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”一族政府”? 「信用できるから」との理由で長女の「副首相任命」を支持した”独裁者”チェチェン共和国首領ラムザン・カディロフ氏


【画像① 2000年代以降、若き日からチェチェン共和国のトップの地位を占めるラムザン・カディロフ首長(中央)。私兵集団「カディロフツィー」による武力支配を国内に及ぼしている他、昨年からのロシア軍によるウクライナ侵攻「特別軍事作戦」へは、ドンバスへの部隊派遣を行って全面支援している。】


◆共和国といいながら”独裁的”首長が率いるロシア連邦内の特殊な自治共和国チェチェン



ロシア報道で、チェチェン共和国の首長カディロフ氏が自身の長女アイシャット・カディロワ氏(24)を副首相に任命する首相からの提案に賛成、支持したとの話が伝わってきた。その要旨は後で示すとして、ロシア連邦内のイスラム自治共和国としてのチェチェン共和国の特殊性の一端を示す出来事だといえる。

現在の首長、ラムザン・カディロフ氏は、父が2004年に暗殺された大統領であり、同年から第一副首相に就任。2007年にはチェチェン共和国第3代大統領となり、2010年からは大統領の職名を首長に変更して、今に至る。同氏は現在46歳であるから20代後半から30歳でチェチェン共和国のトップに躍り出たわけである。

カディロフ氏は、ロシア連邦からの離脱・独立をかけて1990年代に激しい武装闘争を繰り広げたチェチェンとロシアとの和解に父と共に尽くし、父は結果として反対派に暗殺され自身も数度にわたる暗殺未遂に遭っている。しかし、ロシア連邦内でのイスラム共和国としての自治を拡大しつつ連邦にとどまるという妥協策を堅持し、プーチン政権側の容認を経て、結果として自身の権力基盤を強めてチェチェン共和国の独自の政治・文化体制の維持に成功してきている。

プーチン大統領との信頼関係は深く、昨年らいのウクライナへの「特別軍事作戦」開始に際しても、ドンバス地方に自身の私兵的な親衛隊というべき「カディロフツィー」部隊をドンバスに派遣し、マリウポリ攻略戦やバフムートの戦いの最前線で活躍させた(この部隊には16歳のカディロフ氏長男も従軍し、前線でウクライナ兵捕虜2名を捕らえて父のもとに連行し「献上」している)。


(参考映像)「ウクライナ兵捕虜をマリウポリで父に引き渡したカディロフ首長の息子」2022/10/19 CRUX NEWS ※ショート動画
https://youtube.com/shorts/uxTtcxPTXdI?si=OvpmjexhDKyDlqL4

カディロフ氏はイスラム教徒として4人の妻をもち、12人の子女をもうけている。もともと大統領の子息という立場で政府要職に入り、共和国トップに至った同氏の周辺は一族による支配、ポスト世襲の匂いがし、それは金日成、金正日時代の北朝鮮の「金一族支配」の政治体制を思わせる(金正恩以降は一族内の殺害まであり、それが崩れた印象がある)。

西側諸国では「独裁者」と常に呼ばれ、「カディロフツィー」による武力弾圧を背景とした”恐怖政治”が批判されてきたカディロフ氏なので、今回の閣僚人事も批判的な報道がされていくだろう。プーチン大統領は、チェチェン共和国内でのカディロフ氏のスタンスに何ら介入もせず、批判もしないが、この度のロシア報道(やや独立系)はニュアンスがかなり冷めた目で見ていることを感じさせる。


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