hIto

喫茶店店主です。 父から継いだ2代目です。 想いの溢れるこの店であったあれこれを 書き…

hIto

喫茶店店主です。 父から継いだ2代目です。 想いの溢れるこの店であったあれこれを 書き残していこうと思います

最近の記事

写真

カメラを買おうと思ったのは この店の隅から隅までを 写真で残していきたいと思ったからだ。 いつかはやってくる南海大地震。 店を始めて51年。建てられたのは私が生まれるよりもっと前のこの建物が持ち堪えられるとは思えない。 ドアの取手のカーブ。 店名の由来と間違われる大きな時計。 スズランのようなシャンデリア。 バック棚の木の細工。 その時のために残しておきたい。 今日はカメラ持ってきて数枚撮影してみた。 一枚一枚どれも愛おしい。 わかったことは撮った写真に上手い下手はない

    • 考えたこともない

      昔父のバイク仲間だった でも私と同い年くらいの男性が 昨日来店した。 カウンター前へやって来て 言いにくそうにでも意を結したように 「実はお願いがあって来ました」 と話し始めた。 「パラゴンの行く先は決まってますか?」 「え?」意味がわからず聞き返すとも一度 「パラゴンの行く先は決まってますか?  本当に失礼なのですが」と。 考えたこともなかったので正直に伝えると 丁寧に名刺を渡してくれて 「もしお考えになるときにはお知らせ下さい」 と言った。 行き先 例え南海大地震

      • なんてことないはなし

        一緒にいると似てくるのか 似ているから一緒にいられるのか 私とスタッフYは似ていると思う。 お客さんへのスタンスも。 あまり本は読まないけど 飲食業の方が書いた本は好き。 最近読みかけの本で著者が修行していた店での話があり、そこは 「ありがとうございました」 ではなく 「ありがとうございます」と言うルール。 ございました。ではそこでプツッと切れてしまう。関係性が終わってしまうとのこと。 そこで昨日朝から気をつけていたら やはりございました。と言ってしまい 時々ございます。

        • 新しい趣味はじまる

          娘がカメラで撮る写真が素敵なので 私も欲しくなっていた。 日々変わる店。 昼寝するねこ。 おいしく焼けたお菓子。 一瞬一瞬を残して行けたら楽しいだろう。 でも周りにカメラが趣味の人はいないし カメラ屋さんへ行くのも無知すぎて敷居が高い。 そこで思いついた作戦はメルカリで中古を買ってまず触ってみよう。慣れてみよう。 話しはそれからだ。 メルカリのカメラ関係を2-3日、目がパシパシするくらい見続けたけどさっぱりわからないので最後は色とデザインで選んでしまったのは今朝。 昔っ

          午後にお願い

          いつも午前中集金に来る女性に 「集金は午後にお願いします」とお願いした。 するとランチでてんてこまいの時に来たりするので噛み合わない人とはどこまでも噛み合わない。 「商売人は午前中にお金が出て行くのを嫌うんですよ。」喉元まで出かかっているが 商売人でない人には言っても分からないかもしれないし自分よりひと回り以上年上の人に偉そうに言う勇気もない。 2年ほど前駐輪場の壁を強化してもらった会社の会長の自宅がすぐ近所にある。気さくに挨拶をしたり朝の散歩で奥さんともよく一緒になるご

          午後にお願い

          働き方改革

          2週間試してみたことがある。 「閉店後片付けたらまっすぐ家に帰る。」 いつも必ず2階の工房に行き、生地を仕込んだりクッキーやケーキを焼いたりしていた。 今日は早く帰ろうと朝には思っていてもいつも9時10時。翌朝できなかったらと思うとついついあれもこれも。お菓子を焼くのが楽しいこともあってつい長居。 子供が巣立って仕事し放題とは思っていたけど 家も大事にしていこうという気も起きてきた。 ダンナが転けて骨折して不自由していることもあってまず一週間試してみたら何と‼︎家に早く帰

          働き方改革

          RZ250R

          「いらっしゃいませ」 ヘルメットを抱えたお客さんが来店した。 そして窓からふと見た駐車場に衝撃が走った。 RZ250Rのブルー。 私が最後に乗っていたバイク。YAMAHAの2ストローク。 子育てが始まり手放したのは20年前。それ以来初めてお目にかかった RZ250Rだ。 走り屋でもないのに2スト乗って 意味もなく海沿いを走ったり 北海道にツーリングに行きキャンプしたりYH泊まったり 横浪スカイラインで派手に転けたり 瀬戸大橋を初めて渡ったとき夕焼けに涙したり あの頃がブワ

          サンドイッチは撃沈です

          ワンオペ営業を始めたとき 鼻息荒くサンドイッチについて語り 熱い気持ちで作って来た。 店のショーケースにいつもあり 食べたい時に気軽に帰るといいなと思っていた。 でも 撃沈。 土曜日はたくさん作って1個も売れなくて 流石に心が折れてしまった。こんなに美味しいのに。 こんなに心がこもっているのに。 ワンオペスタートした頃はメニューも少なく オーダーが集中したら手が回らないので作っておいたら、ということもあった。 今思えばその頃そのサンドイッチを選んで店内で食べてくれた方は

