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走る息子と撮る父

 昨日は子供たち(長男は6年生。次男は1年生)の運動会でした。本当は先週の土曜日でしたが台風のため順延。運動会同様、天気の影響で延期になっていた父(プロのカメラマン)の撮影が朝にあったのですが、バチッと決めて、ダッシュで帰宅。運動会にはなんとか間に合いました。

 例年の運動会と違うのは各学年ごとに行う形なのでこぢんまりとしたミニ運動会になったということ。1年生の次男が楽しそうにお友達と競技しているのをほっこりした気持ちで見て、最後は6年生の長男のミニ運動会です。

 我が家の長男・虎之助は6年生。つまりこれが小学生最後の運動会。5年生までの徒競走は最終組(足が速い子順)で全て1位を取ってきました。昨晩、彼に「明日も1位取れたらいいね」って軽々しく言ったら「守る側のほうが大変なんだよ」と言われました(笑)。なぜか次男(たっちゃん)にも「お父さんはお兄ちゃんに軽率なことを言うんじゃないよ」的なことを言われました(笑)。

 6年生が運動場にあらわれるとさっきまでの小さくて可愛らしい1年生と違ってみんな大きいです。そして膝下が長い。スタイルが良すぎてもはや運動着が似合っていません。ひさびさに見る虎の友達たちはみんな大きくなっていました。人間の身体の成長はすごい(当たり前だけどやっぱりすごい)。

 父が運動会に間に合ったのを確認した虎の表情は緊張と不安でいっぱいでした。そんな虎を父は気にせずにシャッターを切ります。

 最終組の虎はスタート地点の一番後ろの列にいるので後に回って再び撮ります。集中していく虎の気持ちがカメラを通してビシビシ伝わってくる。カメラを通して彼の気持ちがどんどん僕の心の中に伝わってくる。僕は心の中でそういう経験をしている虎を「いいぞいいぞ!」と応援していました。

 最終組の番が来ました。他の子が3回フライングしましたが、虎は集中力を切らさずにコーナーを駆け上がってきました。必死の形相です。めちゃくちゃ集中しているのがファインダー越しに伝わってきます。最後の直線に入る頃には1位。彼の走りは後半に伸びます。最後のギアを入れるのがわかりました。隣のコースの男の子が必死に追い付こうとしましたが、追い付けないと悟ったのも表情で伝わってきます。

 そして、勝利を確信した表情に変わった頃にはゴールを駆け抜けていました。「やったなー!虎!」。

 今年は写真を撮らずに虎の走る姿を目に焼けつけようかなと妻と話していたのですが、やっぱり撮ることに決めました。虎にとっては走っている時が一番集中出来るように、お父さんも写真を撮っている時が一番集中出来るからです。だからこそ写真を撮ることで虎之助と繋がれた気がしました。そして、カメラから顔を上げたら自然と涙が出てきました。

 父を見つけた虎はとても嬉しそうな表情で左腕を突き上げました。カメラを構えたらもう一度やってくれました。さすが我が息子です。わかっています。

 このイベントで子育てのひとつのステージを終えた気がしました。今日の彼にとってはおそらく父の存在は大きかったと思います。ちょっと前に虎と二人きりの時に「お父さん、絶対に徒競走を見に来てほしい。虎の小学校最後の運動会だからね」とめずらしくお願いをしてきました。でもこれからは次のステージが彼を待っているのかもなとぼんやり思いました。

 そして彼が今日、1位でもカーブで転んで最下位になったとしても家族は頑張ったねってお祝いをするし、それが家族の醍醐味だと思うのです。自分のことじゃ泣かないけど、こんな簡単に息子の運動会で泣く自分も案外嫌いではないです。



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