上海老師

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AlphaFold2の非専門家向け活用法 第5回(最終回)「最近の進展と今後の展望」

AlphaFold2により、タンパク質単体、特に単一ドメインのタンパク質については単量体およびホモオリゴマー予測ともにかなり高精度で可能となってきているのが現状と思われます。その一方、第四回記事で述べたように「各種リガンド、イオン、薬剤等との結合認識」「コンフォメーション変化」「(ヘテロ)複合体」の3点については、AlphaFold2がまだまだ苦手としており、さらなる手法の進歩の必要性があると共に、実験構造の重要性が大きい領域でしょう。 最終回の本記事ではそれら3点について

    • AlphaFold2の非専門家向け活用法 第4回後半「AlphaFoldが現状カバーできていない構造情報」(2021年11月4日記事末尾をアップデート)

      前回の第4回記事の「AlphaFold2が現状カバーしていないこと、苦手なこと」に基づき、研究をどう進めていくかということについての後編記事です。 当初予定していた複合体構造予測に加え、「新規フォールド」の予測についても述べたいと思います。また、その関係で「After AlphaFoldの構造生物学研究」についての個人的初見については第五回記事にまわる形でと考えています。 ヘテロ複合体構造予測は当たったり外れたり 私が一か月ほどnote更新を放置している間に世の中は進化し

      • AlphaFold2の非専門家向け活用法 第4回前半「AlphaFoldが現状カバーできていない構造情報」

        AlphaFold2による予測構造の良し悪しの判断についての第1回および第1.5回記事、予測構造に基づき実践的にメカニズムをいろいろ考察してみた第2回記事、タンパク質発現や構造解析へのAlphaFold2の活用についての第3回記事、などなどをこれまで述べてきました これまでの記事では主に「AlphaFold2の有用性」に基づき、それを研究にどう活かすかという話でした。それらとは逆に、今回の第4回記事(おそらく最終回)では「AlphaFold2が現状カバーしていないこと、苦手

        • AlphaFold2の非専門家向け活用法 第3回「予測構造を活用したタンパク質発現や構造解析」

          AlphaFold2による予測構造の良し悪しの判断についての第1回、第1.5回記事、予測構造に基づき実践的にメカニズムをいろいろ考察してみた第2回記事に続き、第3回記事ではタンパク質発現や構造解析へのAlphaFold2の活用についていくつか述べてみたいと思います。 「Cryo-EM Revolution」との違いAlphaFold2は生命科学の多くの分野に影響を与えると思われますが、やはり直接的に大きな影響を受けるのは構造生物学でしょう。ただ、私自身が研究をする上で、より

        AlphaFold2の非専門家向け活用法 第5回(最終回)「最近の進展と今後の展望」

        • AlphaFold2の非専門家向け活用法 第4回後半「AlphaFoldが現状カバーできていない構造情報」(2021年11月4日記事末尾をアップデート)

        • AlphaFold2の非専門家向け活用法 第4回前半「AlphaFoldが現状カバーできていない構造情報」

        • AlphaFold2の非専門家向け活用法 第3回「予測構造を活用したタンパク質発現や構造解析」

        マガジン

        • AlphaFold2の非専門家向け活用法(全5回)
          7本

        記事

          AlphaFold2の非専門家向け活用法 第2回「予測構造を元にいろいろ考察してみる(実践編)」

          第1回、第1.5回記事でAlphaFold2による予測構造の良し悪しについて説明しましたので、今回は「予測構造をみて自分の研究に役立てたいけど、どうしたらいいの?」という話を構造生物学を専門としない生命科学者向けに述べてみたいと思います。 具体例があるとわかりやすいですし、ガチ感が出るので、この記事では「Magnesium transporter NIPA1」(ヒト由来)の予測構造を元に考察を行います(私の専門がマグネシウム輸送体なので)。 NIPA1について簡単に説明し

          AlphaFold2の非専門家向け活用法 第2回「予測構造を元にいろいろ考察してみる(実践編)」

          AlphaFold2の非専門家向け活用法 第1.5回「予測の良し悪しの判断(補足と情報更新)」

          前回の第1回記事の公開後、友人からいくつか追記点、修正点についてアドバイスをいくつか受けまして、その点の補足と、AlphaFold2の使い方のうち「3. EMBL版のAlphaFoldデータベースを使う(一番簡単)」に加えて、「2. Google Colab版のAlphaFold2を使う(配列をコピペ入力するだけ)」についての説明を第1.5回記事として追記します(Confidence score (pLDDT)表示のためのPyMoLプラグインの項は完全に勘違いしていたので

          AlphaFold2の非専門家向け活用法 第1.5回「予測の良し悪しの判断(補足と情報更新)」

          タンパク質立体構造予測プログラムAlphaFold2の非専門家向け活用法 第1回「予測の良し悪しの判断」

          構造生物学界隈のみならず、生命科学研究者やAI研究者の界隈すら超え、一般のニュースにもなっているタンパク質立体構造予測プログラム「AlphaFold2」について、構造生物学を専門としない生命科学研究者を主な対象として、note記事を3回くらいに分けて書いてみたいと思います。 生体高分子の立体構造データベース「Protein Data Bank」に登録されている実験構造は今や18万を超えています(私が15年くらい前にこの分野の研究を始めた際は2万弱でした)。にも関わらず近年急

          タンパク質立体構造予測プログラムAlphaFold2の非専門家向け活用法 第1回「予測の良し悪しの判断」

          中国の構造生物学の躍進と基盤施設の現状

           「中国の構造生物学の躍進と基盤施設の現状」というタイトルで中国の構造生物学の歴史的進展や関連施設(放射光施設、電顕施設)の現状を紹介する記事を公開します。同名のタイトルにて日本のとある学会でもともとは今月にオンライン講演予定だったのですが、「服部が千人計画を通して中国への違法な技術流出や軍事研究に関わっている」という思い込みに基づく脅迫により、その講演は中止となりました。  そもそも私の研究分野では、研究成果はすべて論文として世界に向けて公開されます。また、私の研究分野で

          中国の構造生物学の躍進と基盤施設の現状

          産経新聞論説副委員長の佐々木類氏による私に関する記載を含む記事についての産経新聞社からの対応結果のご報告

          産経新聞論説副委員長の佐々木類氏による上記の件ですが、これまで1か月ほど、産経新聞とやりとりを続けてまいりましたが、質問に対する回答を含め一切の対応を打ち切る旨のご連絡を頂きました。 まず私から産経新聞への問い合わせの前提として、佐々木類氏の当該記事の問題点を列挙します(2020年8月6日更新分1)。 1. 佐々木類氏からの取材依頼メールに対し、私は断りの返信をし、佐々木類氏もその旨了解の返信をされたにも関わらず、佐々木氏は私について「接触できたので紹介したい」と誤解をを

          産経新聞論説副委員長の佐々木類氏による私に関する記載を含む記事についての産経新聞社からの対応結果のご報告

          中国における大学院生への経済支援,共通機器整備,そして COVID-19研究の取り組みについて

          この記事は、岩波書店「科学」2020年6月号に掲載された同名記事を編集部の許可の元、転載したものです。「科学」編集部のご厚意に感謝いたします。  中国上海の復旦大学生命科学学院に所属する服部素之と申します。生体分子の詳細な「かたち」にもとづきその仕組みを理解するという構造生物学の研究を専門としています。2015年に東京から上海に異動し,研究室を立ち上げました。本稿では,これまでの私の実体験を通して中国の研究現場の紹介,特に日本でも参考になると思われる「大学院生への経済支援」

          中国における大学院生への経済支援,共通機器整備,そして COVID-19研究の取り組みについて