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仕合わせと幸せ 〜「糸」という楽曲〜 映画【糸】レビュー

-波多野菜央が映画【糸】のレビューを書かせていただきました-


エンドロール中も、自分の曲が映画になるという凄さを考えていた。

ストーリーに沿って書き下ろす流れではなく、既存の曲を軸に映画を撮る。
その為には、曲自体の相当な力とメッセージ性が必要とされる。
今回「糸」という名曲が映画化された理由も、そこにあると考えずにはいられなかった。

中島みゆきさんが作る曲の素晴らしさに説明は要らないだろう。
しかし今日は、僭越ながら私なりの考察を書きたいと思う。

まず「糸」の歌詞には難しい言葉は使わず、普段私たちが使う言葉を並べてある。加えて『わたし』と『あなた』の年代を明確にする表現がない。そうすることでより幅広い世代の人の心に響き、老若男女すべての人が「糸」という曲に自分を重ねることができる。
また、シチュエーションも限定されておらず、恋人、家族、友人、仕事など全ての要素を含めた「人生」の曲になっている。ふつう、このように大きなテーマで曲を書くと、ざっくりとして核心がぼやけてしまいがちであるが、「糸」はまるで海のように広く深く私たちを包み込み、聴く度に”仕合わせ”と”幸せ”について考えさせてくれる。

「糸」は普遍的であり、それでいて個人個人に深く刺さる、絶妙なバランスを持った曲である。他にも、優しいメロディーや中島みゆきさんの唯一無二の歌声などの様々な要素があり、この曲は多くの人に愛されてきた。

脚本であり、あらすじであり、台詞でもある。そんな力と可能性を持った歌を、私はかけるだろうか。いや、かきたい。アーティストにおいての目標がまた一つ増えた。


あなたの人生にとっての縦の糸は?“幸せ”とは?そんな問いに向き合うことができる映画です。ぜひ劇場でご鑑賞ください。


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