見出し画像

『求人のAmazon』へ進化する新プラットフォーム発表 にどう対応するか

 日経オンライン2024/04/15の記事に『インディード「求人のAmazon」に 求職者と企業を集結』が掲載されていました。求人のAmazonとは、求人情報サービスにおいて、米アマゾン・ドット・コムが展開するEコマースプラットフォームのような、ワンストップの求人マーケットプレイスを構築する動きを指しています。

 リクルートHD傘下の米Indeedは、求人業界に新たな風を吹き込むべく、従来の求人検索エンジンから、求職者と企業が集う包括的なマーケットプレイスへと進化を遂げようとしています。この変革は、Indeedが直面する厳しい事業環境、特に米国における採用過熱の終焉や競合の台頭といった課題への対応策として打ち出されたものです。

 Indeedの戦略の中核を担うのが、AIを活用した求人配信サービス「Indeed PLUS」です。このサービスは、企業が求人広告を掲載する際に、AIが最適な求人サイトを自動で選定するという画期的なものです。例えば、ある企業がエンジニアの求人広告を出したい場合、Indeed PLUSは、その企業のニーズやターゲット層に合った求人サイトを自動的に選び出し、掲載を代行します。これにより、企業は手間をかけずに効率的に求人広告を掲載できるようになります。

 さらに、Indeed PLUSは、企業が利用する採用管理システムとの連携も強化しています。これにより、求人広告の掲載から応募者の管理、面接日程の調整まで、採用プロセス全体をIndeedのプラットフォーム上で一括管理できるようになります。このシームレスな連携は、企業の採用活動の効率化に大きく貢献すると期待されています。

 Indeedのマーケットプレイス化戦略は、Indeed PLUSだけにとどまりません。Indeedは、求人掲載から採用までをIndeed内で完結させることを目指しており、いわば「求人版Amazon」のようなプラットフォームを構築しようとしています。具体的には、Indeed上で応募が完了できる「Indeed Apply」の対象求人を増やすほか、クリック課金に加えて、応募開始課金という新たな課金モデルも導入しています。

 これらの施策は、Indeedの収益構造を多角化し、安定的な収益源を確保することを目的としています。従来のIndeedは、主に求人広告の掲載料によって収益を上げていましたが、マーケットプレイス化を進めることで、求人掲載数だけでなく、採用成功時にも収益を得られるようになります。これは、人材紹介会社が採用成功時に手数料を受け取るビジネスモデルに類似しており、Indeedは将来的に、人材紹介会社と同等、あるいはそれ以上の収益を得られる可能性を示唆しています。

 しかし、Indeedの道のりは決して平坦ではありません。LinkedInなど競合企業も同様のプラットフォームを目指しており、競争は激化しています。また、巨大IT企業が人材マッチング市場に参入する可能性もあり、Indeedはこれらの競合に打ち勝つための戦略を早急に構築する必要があります。

 Indeedの挑戦は、単なる企業の戦略転換にとどまらず、求人業界全体の進化を促す可能性を秘めています。Indeedが目指すマーケットプレイスは、求職者と企業にとってより効率的で透明性の高い採用プロセスを実現するだけでなく、人材マッチング市場全体の活性化にもつながると期待されています。今後のIndeedの動向は、求人業界の未来を占う上で重要な指標となるでしょう。

求人企業としてどう対応していくか

 Indeedのマーケットプレイス化は、求人企業にとって新たな局面をもたらしています。以下3つの観点から、今後の採用活動のあり方を検討することが必要でしょう。

1. Indeed PLUSの活用:AIによる最適化で効率的な採用活動を
 Indeed PLUSは、AIが求人広告の掲載先を自動で選定するサービスです。従来のように、複数の求人サイトを比較検討し、それぞれに広告を掲載する手間が省けます。例えば、ある企業が営業職の求人を出したい場合、Indeed PLUSは、その企業の求めるスキルや経験、勤務地などを考慮し、最適な求人サイトを選んで広告を掲載します。これにより、担当者は他の業務に時間を割くことができ、採用活動の効率化に繋がります。

