へいた|ショートショート

小説(ショートショート)を書いています。第二期「月々の星々」年間大賞。2023年よりオ…

へいた|ショートショート

小説(ショートショート)を書いています。第二期「月々の星々」年間大賞。2023年よりオンライン文芸コミニティ「hoshiboshi」の運営スタッフに参加。一杯の珈琲のようなお話が目標。

マガジン

  • ただの日記

    キラキラでもハラハラでもない、ねこの中の人のただの日記。

  • 朗読付きショートショート集 SAND BOX 1099

    水上洋甫さんの朗読による画像付きショートショート集です。ショートショートのお砂場。こんなんできるんだなあ、というのが作れたら、いいのに、なあ。

  • エッセイ集 へいたのはなし

    エッセイ集です。ここに書いていることだけは本当の話です。おそらく、多分、だいたいは。

  • ショートショートnote参加集 WEEKS

    たらはかにさんの企画「毎週ショートショートnote」への参加作を集めています。お題に従った410文字。週替わりの一杯どどうぞ。

  • ショートショート集 ARRANGED

    パスティーシュ集です。日本古典と近現代文学が主です。ミルクコーヒーにロシアンコーヒー、アイリッシュコーヒーもいいですね。アレンジ作品がお気に召したらどうか原作をご覧ください。ベースが良いからこそのアレンジです。(台無しにしないように気をつけますね!)

最近の記事

  • 固定された記事

ショートショート(と、朗読) ゾウ塚 【SAND BOX 1099】

ーおそらくは下にゾウが埋まっている。ー  ゾウ塚とはゾウの塚である。おそらくは下に象が埋まっている。  言い伝えによると地震などの災害のときゾウ塚だけには被害が及ばないとのことである。『何かあったらゾウ塚に逃げろ』とよく祖母が言っていた。  以前、東京から来たえらい先生がゾウ塚の土を掘り返したことがあった。古墳だとかなんだとか。要するに昔のえらい豪族の墓だろうと言う話であった。日本の、しかも田舎の辺境地にゾウなんか埋まっているはずがないというのだ。   一週間ほど、泥まみ

    • ただの日記 #38 (2024.06.09〜2024.06.15)

      記録よりも記憶に残るねこの中の人のただの日記 ←last week 2024年06月09日(日) からくり人形の博物館を見に行く。いくつかの写真を撮る。 昔、地元の公民館に山車からくりの展示品があり、紐で引っ張って動かせたのだけれど、機構の説明用に服を脱がされたからくり人形がひたすら怖くて嫌だった。木の箱に白塗りの生首がついているように見えるのだ。 動かせるからくり人形の近くにはガラスの張りの展示スペースがあって、以前祭りで使われていた古いからくり人形が置いてあり、染みや

      • 【お知らせ】6月16日(日)文学フリマ岩手9に出ます!「珈琲まねきねこ」ブース番号C-27

         金曜日ですね。一週間お疲れ様です。  この一週間びくびくしておりましたが、無事に週末を迎えましたので宣言します。  6月16日(日)文学フリマ岩手に出ます!  「珈琲まねきねこ」ブース番号C-27です!  有給休暇、我にあり!(絶叫)  休みを確保するのに必死で、帰宅後瀕死のあまり、この一週間記事がほぼ書けずじまい。大変無念であります。  持っていく新刊をご用意しております。(作成記事も書けなかったよう…)  昨年作った本を少しと、雑誌「星々」の新刊も持っていく予定

        • ショートショート 友情の総重量

           荻野さんは重い女である。毎日日記を書いている。A4ノートに2枚ずつ。報連相を欠かさず行う。全部長文のメールで。寝る前に本を読む。哲学書とか。 「オギちゃん、面白いよね」  昼休み菓子パンを齧りながら牧田さんが言った。数少ない友人だ。 「面白いって何が」  荻野さんはお手製の糠漬けを食べている。 「ヘビー。色んなことが」  荻野さんは気に病んだ。当然だ。A4ノートに書き綴り、夜遅くまで眠れない。 「重いな。お前の心臓」  横顔の神様が荻野さんの心臓を天秤で測る。夢だ。寝

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        ショートショート(と、朗読) ゾウ塚 【SAND BOX 1099】

        マガジン

        • ただの日記
          21本
        • 朗読付きショートショート集 SAND BOX 1099
          35本
        • エッセイ集 へいたのはなし
          108本
        • ショートショートnote参加集 WEEKS
          210本
        • ショートショート集 ARRANGED
          16本
        • 【クリスマスまでの25のおはなし】赤い炎とカタリのこびと
          25本

