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人的資本経営について その1

巷間における人的資本経営に関する記述やセミナーの内容がなんかもやもやするので、自分でまとめてみた。社労士の守備範囲である中小企業を意識してまとめている。正確性よりも「わかりやすさ」を優先しているので、多少雑に感じる方がいらっしゃるかもしれないが、そこはご容赦いただきたいと思います。長文になりそうなので、区切って書くことにします。


人的資本経営とは

人的資本経営とは、「人材を資本と捉えその価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる。且つそれを制度的義務や経営目的に応じて戦略的に開示する」というものです。要するに人を大切にし、いかに大切にしているかを公表するという事ですが、従来のヒトを大切にするということが「雇用を守り抜く」といった概念ではなく従業員のエンプロイアビリティ(どこに行っても雇用される能力)を最大化するための教育と、その従業員が能力を発揮しやすい環境を作ることで企業目的の実現と企業価値の最大化を図ろうというものです。

何故?その背景と必要性

ココを語っていないのが多すぎる。法律だからで済ませてしまい、その必要性を認識していない。企業は最低限の情報をやっつけ仕事で出すだけになってしまい、担当社員にとっては大して意味をなさないめんどくさい仕事になっておしまいである。

何故、人材を資本と捉えなければならないのか?ここから入りたい。
従来の企業経営では、資本と資産、いわゆる有形資産を開示すればよかった。それが企業の価値や将来性を計るのに適していたからだ。ところが、だんだんと企業の市場価値に占める”無形資産”の割合が増えてくることになる。人が経営の中心になっていくという事だが、これには理由がある。それは、市場の変化のスピードが速くなっているということだ。ICTの急速な進歩や、コロナの大流行は予測しえない変化だった。従来の企業は、あまり変化のない市場の中で生産性を重視した経営を行ってきた。「昨日と同じことを今日もやる」環境の中ではイノベーションよりも高い再現性が、スピードよりも正確性が求められる。企業経営は仕組化し、ヒトは「企業の歯車」に例えられるように仕組みの中で役割を果たす事が求められた。しかし、市場の変化のスピードUPに伴い、仕組化のデメリットが浮き彫りになってくる。それは、仕組みの再構築に時間とコストがかかりすぎるということだ。また人材の同質性が高まっているためイノベーションが起きにくい環境だという事もある。新たな市場に適応するためには、市場や働き方の変化に適応した商品の開発や販売すべき市場の選択、販売手法などを考え、実行に移すためのイノベーションが起こせる人材が求められるようになってくる。SDG’sなど環境に配慮した企業活動を生み出していくのもヒトである。ヒトがイノベーションを起こすのである。そこにヒトに着目する理由がある。変化の激しい時代には、企業価値を計るのに無形資産であるヒトが重要な指標になってくる。投資家たちは投資判断のために人的資本内容の開示を求めるようになってきたのだ。

もう一つは日本ならではの理由、人口動態の変化だ。少子高齢化の影響により生産年齢人口は1995年から減少に転じている。従来の日本企業はその中心に働く場所や仕事の内容などキャリアを会社に一任する替わりに雇用を長期に渡り保証してもらう”無限定で働く男性正社員”を据えていた。しかし、生産年齢人口の減少に伴い男性正社員の候補は減少していく。それを補ってきたのが何らかの制約を持ち無限定では働くことのできない人たち、即ち既婚、若しくは子育て中の女性、高齢者、外国人、障害者などであった。人口減少にに伴い、労働力は貴重な存在となっていく。いつのまにか、買い手市場であったのが売り手市場に変化していった。しかもこの流れは、当分の間逆転することはないだろう。企業は労働力の確保がまず必要となる。男性正社員の候補が減少していく中にあって、企業の中核となって働く正社員となり得る女性にフォーカスが当たるのは自明であろう。例えば、女性の労働力を最大限に生かし、管理職に育成する力のある企業の価値が高まっていくのは、長期的に見たら当然の流れだ。また、売手市場に逆転していく中で従業員の価値観の変化や、企業がその変化を受け入れなけれなばならない必要性に大きな変化が生じている。在宅勤務やフラットな上司部下の関係性、終身雇用の否定にからくる”どこに行ってもメシの食える能力”を身に着ける事などの要求に応えていくことが人材の確保に大きな要点となっている。貴重な資本であるがゆえにヒトを大切にする必要が生まれてくるのだ。

人的資本経営のながれ


伊藤レポートの内容

長くなってきたので次回にします。



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