仁獅寺永雪

野生の江戸美術ファン。特に狩野派絵画を愛好。好きな絵師は、清原雪信、狩野章信、狩野伊川…

仁獅寺永雪

野生の江戸美術ファン。特に狩野派絵画を愛好。好きな絵師は、清原雪信、狩野章信、狩野伊川院、狩野永岳など。令和5年8月1日から小説本編の投稿を開始。よろしくお願いします。

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連載中【前書き・物語の概要と前半主要登場人物】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

小説「狩野岑信 元禄二刀流絵巻」前書き ◆ 連載開始: 令和五年十二月十五日 ◆ 物語の概要  狩野岑信は、江戸中期の幕府御用絵師である。竹川町狩野家の次男に生まれながら、特に分家を許され、さらに、父や兄を差し置いて、御用絵師総上席、狩野派最初の奥絵師となった。  特筆すべき代表作もないことから、従来、時の将軍に気に入られて出世しただけの男と見られてきた。しかし、彼は、主君が将軍になったその年に死んでいるのである。これはどういうことなのか。  彼の特異な点は、「松本

    • 【物語の現場039】門前に表具屋はないけれど、甲斐善光寺(写真)

      「狩野岑信」の第四十六章で、吉之助と竜之進は、甲斐善光寺門前の表具店で隠し金山の重要な手掛かりを得ます。  写真は甲斐善光寺(山梨県甲府市善光寺、2022.4.21撮影)  老表具師の作業が終わるのを待っている間、二人は伽藍を見て回り、休憩に蕎麦を食べます。  しかし、考えてみると、私が門前でお蕎麦をいただいたのは2020年の秋に訪れた信濃の善光寺の方でした。現在、甲斐善光寺の門前はちょっと寂しい感じ。ただ、どこからでも富士山が見える。これは本当に羨ましい。

      • 【第46章・暗号文書】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

        第四十六章  暗号文書  吉之助と竜之進が山を下り、甘草屋敷に帰り着いたのは夕方七つ半(ほぼ午後五時)であった。この時期、外はまだ明るい。  吉之助はまず、勝沼と石和の代官に対して状況を通報する書状をしたため、大庄屋・高木治兵衛の家人に走ってもらった。もっとも、すでに農繁期に入っており、山狩りなど出来ない。宿場の警戒を少し強化するくらいだろうが、しないよりはましである。 「物騒なことですな。ともかく、今夜はゆっくりご休息ください」 「助かります。ところで庄屋殿。この辺り

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          新緑の桂離宮(5) 月波楼、そして衝立松

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        連載中【前書き・物語の概要と前半主要登場人物】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

        マガジン

        • 写真で見る物語の現場「狩野岑信」編
          21本
        • 狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)
          48本
        • 庭めぐり写真帳「京都の四季」編
          38本
        • 雑記帳
          30本
        • 写真で見る物語の現場「融女寛好」編
          18本
        • 融女寛好 腹切り融川の後始末(歴史小説)
          36本

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          新緑の桂離宮(4) 雁行型書院と月見台、至高のお月見に憧れて

          新緑の桂離宮(4) 雁行型書院と月見台、至高のお月見に憧れて

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          新緑の桂離宮(3) 中盤の散策編

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          新緑の桂離宮(2) 洲浜からの松琴亭

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          新緑の桂離宮(1) 桂到着編

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          【物語の現場038】天橋立、吉之助は雪舟の名画を見ていたか(写真)

          「狩野岑信」の第四十五章で、吉之助が覚隆の居室に掛かる富士図の不自然さについて竜之進に説明する際、例えとして出したのが雪舟の「天橋立図」  写真は天橋立。ちょっとややこしいですが、「天橋立図」とは逆、雪舟が天橋立の奥にかなり強調して描いた成相寺のある山の側(傘松公園)から見た景色です(京都府宮津市、2023.5.11撮影)。  そして、左上の小窓が、雪舟が画の視点を無視してでも端っこに描き加えた小島(沓島・冠島)。  現地の説明板は、この島は古来より神宿る島とされ、信仰の

          【物語の現場038】天橋立、吉之助は雪舟の名画を見ていたか(写真)

          【物語の現場037】本当は登場させたかった恵林寺庭園(写真)

          「狩野岑信」の第四十五章で、吉之助と竜之進が向かった崖の上の恵光院。その前に登場した恵春院ともども恵林寺の塔頭という設定。どちらも架空の寺院です。  当初、恵林寺と有名な庭園を物語に登場させたかったのですが、実際に行ってみると、やはり恵林寺そのものが大き過ぎ。江戸時代には今より大きかったはず(武田時代はさらに大きく、上の放光寺まで一体だったとのこと)。  従って、ここを占拠したり家探しするとなれば、数名の潜入部隊では無理。また、惨劇の舞台とするにも架空の塔頭とした方がいいか

          【物語の現場037】本当は登場させたかった恵林寺庭園(写真)

          【第45章・不自然な富士図】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

          第四十五章  不自然な富士図 「滅却心頭火自涼(心頭滅却すれば火も自ずから涼し)」で有名な恵林寺。塩山から北の山地に続くなだらかな坂の途上にある。  歴史は古く、鎌倉時代に時の甲斐国主が夢窓疎石を招いて開いたとされる。戦国時代には武田信玄により厚く保護され隆盛を極めた。しかし、武田家滅亡に際し、織田・徳川連合軍による焼き討ちに遭い一山灰燼に帰した。その後、本能寺の変が起こり、織田家の駐留部隊が甲斐から撤退。すかさず甲斐を手中に収めた徳川家康は、人心を安定させるため急ぎ恵林

          【第45章・不自然な富士図】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

          水無月は水無月に、小説執筆のお供(5)

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          再会・融女謝師恩碑、池上本門寺狩野派展へ

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          会食、今回もギリシャ料理で

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          【物語の現場036】吉之助と赤沢が見ていた笛吹川と野生の藤(写真)

          「狩野岑信」の第四十四章で、坂を下って来る敵を待ちながら、吉之助と中年剣士の赤沢が見ていたのが、笛吹川の流れと崖を覆う野生の藤です。  写真は、実際の笛吹川と野生の藤(右下の小窓は中央付近を拡大)。有名な恵林寺から500mほど北にある放光寺に寄った際、国道140号(雁坂みち)沿いの歩道から見えた景色です(山梨県甲州市塩山、2022.4.22撮影)。  ほんと、豪快に咲いています。藤の花は見た目も綺麗ですが、甘い香りがまたよい。ただ、凄い勢いで蜂が寄ってくるので、正直、近所

          【物語の現場036】吉之助と赤沢が見ていた笛吹川と野生の藤(写真)

          【第44章・待ち伏せ笛吹川】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)

          第四十四章  待ち伏せ笛吹川 「私だって助けたい。しかし、出来ないものは出来ない。寺に乗り込み、境内で乱戦になれば飛び道具が使えない」  吉之助は恐々付き従っている地元の役人と猟師たちを振り返った。彼等は近接戦闘の戦力にはならない。若い駒木勇佑も同様だ。従って、斬り合いとなれば三対六、勝ち目はない。  川越藩の潜入部隊を率いる新見典膳は、隠し金山の手掛かりを求め、甲府藩の元家老・太田正成の嫡子を探している。その者は父親の死後に出家し、禅僧となった。覚隆の名を授けられ、最

          【第44章・待ち伏せ笛吹川】狩野岑信 元禄二刀流絵巻(歴史小説)