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1961年生まれ男性です。ロンドンに10年、香港に3年在住しました。仕事、海外経験、先…

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1961年生まれ男性です。ロンドンに10年、香港に3年在住しました。仕事、海外経験、先人たちにも導かれた本、マンガ、映画、演芸や様々な舞台を、自分なりに吸収してきました。現在進行形の事柄も含め、アウトプットしています。読んでくださる方の日々が、少しでも潤えば幸いです

最近の記事

「画鬼 河鍋暁斎 x 鬼才 松浦武四郎」@静嘉堂文庫美術館(丸の内)〜“涅槃図“と“地獄極楽めぐり図“

開催終了間際の紹介で心苦しいが、そのタイミングでの訪問になってしまったので仕方がない。 東京丸の内、明治生命記念館内にある静嘉堂文庫美術館で開催されている、「画鬼 河鍋暁斎 x 鬼才 松浦武四郎」、6月9日までの開催である。今日を入れて、あと二日。 静嘉堂は、岩崎彌太郎の弟、彌之助とその息子小彌太(いずれも三菱社長)によって創設された、故美術品のコレクション。その一般展示のために2022年オープンしたのが、この美術館である。 この展覧会で取り上げられている松浦武四郎(18

    • アガサ・クリスティー著「予告殺人」〜名作かそれとも・・・

      時折、ふとアガサ・クリスティーのミステリーに触れたくなる。丁度、Amazon Audibleに「予告殺人」の新訳(ハヤカワ・クリスティー文庫、原書は1950年発行)が入っていた。読んだこともあるように思ったが、購入した電子書籍を検索してもヒットしないので、スタートした。 出だしが好きである。イギリスの田舎、チッピング・クレグホーン村の新聞配達員の様子が描写される。各家庭の注文に従って、毎朝《タイムズ》《デイリー・テレグラフ》といった全国紙を配達する。そして、金曜日にはほぼす

      • 大井町で食べた“まっとうな“ラーメン〜「立食い中華蕎麦 いりこ屋」

        大井町の一人呑みは、ここのところ「こいさご」一択。いつものように、ホッピーと軽いつまみ。 時間も早かったので、ちょっとラーメンの誘惑に。 大井町駅のそば、小さなスナックなどが並ぶ路地が何本か走る。再開発などして欲しくない、“昭和“が残る一角。そこにある「いりこ屋」が、前からちょっと気になっていた。 「大井町 立食い 中華蕎麦」と看板に掲げているように、スタンディングのお店。入り口に置かれた小黒板に“本日のスープ“が書かれている。 [境港」 真いわし 片口いわし アジ干

        • 何度見ても爆笑と感心〜マルクス・ブラザースの「オペラは踊る」は最高に面白い!!

          MLBの試合、7回表が終わるとSeventh-inning Stretch。観客は立ち上がり、伸びをし、“私を野球に連れていって〜Take Me Out to the Ball Game“を合唱します。 TV中継から流れる曲を聴いていた妻が、「この曲が出てくるマルクス・ブラザースの映画があったはず。久しぶりに観たい」と言い出しました。「オペラは踊る(原題:A Night at the Opera)」(1935年)です。(Amazon Prime等で配信。U-NEXTでは「マ

        「画鬼 河鍋暁斎 x 鬼才 松浦武四郎」@静嘉堂文庫美術館(丸の内)〜“涅槃図“と“地獄極楽めぐり図“

        • アガサ・クリスティー著「予告殺人」〜名作かそれとも・・・

        • 大井町で食べた“まっとうな“ラーメン〜「立食い中華蕎麦 いりこ屋」

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          最後の喜劇人と呼ばれて〜笹山敬輔著「笑いの正解 東京喜劇と伊東四朗」(その2)

          (承前) 昨日、ダラダラと伊東四朗の思い出を書いたのですが、その伊東さんの評伝が笹山敬輔著「笑いの正解 東京喜劇と伊東四朗」(文藝春秋)です。 その副題にある通り、伊東四朗という“最後の喜劇人“を中心にしながら、“東京喜劇“とはなにかを掘り下げた作品です。 伊東四朗は、舞台で演じられる芝居やコントが大好きで、それが高じてその世界に入っていきます。そして、多くの先人たちから刺激・指導を受けながら喜劇人として成長していきます。 そこには、もちろん出会い〜縁があるのですが、