 さらに、Indeed PLUSはクリック課金制を採用しているため、費用対効果を明確に把握できます。例えば、10万円の予算で広告を掲載した場合、どの求人サイトでどれだけのクリックがあったのか、どの程度の応募があったのかを詳細に分析できます。これにより、次回の広告掲載戦略を改善し、より効果的な採用活動につなげることが可能です。

2. Indeed Applyの活用:応募から採用までをシームレスに
 Indeed Applyは、Indeed上で応募が完結する機能です。従来のように、応募者が外部サイトに遷移する必要がないため、応募率の向上が期待できます。例えば、ある企業がIndeed Applyを導入した結果、応募率が20%向上したという事例もあります。

 また、Indeed Applyは、応募者の情報を自動的に収集し、企業の採用管理システムと連携させることができます。これにより、応募者の管理や面接日程の調整など、採用プロセス全体をIndeed上で効率的に進めることができます。例えば、採用担当者は、Indeed上で応募者のレジュメを確認し、面接日程を調整し、合否通知を送ることができます。

3. 従来の求人広告戦略の見直し:Indeed中心の戦略への転換
 Indeedのマーケットプレイス化が進めば、Indeed内で完結する採用プロセスが主流になる可能性があります。例えば、Indeed上で求人情報を検索し、Indeed Applyで応募し、Indeed上で面接を受けるという流れが一般的になるかもしれません。

 そうなると、Indeed以外の求人サイトの重要性は低下し、従来の求人広告戦略の見直しが必要になります。例えば、これまで複数の求人サイトに広告を掲載していた企業は、Indeedに注力する戦略に転換する必要があるかもしれません。また、Indeedとの連携を強化し、Indeed上でより魅力的な求人情報を掲載することも重要になるでしょう。

企業の状況に応じた最適な選択を
 これらの選択肢は、企業の規模や採用目標、予算などによって異なります。例えば、中小企業や採用予算が少ない企業は、Indeed PLUSのような費用対効果の高いサービスから始めるのが良いでしょう。一方、採用活動を効率化したい企業は、Indeed Applyのような応募から採用までを効率化する機能を活用するのも検討の一つになるでしょう。

まとめ
 求人のアマゾン化が進む中で、求人企業は、自社の独自性や魅力を、より一層明確に打ち出していく必要があります。単に職務内容だけでなく、企業文化や価値観、キャリア形成の可能性など、求職者が重視するポイントを的確に訴求することが求められます。また、採用プロセスの利便性や透明性を高めることで、求職者との信頼関係を構築することも重要です。

 加えて、求人企業は、求職者一人一人のニーズや特性を理解し、きめ細やかなアプローチを行うことも求められます。画一的な求人情報の提供ではなく、求職者のキャリア志向や、ライフステージに合わせた情報提供が必要となるでしょう。また、入社後の育成やキャリア支援についても、求職者の関心は高まっています。採用だけでなく、入社後の成長機会の提供についても、積極的に訴求していくことが求められます。

 求人のアマゾン化は、求人企業にとって、自社の魅力を再定義し、求職者に的確に訴求する機会でもあります。他社との差別化を図りつつ、求職者との良好な関係を構築することが、優秀な人材の確保につながるでしょう。
テクノロジーの進化を味方につけながら、自社の独自性を追求していくことが、求人企業に求められる姿勢だといえるでしょう。

こちらは、インディードが「求人のAmazon」として進化する姿を描いたイラストです。企業が求人広告を投稿し、求職者が効率的に応募する様子が示されています。AIによる最適な求人マッチングやシームレスな応募プロセス、採用管理の一元化が視覚化され、効率的かつ革新的なプラットフォームの雰囲気が漂っています。この変革は、求人業界に新しい風を吹き込むものと期待されています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?