          サンドイッチは撃沈です

          もしも

          たらればの話しは好きじゃないけど もし父が生きていたらなと思う。 土曜日営業が終わってテーブルを拭いて回っていた時、左のスピーカーから音が出てないのに気がついた。 背筋が凍りつく瞬間だ。 メインアンプの針が振れてないことからここまでの間の問題だ。後ろに回ってケーブルのチェックあれこれ再確認。メカに弱い私は神頼みだ。 30分後フワッと音が出た時の嬉しさは例えようがない。そして女性ボーカルの今ここで歌っているような声。スッと息を吸い込む音。いつにも増して重厚感。 やはりこれは

          もしも

          充電器

          スマホで言うなら充電器。 今朝ちょっと早めに目が覚めて 今日は早く店に行ってマフィンをたくさん焼こうかな、と思っていたらねこたちがやって来た。 右の脇にこきん。 左の脇にきん。 すっぽり入り込んで顎や前足を乗せ ステレオのように左右からゴロゴログルグル。 すっかり起きれなくなってしまった。 でもこれが私の充電器よ。 今日のパワーをフル充電するまでに30分かかってしまった。でも大事な時間。 あなたの充電器は何ですか?

          充電器

          お見舞いの絵本

          「それしかないわけないでしょう」というタイトルの絵本を貰ったのは、去年怪我手術入院となって数日後やっと歩行器にもたれて歩き始めた頃。 車で4時間離れた高松から見舞いに来てくれたあの恩人。心配しつつ驚きつつにこにこしながらこの絵本を手渡してくれた。 今までやってきたことがガラガラと崩れどうしようもない気持ちの私に 「ピッタリの絵本があったよ」と渡してくれた。 みらいはたくさんあるんだから! あたらしいものを じぶんでみつけちゃえばいいのよ! この言葉に救われた。 同じ形態

          お見舞いの絵本

          覚悟

          毎年うちに帰ってくるツバメたち。 例年なら元あった巣に継ぎ足し継ぎ足しの豪邸に巣作りするのに今年の子は違った。 場所を吟味した結果配管上の壁にチャレンジするも、土がくっつかず一生懸命運んだ藁や泥が毎日地面に散乱していた。 もし鳥語が話せるなら「そこは無理やで」って教えてあげたいと思いつつ毎日見守っていたら1週間後やっと諦めたのか落ちたのを見なくなった。 そして姿も見かけなくなり今年は寂しいなと思っていた2週間後 壁ではなく今度は配管の上に巣作りを始めた。 脅威のスピードで。

          名乗る

          「ええい。名を名乗れぇー」は昔の時代劇。 名前は自ら名乗りましょう。 「いらっしゃいませ」と言った途端ツカツカッとやって来て「田中です(仮)」と名乗ってくれた女性がいた。 スラリと姿勢良く聡明な感じの女性。 私の頭の中の錆びついたコンピューターフル回転でスラリとした田中さんを探す。田中さん田中さん田中さん‼︎あっ‼︎息子の高3の時の担任の田中先生だっ。 「こんにちは。お久しぶりです。ちょうど史隆帰って来ちょって.. 」と話が弾む。 この時思い出せたのは奇跡で、ご主人も教師

          名乗る

          喫茶店で待ち合わせ②

          待ち合わせの話しを書いていたら 昔目撃した激アツの待ち合わせを思い出した。 あれは私がまだ20代の頃だったかな。 昔は喫茶店でデート、が定番だった。 その日、白いブラウスを着た綺麗な女性が先に来て待っていた。 「ドスンッ」と大きな音と衝撃。 そしてバタバタと焦りに焦った男の子が入って来て女性の向かいに座り 遅れたことを詫び嬉しくてたまらない様子でお話しをしている。 20メートルほど離れた斜め向かいのお米屋さんがやって来て 「さっきの男の子車を壁にぶつけてうちの前に停めちょ

          喫茶店で待ち合わせ②

          喫茶店で待ち合わせ

          昔は 喫茶店で待ち合わせするのは当たり前だった。 「あの店で3時ね」とか。 世の中が世知辛くなったのか喫茶店も主張を始めたのかいつのまにか「待ち合わせ」は有り難くないものになってしまった。 コロナの頃から店の利用時間を制限する所が増えたし「人数が揃ってから入店して下さい」と言う店も増えてきたように思う。 当たり前と言えば当たり前で 先に来て20分も30分も待たれては店側としては困る。座れず帰るお客さんもいるしすみっこの席しか空いてなかったりもする。 先日も待ち合わせです。

          喫茶店で待ち合わせ

          ふりをする

          肝っ玉かあさんで明るく社交的な母が言っていた。 「私は元々お人好しじゃないけど お人好しのふりしよったら いつの間にかお人好しになってしもうたがよ」 え!そんなことある⁉︎ でも私も もともと接客苦手でコミュ障だけど少しづつ慣れてきて接客が得意のように見える今に至る。本当は根暗だ。 演じている自分になり切ってしまうのかも。 ずっと昔 「店はあなたの舞台。好きに演じられる。」 というような話を聞いたのを思い出す。 ちょっと前まで私は友人を捕まえては 「この仕事私には向いて

          ふりをする