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哀れなるものたち 鑑賞記録 シンガーソングライター 波多野菜央

見た方が早い!その代表になりそうな本作。

言葉にするにはあまりにも芸術的で哲学的で衝撃的。だからこそ、いろんな解釈や考察ができる作品だと思う。

どこを切り取っても美しいセットと衣装。目が離せない仕掛けや映像の変化。
時代や世間に媚びない時間に集中し、ホットコーヒーは一口も飲まないまま冷め切った。

きっと映画マニアには語り甲斐のある監督や俳優陣なんだろう。
それと同時に、私のようになんともいえないあのビジュアルに公開を心待ちにしていた人も少なくないと思う。
鑑賞前の正体不明のワクワクは、期待以上の場所へ…いや、予想外の場所へと私を連れて行ってくれた。

なんといっても劇伴がとても印象的で
個人的には作品で1番好きな要素となった。
序盤から、主人公ベラのあどけなさや純粋さを表現する音色と音階、テンポ、リズムに耳を奪われる。
物語が進むにつれて成長するベラの思考、彼女を取り巻く環境の変化、知らない街の初めての景色、強烈な快感、困惑、悲しみ、怒り。
登場人物の内面から街の匂いまで、ここまで気持ちよく表せるのか…と唸ってしまう音楽が続く。
終盤へ向かいながら、母体でも胎児でもない、1人の女性として確固たる信念や独自の哲学を持つベラに相応しい、華やかさと憂いを含む曲となっていくグラデーションたるや。脱帽だ。

音楽を手がけたのは、イギリス出身のジャースキン・フェンドリックス(1995年生まれ、私の一個上…!?!)
撮影の半年前に渡された脚本やセットデザイン、衣装のイメージなどからインスピレーションを受け、作業に取り組んだそう。
その時受けた「ほかの映画や映画音楽を一切参考にしないように」という自由度の高いオーダーは、創り手としてかなりのハードルではあるが、相当な信頼を寄せられていたことが分かる。

監督の連絡に怖気付きつつも、渡された資料によるインスピレーションと彼のDNA全てを注ぎ込んだという今回の映画音楽。なんと、撮影前にほとんどを作り終え、その音楽を撮影現場で流していたらしい。追加で作った曲もないそうだ。なるほど、あの映像や演技との世界観の交わりに合点のいく背景だ。

作品をひと味違う角度と次元から作り上げた音楽家、ジャースキン・フェンドリックス。彼のこれからの作品が楽しみでたまらない!

家をゼロから作るほどの大掛かりかつ、細やかなセットと美術。そして目を奪われるカラフルで繊細な衣装。こちらはモノクロ映像とカラー映像に合わせ、直前まで映える色を調整をしていたらしい。
映画の世界観を広げる部分に注目するだけでこれだけ興奮しているが、勿論内容や俳優陣の演技も凄まじい。
中でもやはり主人公ベラ役エマ・ストーンの覚悟には痺れるほどのリスペクトを感じた。
目も眩む美しさ、強さ、しなやかさ
それはエマ・ストーン本人の魅力でもあるし
ベラの生き様でもあった。

制作に『シェイプ オブ ウォーター』のサーチライト・ピクチャーズが関わっていると後々知り、個人的にハマった理由のひとつなのかなと思ったり…!

社会的で空想的な、最高のカオス!

1人で観に行って大正解🤝🏻でした!笑

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