          最後の喜劇人と呼ばれて〜笹山敬輔著「笑いの正解 東京喜劇と伊東四朗」(その2)

          最後の喜劇人と呼ばれて〜笹山敬輔著「笑いの正解 東京喜劇と伊東四朗」(その1)

          1960年代の終わりから70年代にかけて、つまり私の子供の頃は、東京と大阪は違った世界でした。テレビの世界で私の目と耳に馴染んでいたのは、上方の漫才・落語、そして吉本新喜劇。子供にはちょっとつらかったのですが、祖母が好きだった藤山寛美の松竹新喜劇。 東京の芸人・喜劇がテレビで流れることは多々ありましたが、ドリフターズ(東京的な洒脱さのかけらもないスラップスティックは、まさしく地域性を超越していました)を除くと異世界のものという感じ。伊東四朗が属していたてんぷくトリオもそんな

          最後の喜劇人と呼ばれて〜笹山敬輔著「笑いの正解 東京喜劇と伊東四朗」(その1)

          私の視界を大きく広げたマンガ〜大島弓子「たそがれは逢魔の時間」

          以前にも書いたと思うが、大学受験が近づくころ私は少女マンガにハマった。それまでもマンガは読んでいたし、妹が買ってくる少女マンガ誌も読んでいた。 しかし、1970年代の後半はその域を超えてしまった。一つのきっかけとなったのは、1978年に発表された大島弓子の「綿の国星」(白泉社「LaLa」)だ。これは、とんでもないことが起きていると思った。 当時「綿の国星」は第一作が「夏の終わりのト短調」とカップリングして、単行本化されていた。私はこれを読み、「LaLa」を購読し始め、大島

          私の視界を大きく広げたマンガ〜大島弓子「たそがれは逢魔の時間」

          PayPayポイントでiPad Proを買った〜M4搭載11インチモデル(その2)

          (承前) 2024年5月、満を持して登場した11インチiPad Pro(M4)は、私の持つ第一世代のA12X Bionicチップから、M4へとアップグレード。ディスプレイは、Ultra Retina XDRで、なんだか分からないが、これまでのLiquid Retinaをさらに進化させたものらしい。 縦横のサイズはほぼ同じだが、厚さが5.9mmから5.3mmと薄くなり、重量は446gと20g程度軽くなった。 価格の方は、私が購入した256GBストーレージのWi-Fi+Ce

          PayPayポイントでiPad Proを買った〜M4搭載11インチモデル(その2)

          PayPayポイントでiPad Proを買った〜M4搭載11インチモデル(その1)

          私はiPad Proを愛用している。2018年に発売された11インチモデル(第一世代)、これにSmart Keyboard Folioというカバーとキーボードが一体化したものを装着している。本体が468g、カバーが約300g、合計768gを通勤時などに携帯して使用している。 Wi-Fi+Cellularモデルで、ソフトバンクのデータシェアプランに加入、iPhoneとデータ量を共有し、常時ネットに繋がる環境にしている。それまで使っていたiPad AirはWi-Fiのみで、必要

          PayPayポイントでiPad Proを買った〜M4搭載11インチモデル(その1)

          村上春樹の「ノルウェイの森」を再訪する(その2)〜“100パーセント・リアリズムへの挑戦“

          (承前) 1991年に出版された、講談社「村上春樹全作品1979ー1989」第六巻には、“100パーセント・リアリズムへの挑戦“とした、「ノルウェイの森」に関する村上自身の解題「自作を語る」が挟み込まれている。 僕は六十二歳の今、二十代で初めて読んだ「ノルウェイの森」を再読し、前回その感想を書いた。その後にこの文「自作を語る」を読んだわけだが、非常に面白かった。 1985年に「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を上梓してから二年間、村上は<長編小説を書こうとい

          村上春樹の「ノルウェイの森」を再訪する(その2)〜“100パーセント・リアリズムへの挑戦“

          村上春樹の「ノルウェイの森」を再訪する(その1)〜「大学生が読むべき小説」か

          先日、僕は平野啓一郎の「マチネの終わりに」について、村上春樹の「ノルウェイの森」(1987年講談社)と対比した。 「ノルウェイの森」の朧げな印象をもとに書いたのだが、久しぶりに読み返してみたくなった。そこで、Amazon Audibleに入っていた妻夫木聡の朗読を聴き始めた。 プロローグ的な第一章のあと、主人公であり語り手である“僕“、ワタナベ君が私立大学に入学、東京の学生寮に入って生活を開始する第二章から物語は本格的にスタートする。1967年の春の出来事であり、三十七歳

