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【803回】春こそ新年

朝6時。
洗濯物を干すために外に出る。朝の光と温度が、一日の始まりの香り。今日も生きている!命の確認をする僕を包み込んでくれる。
鳥が、急にこちらへ飛んできた。ピピピピピ。
鳴いている。
僕の方を向いて、ピピピピピ。
まるで手が届くような位置で、電線の上で、鳴いている。
僕もピピピピピと返したらいいのか?
言葉での返答が思いつかず、笑顔を返す。
鳥は首を傾げて去っていく。


朝はいい。毎日が新たな人生の始まりだ。


そして、春はいい。

吸い寄せられるようにじっと眺めていた桜の花。
ピンクのご褒美は1年間を生き抜いた証だ。

洗濯物を干し終わり改めて耳をすませる。
鳥の声は、歓喜の歌だ。
よく生きたね!と、歌声が迎えてくれる。

わかった。発見した。
この時期が僕にとっての新年なのかもしれない。
人間が作り出した新年ではなく、自然が作り出した新たな始まり。

また1年生きていたくなる。

がんばろう、と土を踏む。