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分割される世界 − A/Bテスト

↑前回のつづき

たとえば自社の通販サイトの購入ボタンは何色が押されやすいか。

これを確かめるには実際に色を変えてみればいい。ウェブ上の画面なら即座に反映される。1週間ごとに入れ替わりで試してみてクリック率を集計すればどの期間で多く押されたかがわかる。

この方法の問題はボタンの色だけが影響しているとは限らないことだ。赤いボタンのときに多く押されたのはたまたまSNSでバズった時期と重なっていたからかもしれない。

A/Bテストと呼ばれる手法はこれを期間ではなく無作為に振り分けた訪問者のグループごとに比較する。ほぼ同時にアクセスした訪問者Aには赤いボタン、訪問者Bには黄色いボタンが表示される。

これで統計的にはボタンの色だけがクリック率に影響することになる。AさんもBさんも自分がどのグループなのかは知らない。グループ分けされていること自体を知らないので他の人にも同じ色のボタンが表示されたと思っている。

比較実験はボタンの色である必要もない。商品説明の文言でも写真の構図でもいい。あまり極端に変えると被験者(お客さん)の間で気づかれて有意な結果が得られなくなるが。

同じものを見ているのに違うものが見えている。物理空間では考えにくいことがサイバー空間では普通にあり得る。これは面白い。

↓つづく