          村上春樹の「ノルウェイの森」を再訪する(その1)〜「大学生が読むべき小説」か

          「ある男」の先には“最愛の人の他人性“〜平野啓一郎「本心」

          「ある男」(2018年)という傑作を書いたあと、平野啓一郎はどこに向かったのか。それを知りたくて、次作「本心」(2021年 文藝春秋)を読んだ。 あなたが愛するAという人物がいるとする。Aについて、あなたが知っていることは、直接の対話を通じて得たもの。Aという人物が他者について放った情報で、あなたが間接的に得たもの。あなたの中のAは、こうしたインプットによって出来上がっている。 こうして作り上げられた、あなたの中のAという存在は、Aの実体を表しているのだろうか。 近未来

          「ある男」の先には“最愛の人の他人性“〜平野啓一郎「本心」

          町会の総会に出席してみた〜地域の活動に少しだけ興味を抱く

          私は目黒区に住んでいるが、町会という自治組織がある。回覧板が回ってくる時にしか存在を意識しないし、町会費を払う以外には積極的に関わっていない。 回覧板は、十数世帯単位のグループ毎に回覧され、久方ぶりにグループの世話役が回ってきた。説明会が催され、多くの人が集まっていた。そこでは、町会の様々な活動が紹介されていた。 これまで関心を持っていなかったのだが、私も地域コミュニティというものを意識する世代になったのだろうか、こんどは総会の案内が来たので、どのようなものなのか見てみよ

          町会の総会に出席してみた〜地域の活動に少しだけ興味を抱く

          大宮で食べたもの食べなかったもの〜「めしのタネ」と“ご当地グルメ“

          社用で大宮へ行った。午前中に用事が終わったので、ランチの場所を探してみる。 興味がわいた店、「めしのタネ」。 日本人はハンバーグが好きである。いつも大行列で行ったことがない店が、東京駅の「極味や」。厳しい予約合戦を勝ち抜かなければならないのは、渋谷の「挽肉と米」。もちろん、行けていない。この両店に共通するのが、ハンバーグに加えて、ご飯へのこだわり。 この大宮「めしのタネ」も、店名が示す通り同系統の店のように見受けられる。 大宮のソニックシティから、駅の反対側に抜け、1

          大宮で食べたもの食べなかったもの〜「めしのタネ」と“ご当地グルメ“

          一体“悪“とは何なのか(その2)〜手塚治虫が「バンパイヤ」で描こうといたものは

          (承前) バンパイヤは人類の味方なのか、それとも敵なのか。バンパイヤと人間の共生は可能なのか。そしてロックこと間久部緑郎の運命やいかに。クリアな答えを出さない状態で「バンパイヤ」第一部は“大団円“と題されたエピソードで終了する。 掲載誌を変えた第二部のオープニングは、江戸時代に舞台を移し、幕府転覆を企んだ由井正雪の乱を背景に、南町与力の檜垣九十郎が登場する。第二話は1933年インド・パンジャブ地方で発見された、奇怪なオオカミ少年のエピソード。これらをプロローグとして、「バ

          一体“悪“とは何なのか(その2)〜手塚治虫が「バンパイヤ」で描こうといたものは

          一体“悪“とは何なのか(その1)〜手塚治虫が「バンパイヤ」で描こうといたものは

          講談社の「手塚治虫漫画全集」。随分前に電子書籍で全巻を購入し、少しずつ読み進めてきた。全400巻を、原則第1巻から読了していっており、辿り着いた第320巻は「バンパイヤ第4巻」である。「バンパイヤ第1〜3巻」は全集の第142〜144巻に収録されている。 私は再度第1巻から読み通してみた。 「バンパイヤ」の第一部(全集1〜3巻)は、1966〜67年「週刊少年サンデー」に連載された。第二部(全集4巻)は1968〜69年に「少年ブック」に連載されたが、同誌が休刊となり未完となっ

          一体“悪“とは何なのか(その1)〜手塚治虫が「バンパイヤ」で描こうといたものは