こちらは常に見る成木鐔とは鍛が明らかに異質で、一言で言えば泥を乾燥させたような肌をしている。
爪ではじくとカ

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成木鐔⑮ 赤坂初代忠正  鉢木透写

成木鐔⑮ 赤坂初代忠正 鉢木透写

好きすぎる成木鐔の紹介が止まりませんが、手元にある成木鐔でまだ紹介していない物がいくつかあるので気が向いた時に載せていきます。
今回は有名な赤坂鐔の鉢木透写の鐔になります。
謡曲の「鉢木」の物語を比喩した図柄です。

箱書きは無いのですが、鉄の質感や銘の書体から平成頃の作と思われます。

成木さんの作は高温で熱する為か側面に鍛割れが出ているのが多いのですが、こちらの作も出ています。
むしろこれがあ

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梟鐔

梟鐔

「かわいい」

ただそれだけで選んだ鐔と言っても過言でもないかもしれません。

刀屋さんで買っても2~3万円位の安鐔とは思いますが、以外と梟が夜たたずんでいる景色に入り込めるというか、趣が感じられたのでつい手が出てしまいました。

梟(ふくろう)の顔も昔のものは大体このような少しデフォルメされた可愛らしい顔をしています。

耳部は段を付けて一見凝っているように見えるのですが、以前全く同じ外形の鐔で

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成木鐔⑫ 繊細な肉彫「蛇図鐔」

成木鐔⑫ 繊細な肉彫「蛇図鐔」

成木鐔で個人的に多く見るのは透かしの鐔だろうか。
尾張や赤坂、京透など、様々見る。

今回は鉄地でここまで凝った肉彫を施した作もあるのかと驚いた事もあり、購入した品。個人的には傑作の部類に入る1つに感じられる。

昭和57年というと、成木氏が炭焼きからたたら作業を一貫して行うようになった年で、昭和57年11月~昭和58年1月まで連日けら押し作業と記録作成を行っていた。
本作はこの2ヶ月後の作である

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古正阿弥鐔①

古正阿弥鐔①

少し前に購入してみた古正阿弥鐔。
室町時代頃の作と見られており、この時代は応仁鐔や平安城象嵌鐔など装飾性に富んだ鐔が製作されている、と見られている。

尚、室町時代から江戸後期まで埋忠派と並び長く繁栄した正阿弥派。
室町~桃山の物は古正阿弥と呼ばれている。
江戸期以降は全国各地に移り住み、京正阿弥、伊予正阿弥、阿波正阿弥、会津正阿弥、秋田正阿弥、庄内正阿弥、などなど派生。

葵の葉もしくは河骨葉か

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成木鐔⑨紛れる無銘の成木鐔2

成木鐔⑨紛れる無銘の成木鐔2

以前書いた現代鐔工、成木一成氏による信家の亀甲紋写の鐔。

よく見る成木氏独特の艶ある錆色とは異なり古風でしっとりした風合いの本鐔は、個人的にもとても良く出来ているように見え、仮にここに信家と銘があったら信家と信じてしまいそうな出来に見えるほど。もしくは江戸期の明珍あたり。

そんな折、信家鐔を詳しく知る方にお会いする機会があったので本鐔を実際に見て頂き、本歌信家との違いについて聞いてみたところ、

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古金工 家紋小物袋鐔①

古金工 家紋小物袋鐔①

室町時代ごろと思われる比較的小振りな山銅地の鐔。
小物の入れ物と家紋が高彫されたような意匠をしている。
大きさは横59.4×縦59.9×切羽台厚3.3、耳厚3.7mm。

櫃穴は山形と角形をしており、古い形状の櫃孔である事が分かる。