        記事

          ただの日記 #37 (2024.06.02〜2024.06.08)

          ベランダに木蓮を育てようとするねこの中の人のただの日記 ←last week 2024年06月02日(日) 午後に試験があるついでに、午前中に名古屋城に行く。写真を撮り、資料を集め、文学フリマ岩手に行く時のお土産を買う。日焼け対策に帽子も持って行ったため、試験会場ですごい荷物になる。何しに来たんだ。 ひととおり終わらせ、電車に乗り、試験会場に帽子を忘れて来たことに気が付く。取りに戻る元気はもうない。 2024年06月03日(月) 本棚が届く。嬉しくて、しばらく眺める。

          ただの日記 #37 (2024.06.02〜2024.06.08)

          ショートショート(と、朗読) 山芋 【SAND BOX 1099】

          ー「ガンコ。ガンコ」ー  カッコウとホトトギスがいた。二人は姉と妹だった。ある日、カッコウが仕事帰りに見切り品の山芋を買ってきて、切って焼いて醤油を垂らしてステーキにした。遅れて帰ってきたホトトギスがそれを羨ましがって、何切かせがんだ。カッコウはよく焼けた、柔らかいところを分けてやった。  ホトトギスはもらった山芋をペロリと平らげるともっとくれとカッコウにせがんだ。カッコウは断った。残りは生焼けだったからだ。冷凍庫に冷凍ポテトがあるとホトトギスに言ったが、ホトトギスは納得し

          ショートショート(と、朗読) 山芋 【SAND BOX 1099】

          エッセイ 贅沢【ねこの悪だくみ2024年6月】

           毎月、月初めに計画などを書いています。  達成できたりできなかったりします。悪しからず。  本棚を買いました。持っていなかったのか、という感じですが、持っていなかったというのが正直なところです。  めちゃくちゃ狭い家に住んでいるわけではないんですが、ほとんど家具のない空間に住んでおりまして、収納は作り付けの棚などで済ませていました。はみ出る分は持たない。服は一週間分、食器は一対(含来客用)、布団は二組(含来客用)予備もストックもなしです。「管理ができない」という理由もあり

          エッセイ 贅沢【ねこの悪だくみ2024年6月】

          ショートショート 三日坊主のクレーター

          「ご覧ください」  ガイドが車の外を示した。 「あれが、三日坊主のクレーターでございます」  私は姿勢を変えて窓の外を見た。灰色の地面に円というには余りにも崩れた形の穴があり、底の方にシャベルと一緒に人が寝ていた。 「あれが三日坊主」  妻が言って、写真を撮った。無理もない。私も言葉でしか聞いたことがなかった。 「『意思に反して物事が続けられないこと』でしたっけ?」  妻の質問に頷いた。意思力を左右する遺伝子が見つかってから言葉すらも死後になりつつある。皆、子を産む時には社

          ショートショート 三日坊主のクレーター

          ショートショート てるてる坊主のラブレター

           雨男がいました。彼の周りには雨が降るのです。  雨男の家族もまた雨男。一家は引っ越しをしてばかり。一度、雨男が駄々をこねて同じ街に止まったことがあります。5日間雨が降り続き、6日めの朝に川から水が溢れました。家族は大急ぎで街を出ました。ごめんなさいごめんなさいと謝りながら。 「ヨーゼフ?」  ある日雨男を呼ぶ人がいました。ひとりの女性でした。雨男にはすぐにわかりました。昔、洪水の街にいた少女です。彼女といたくて、雨男は駄々をこねたのでした。 「生きてたのね」  女性が

          ショートショート てるてる坊主のラブレター

          ただの日記 #36 (2024.05.26〜2024.06.01)

          一夜漬け上等のねこの中の人のただの日記 ←last week 2024年05月26日(日)  歩いて片道40分ほどのところに程よいカフェを見つける。ずっと通っているコーヒーやさんは今イートインをやっていなため、今度はここにこようかなと思う。休みの日は多めに歩きたい(仕事中ずっと座っているので腰の調子が悪くなるのです。歩くと予防ができます。)ので、距離的にもちょうどいい。  朝のセットでコーヒーとトースト、それにサラダがたっぷりつく。  帰りにシャトレーゼに寄ってチョコバッ

