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『古事記に秘められた聖地・神社の謎 八百万の神々と日本誕生の舞台裏』出雲族の歴史は、戦後の天孫族の歴史となる?(日本の歴史)

 DNA分析が進んできたため日本の各地方の遺伝子の分布もわかってきた。アイヌ、沖縄には縄文系の遺伝子を含む人が多いことが知られているが、同じように出雲地域も縄文系の遺伝子を含む人が多い。

 縄文系のネットワーク連携として出雲、越国(北陸)、筑後(九州)の原始日本人が、「高天原」「葦原中国」「根の国・黄泉の国」の3層ヒエラルキーをもつ大和民族に支配されるという図式は、太平洋戦争後のアメリカの支配と重なる。そのような歴史から生まれた、「保守的・消極的」「閉鎖的・排他的」「依存的・従属的」「無口・無表情」という出雲人の特徴は、現在の日本人の特徴と合致する。つまり、「日本人を煮詰めると出雲人になる」という意味で、古事記は未来の日本に参考になるはずだ。

 本書の著者は神道学者として、古事記を「足で読む」ため、古事記に登場する聖地・神社を歩いた結果をまとめたものが本書になる。

 特に諏訪大社についての記述は面白かった。諏訪の地はもともと守屋大臣の所領だった。そこに出雲のタケミノカタ(出雲のオオクニヌシの次男)が攻めてきて、上社本宮を居所に定めたという。このような出雲の国譲りの物語のようなことが諏訪の風土伝承にある。長野市豊野町には伊豆毛(いずも)神社や妙高市小出雲という地名もあり、出雲からタケミナカタが訪れた痕跡が残っている。

 三輪山と出雲つながりも面白い。三輪山の祀られているオオモノヌシは、出雲のオクニヌシと同神とする伝承がある。三輪山の周辺には出雲系の地名が散見されることから、出雲勢力は古くから三輪山周辺の大和に進出していたという説、国譲りの後に多くの出雲の支配側の人たちが大挙して大和に強制移住させられたという2つの説がある。そのため三輪山の神であるオオモノヌシを故郷の神であるオオクニヌシと重ね合わせているのだろう。

 諏訪大社は日ユ同祖論を信じる人たちが注目する土地でもあるが、出雲大社に続いて、諏訪大社、三輪山は足で歩いてみたい。なぜなら、日本人とは何かを知る意味で、出雲族の歴史を調べると、戦後の天孫民族の将来を知ることにつながると思われるからだ。

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