林の中を歩くふたつのあし。 互いの足取りは拙く遅く、唯一繋ぐ手と手は薄く今にも剥がされそうだった。ときおり何もないところで立ち止まり周囲に目を張り巡らせる。 小梢や動物たちの鳴き声はひとつとして同じものはなく空気を振動させ小さい耳はそばたったまま頑なに動かない。 「どっち?」 後ろから聞こえた人の声に指先を震わせ、前に歩いてはハッと止まり、幾ばくか逡巡して立ち尽くし、魚のように口は泡を喰い目をうろたえ伏せる。けれどそれもすぐに閉口し再度足を引きずる
―――――――――― ごきげんよう、お久しぶりです。 随分とお返事に手間取ってしまいました。遅くなってしまったこと、お詫びいたします。 さて、私は三つほどあなたに伝えなければいけない事を抱えております。 まずは一つ目にあなたを引き留めなかったこと、深く後悔をしています。 二つ目にあなたの笑顔を信じすぎてしまったこと、毎夜重ねて夢を見ます。 三つ目はあなたの祈りを散々に食べ散らかし強奪していたこと、今も頭の裏を引っかき回して止みません。 そして今件で最も重罪であり
北極の氷山が解けて崩れ落ちたニュースを見て君は、クーラーの効いた12平米の居間の中央、深夜放送を垂れ流したテレビの前でぽつり悲しそうに呟いた。 「目をつむったらお終いね。どうしようも無いなんて嘘ばっかり」 電子の光が暗い部屋の壁を伝って反射する。閉めきったカーテンと冷蔵庫の稼働音が鳴り続く中、ただじっと春を待つ幼虫のように背中を丸めて座る。 そういえば、いつだかそんな姿を年寄りだと抽象した時があった。 ずっと憧れていた。達観した老人になることを夢見て言ったことだ
note 何か書けたら書くつもりです。 よろしくお願いします。 /いいば プロフィール: ・成人 ・北在住 ・イラスト(おおふじ君)より ・「世界ネコ歩き」を永遠と繰り返し眺めてる ・好きな音楽を永遠と繰り返し聴いている ・散歩 散歩 ・ホラー映画とか