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ファン冥利に尽きる男 ~宇野昌磨に寄せて~

フィギュアスケート男子の個人メダリストが決まり、私としては考えていた予想通りの順位でした。
男子で一番応援しているのはショーマチカこと宇野昌磨選手。
それでも優勝はネイサンだと思っていたし、実際、金メダルを一番取って欲しかった選手。

「ダークホース」と称される選手が金メダル取れない事は、五輪に於いてはままある事件。
(特にフィギュア女子はそれが定石)
フィギュア男子選手でも「信じられない自爆」というのを数多く見て来ている。
ネイサンはこの四年間で不動のトップランナー。然しながら今シーズンは股関節の故障明けからもあって、徐々に本調子を取り戻してはいたけれど、五輪が始まるまではどうなのであろうと気を揉んでいた。

昌磨をイチオシしながらも
「ネイサン平昌五輪悪夢のSP」を目の当たりにしていて、その屈辱を晴らすのは五輪チャンピオン以外には考えられなかった。
今のネイサン・チェンという選手には、それ以外のメダルは何の価値もないメダルではなかろうか。
他の選手がそれを手に出来るのは、
彼が演技を失敗した時だけである。
それくらいの現時点で出せる点数に開きがあったからである。

日本の鍵山優真選手の躍進ぶりを見ていると、
彼がさらってしまうかもしれないと、
フィギュアファンなら一度は胸を過ぎった予想であろう。
しかしそれも、ネイサンが完璧な演技をすれば一網打尽である。
申し訳ないが今の羽生結弦選手が三連覇するには、ネイサンが失敗しない限りはありえない事件であった。
4回転アクセルで叩き出せる得点はさほど高いものではない。

さて、私が昌磨の金メダルを願わなかった訳ではない。
然しながらそれはあまり現実的な話ではなく、
彼が今の高難易度のフリープログラムを完璧に演技して
ネイサンがミスをするならありえるが、そんな光景は見たくはなかった。
昌磨は昌磨で彼の力を出し切って欲しい。そして、それはネイサンにも同じ事であった。
私はネイサンにも力を出し切って勝って欲しかった。ネイサンが最高の自分に満足出来る演技で、彼のスケーターとしての人生を全うして欲しかった。

フィギュアスケートという競技を愛する者ならば、そのひとりひとりが力を発揮し尽して欲しいのだ。短い競技人生に悔いなど残して欲しくない。
イェール大学の優秀な学生でもある彼には、医師という目標も待っている。
ネイサン・チェン選手には次の五輪はないのである。


結果はネイサン金・鍵山くん銀・昌磨銅。フリーの内容は昌磨にとって納得いかない部分はあったろうが、彼のこの四年の労苦が刻まれ報われた結果だと思う。

昌磨のインタビューにはいつも感動するのであるが、今回のメダリスト会見には殊更泣かされた。

「今大会で金メダルを獲るって言うのは、目標にする事自体が自分の成功じゃなくてネイサンの失敗を願う事も一緒だと僕は思っていたので、そういった事は全く考えてなく本当に自分のやってきた事をそのまんまやろう、そして僕の目標はここが最後ではない、もっと先を見据えて成長できる舞台にしたいと考えていました。」


羽生選手について
「僕はゆづくんのようにはなれない。」
といつも言っているように今回も話していたが、今回はこのネイサンの事について話した箇所に最も心打たれ泣かされた。暫く涙が止まらなかった。

ネイサンのフリー演技が終わって点数が出た瞬間、一番喜んでいたのが昌磨であった。ネイサンに両手を拡げてハグを待ったのも彼であった。
「昌磨ったらコーチ以外とこんなに嬉しそうに自然にハグする男だったか?!」と泣いた。
誰よりもネイサンに勝って欲しかったのは昌磨だった。
お母さんは(誰よ!笑)嬉しかった。
今日はもう滂沱の涙ですよ・・・
あなたって子は本当にもう!!!

四年前のネイサンのSPについても、
「失敗」ではなく
「上手くいかなかった。」
という言葉を選ぶあなた。
躍進し続ける鍵山くんを称えるのに、
「追い越される」「抜かれる」ではなく
「置いていかれないように。」
という言い方をするあなた。


つまりね、
昌磨の目標は金メダルなんかじゃない。それは平昌の時もそうだった。
真ん中に立つ事を目標に、
そう口に出した事もあった。
選手としてそういう欲も必要ではないかと周囲も思った筈。(ファンではなく関係者各位様も)
それを経て、昌磨の目標は今また違う所にあるよね。


それは私の大好きな宮原知子こと
さっとんもいつも口にしている事。
彼女はもいつも昨日の自分と今日の自分しか比べてはいない。

「ネイサンのように常に安定した力を身に着けトップで戦える選手になりたい。」
と年下の王者に敬意を表し
「ゆづくんのようにはなれない」
「優真くんに置いて行かれないように」
と先輩・後輩を称えてやまない。


自分の言葉で常に飾らず淡々と語る
その内容が実は物凄くて、、、


宇野昌磨という人は人間として器が大きいと思っている。
そういう彼が私は大好きだ。




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