          ただの日記 #36 (2024.05.26〜2024.06.01)

          ショートショート(と、朗読)  きのこは狩るべからず【SAND BOX 1099】

          ー「きのこは狩るべからず」ー 父の会社の同僚に、岐阜に親戚を持っている人がいて、秋にきのこ狩りに行ったことがある。  岐阜の山は愛知の山よりはるかに高く、緑も濃かった。山というのはこういうものか、とまだ幼い私は思い、いまだにそう思っている。  ぐるぐると螺旋を描いて父の車は急な坂道を登り、細い脇道の前で止まった。例の親戚の方の山だという。奥に続く道は木が生い茂って薄暗く、見るからにじめじめしている。半ば草に埋もれた看板にペンキでこう書いてあった。 「きのこは狩るべから

          ショートショート(と、朗読)  きのこは狩るべからず【SAND BOX 1099】

          エッセイ 余白のある暮らし(ネコ戦記2024年5月)

           毎月、月末あたりにその月の公募活動などをあけすけに書いています。なんてあけすけな! 恥を知れ! 「忙しそうですね」とたまに言われることがあるんですが、帰宅後、特に誰に頼まれているわけでもないのに、書いても書かなくてもいいブログをぽこぽこ打っておりますと「自分、ひょっとして世界一暇なのでは…」と思ったりします。  というわけで2024年5月のネコ戦記です。 1.公募活動について  公募活動が停滞気味です。時間が上手に取れません。世界一暇とか言っちゃってるくせに、どっちだ

          エッセイ 余白のある暮らし(ネコ戦記2024年5月)

          ショートショート 奇岩シューズ

           だいたらぼっちはつぶやいた。 「地味だな」  東の方には富士山が見えた。だいたらぼっちが土を固めて作った山だ。西の方には琵琶湖が見えた。山を作るのに掘り返してできた湖だ。 「地味で結構」  にこにこしながらお天道さんが言った。 「両方とも、日の本一の光景だ」 「違う、違う」  だいたらぼっちが地団駄を踏んだ。 「俺が作りたいのはこういうのじゃねえんだ」  頭を掻きむしって富士山のてっぺんに拳を当てた。中から溶岩が溢れ出て、だいたらぼっちの素足に触れた。 「あっちい! 

          ショートショート 奇岩シューズ

          ショートショート 祈願上手

           西尾店長の趣味は神社巡りである。店内どころか他の支店にまで知れ渡っている。 「子供の受験なので」 「父が病気になりまして」 「いい人が見つかりますように!」  ほとんど毎週、どこからか電話がかかってくる。この願いにはどこの神社がいいかみんな店長に聞きにくるのだ。 「神社巡りの仲間内では『祈願上手』なんて呼ばれまして」  今日は応接室で得意先とはなしこんでいる。隣の給湯室にいる筒抜けだ。 「いやあ、本当にお詳しいですなあ」  お客さまも満更ではないらしい。 「しかし、店長

          ショートショート 祈願上手

          ただの日記 #35 (2024.05.19〜2024.05.25)

          ガリガリくんチョコミント味をリッチに食すねこの中の人のただの日記 ←last week 2024年05月19日(日)  文学フリマ東京に(一般客として)行く。初めての方や何度目かの方のブースを名刺とえびせんべいを持って歩く。名刺はとても怖い。「誰?」となるかもしれない、といつも膝が震えて逃げ帰りたくなる。(ちなみに特に名刺を渡さなくても逃げ帰りたくはなる)  帰宅途中でガリガリくんリッチチョコミント味を発見する。以前紹介されたが自宅周辺では見つからなかったものだ。購入して

          ただの日記 #35 (2024.05.19〜2024.05.25)

          ショートショート(と、朗読)  逆光【SAND BOX 1099】

          ー水飛沫。ー  父は写真が趣味だった。  出かける時はいつも大きな荷物を背負って、私や母そっちのけでレンズをのぞいていた。  撮った写真はリビングに飾る。客が皆褒めた。実際、私から見てもよく撮れていた。  小学生の夏に家族で伊豆大島に行った。テレビで見た火山に父が心を打たれたらしい。行きのフェリーにひどく興奮したのを覚えている。産まれて初めての船だった。  海風のあたる甲板は気持ちが良かった。父が遠くの島に向かってカメラを構えていた。 「クジラが出るかもって!」  客室

          ショートショート(と、朗読)  逆光【SAND BOX 1099】