見出し画像

BLUE GIANT 小倉昭和館での鑑賞記録 シンガーソングライター 波多野菜央

年が明けてすぐ、小倉昭和館へ足を運んだ

2024.1.10 撮影

2022年8月10日
一夜にして全てを燃やし尽くした悲惨なあの火事は、北九州市民、全国の昭和館・ミニシアターファンの胸を痛めた。私もその中の1人だ。

懐かしさを感じるネオンの看板を目印に
緊張しながらチケットを買う
少し大人になった気がするあの瞬間がたまらなく好きだった。
古い扉を抜けた先のタイムスリップしたような空気感でみる作品は、それだけで私にとって特別な一作となった。
トークイベントや音楽ライブも企画されていた昭和館。
私も、シンガーソングライターとしていつか絶対にここで歌いたい!
足を運ぶ度にそう思っていた。

火事以前の小倉昭和館の座席から

火事から1年4ヶ月後。
樋口館長の使命感とも伺える情熱、リリー・フランキーさんをはじめとする業界・関係者の方々による後押し、そしてファンの熱い応援によって、小倉昭和館は奇跡の再建を果たした。

再建後の小倉昭和館の座席から

込み上げるさまざまな想いと共に鑑賞したのは「BLUE GIANT」
世界一のジャズプレイヤーを目指し仙台から上京した主人公・宮本大
東京で出会う凄腕ピアニスト・沢辺雪祈と
ジャズ初心者の高校の同級生・玉田俊二。
同い年3人で結成したジャズバンド「JASS」が奏でる青春物語だ。

自分を、仲間を、音楽を信じる
ほとばしる若さと可能性とエネルギー
幼い青さを、熱い炎の青さに変えようとする3人の姿に

意味わからんほど泣いた。
はちゃめちゃに泣いた。
自分でも引くほど泣いた。
途中で涙拭くのも諦めた。もうしんどかった。

27歳の大人が鼻水ズビズビ、袖ベシャベシャ
映画館出る頃にはすっぴん(よりも酷い顔)になるほど胸を打たれ続けた

とにっかく音楽が凄かった。
私なりに一言で表すなら
【超音楽アニメーション映画】
第47回 日本アカデミー賞での最優秀音楽賞も誰もが納得の受賞だろう。

本から音が聞こえると言われた原作の映画化という高いハードルのなか、音楽を監修したのは日本が世界に誇るジャズピアニスト、上原ひろみさん。
キャラクターの指の動きから心情まで
アニメーションと音楽を完全にリンクさせる相当大変な作業をワクワクに変えてやり遂げたという。

キャラクターを演じたプレイヤーも凄い。
登場人物それぞれの背景を「演じながら」演奏するのはとても難しいことだ。
プレイヤーそれぞれの特徴でを出すのではなく、キャラクターになりきることが重要になる。

独学でサックスを始め、暑い日も雪の中も河原で1人楽器を吹き続ける、主人公・大の真っ直ぐさ。
ピアノ歴も長く技術もあるが、自分の殻を破れない雪祈が感じるもどかしさ。
スティックも持ったことがないが、音楽の楽しさに引き込まれる俊二の初々しさ。

3人の成長や心境の変化、ストーリーの状況を音で表現し演じる所に、スクリーンの奥の奥からもプロフェッショナルをひしひしと感じた。
(ラ・ラ・ランドのシネマコンサートでも1番注目したところ)

鑑賞して何ヶ月経った今も、
事あるごとにサントラを聴いている
音楽を聴くだけでそのシーンがよみがえり、また胸を熱くさせる。
心に3人の青い炎が移ったかのような、そんな余韻の中で生きている。

いい映画には、いい音楽がある
その代表例となる素晴らしい作品だった

小倉昭和館の再出発から感じたのは、
場所、建物が無くなったり変わったとしても
思いや信念は残り繋がっていく、ということ。

火事の事実はもちろん寂しく悲しいが
樋口館長の変わらない口上、集まる昭和館ファンを目の前に
私も残るもの、繋がるものを創ることを
改めて心に誓ったのだった。


シンガーソングライター 波多野菜央

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?