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人的資本経営について その2

身内から、「よくわからな~い、途中で読むのをやめちゃった!!」との厳しい指摘が入ったので、だいぶ端折りながら文章にすると、以下のようになる。

人的資本経営とは、経営戦略と人事戦略の整合性をとる事。つまり、経営戦略達成のためにどのような人材がどれくらい必要かを把握し、その人材の手当(育成OR採用)の方針と、力が発揮しやすい労働環境の整備をおこなうこと。
そして、人材の手当方針と労働環境の整備について法令を意識しながら、戦略的に公開すること。となる。

何故、今人的資本経営なのか?経営者目線で言えば、
・予測できない変化が次々とやってくる(ITC、コロナ、戦争など)
・予測できる大きな変化がもうすぐやってくる(日本の少子高齢化による労働人口の減少)

この2つに対応するには、資産と仕組みの経営では難しく人の能力を中心に据えざるを得ないからである。(と思う)加えて「ステークホルダー、特に投資家への材料として」があげられる。

人的資本経営の歴史

・2018年12月、国際標準化機構より「ISO30414」が策定
・2020年8月、米国証券取引委員会(SEC)が上場企業に対し、人的資本の情報開示を義務化
・2020年9月、経済産業省が「人材版伊藤レポート」を公表
・2021年6月 コーポレートガバナンスコード改訂版 発表
・2022年5月 経済産業省が「伊藤レポート2.0」を公表

これだけです。歴史が浅いように思いますが、これこそ「急激な変化」の象徴ではないでしょうか

2018年12月、国際標準化機構より「ISO30414」が策定
リーマンショック以降、投資家から企業の無形資産、すなわち人材情報に対する開示要求が強まる。事の発端はココにある。産業の中心が大量生産を軸とする製造業や設備業だった時代、利益の源泉は設備資本と金融資本だった。しかし、産業構造が大きく変換し、サービス産業やソフトウエア産業が主流となってくる。その競争力の源泉は、そこで働く従業員のアイデアや能力などの無形資産であり、投資家としては、有形資産を表している財務諸表を見たところで企業の成長性を判断することができない、というところから無形資産、特に人材に注目が集まるようになる。また、既存の産業も急速に変化している。あらゆる業界でデジタル変革やサービス化が進み、そこで働く人材の重要性が高まっている。つまり”回すひと”ではなく”作る人”が重要になってくる。このような状況で、投資家などの要望に応えて、2011年、国際標準化機構(ISO)において人材マネジメントに関する規格を開発する技術委員会「TC 260」が発足する。TC 260での標準化作業を経て、2018年に出版されたのが「ISO30414:社内外への人的資本レポーティングのガイドライン」となる。

2020年8月、米国証券取引委員会(SEC)が上場企業に対し、人的資本の情報開示を義務化
義務化の理由は上記と同じ。
SECは財務諸表以外の開示に関するSECの要求事項企業の情報開示に「登録者(企業)の事業を理解するために重要な範囲において、人的資本の状況説明を求める」という一文を加えた。開示すべき情報の具体的な内容は、企業の自主性に委ねられている。ただし、SECは最終ルールの中で「雇用者数を含む登録者の人的資本の説明を求める」とし、その例として「人材の誘致、育成、維持」に言及している。つまり、少なくともこの3つの項目については、情報の開示を期待していることになる。

・2020年9月、経済産業省が「人材版伊藤レポート」を公表
意外と歴史がある。実は、伊藤レポートとは2014年8月に公表された伊藤邦雄一橋大学教授(当時)を座長とした、経済産業省の「『持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~』プロジェクト」の最終報告書が始まりである。この伊藤レポートの問題意識は、日本企業の収益性が長期的に停滞している現状をいかにすれば改善できるかという点であり、レポートの中では、これを「持続的成長の促進」という言葉で議論している。

その後2017年にアップデート版がでる。2014年公表の伊藤レポートで示された企業と投資家の協調による価値創造に向けて、より具体的な道筋を検討している。主たる検討課題は、①企業による戦略投資がどのように行われ、それをどのように評価すべきか、②投資家の動向が現状どのようになっていて、今後いかにすれば中長期的な投資を促せるか、の2点である。

で、2020年に公表された「人材版伊藤レポート」につながっていく。
正式名称は「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書」

コロナ禍でリモートワークが進展する中、時間や場所にとらわれない働き方を選択できる環境整備が急ピッチで進んでいるが、問題の本質は、「非連続的で予測が困難な時代環境の中で課題への抜本的な対応が求められていたにもかかわらず、その本格的な着手が先送りになっていたことにある」としている。課題への抜本的な対応とは、人的資本に関わる問題を経営陣が率先して企業理念やパーパスに立ち戻り、目指すべき将来の経営戦略からバックキャストして、保有する経営資源(人材)との適合性を問う事としている。

・2021年6月 コーポレートガバナンスコード改訂版 発表
東京証券取引所の市場区分の変更にあわせ、外国資本を意識した上で、「コーポレートガバナンスとは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する。」とし、「コーポレートガバナンス・コードとは、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたもの」としている。

その理由としては
・コロナ禍を契機とし企業を取り巻く環境が目まぐるしく変わる中でも持続的成長と中長期的な企業価値向上を実現するためにガバナンスの諸問題に企業がスピーディに対応する必要があること
・プライム市場上場会社(2022年4月東京証券取引所市場再編後の上位市場)において、一段高いガバナンスを目指して取り組むことが重要であること
の2つを上げている。内容として取締役会の機能向上、中核人材の多様性の確保、サスティナビリティの3つを主に取り上げている。

人的資本経営に絡む情報開示については、順次施行を行っていて、2023年3月期の有価証券報告書より開示を義務付ける方針である。その他既に開示が義務付けられている項目もあり、投資家への情報開示の流れは今後ますます強くなっていく(と思う)











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