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お返し

初めてバレンタインデーにチョコレートを渡したのは中学1年の時だった。友人に勧められるままに、本当に好きかどうかもわからないクラスメイトに贈った。結果は空振りだったが、もともと軽いノリだったから大して傷つきもしなかった。私は時々こんなふうに自分でも理解不能な行動に走ることがある。大抵それは考えるのも面倒になって「えぇい、なるようになれ」と投げ出した時なのだけれど、中1の自分の軽率さは別のクラスメイトを傷つけたはずだった。小学校の時の初恋の相手と運よく中学でも同じクラスになりながら、目の前で彼を裏切ってしまったのだから。そんなわけで初めてのバレンタインチョコレートは、私にとって苦い想い出でしかない。

※イメージです

その罰が当たったのだろうか。まるでジンクスのように、その後もチョコレートを渡す相手とは上手くいかなかった。長続きしなかったり、長すぎたり。その都度、自分はひどいことをしたのだから、当然の 報い お返しを受けているのだと思った。もっとも初恋の彼のほうでは、とっくに私のことなんか忘れていただろうけれど。

ちなみに今の連れ合いには、バレンタインチョコレートを渡さなかった。いきなりホワイトデーに、あげてもいないチョコレートのお返しが来て度肝を抜かれたのだが、おかげで永遠に実りそうもない恋のマイナススパイラルから脱却できたのかもしれない。

夫からのホワイトデーのお菓子に添えられていたスプーン

こんな私だけれど、もう数十年もホワイトデーにお返しをくださる方もおられる。亡き父の友人だから既にご高齢にちがいないのだが、毎年、赤いリボンをかけた箱に焼きたてパンが一杯詰まって届く。パンの種類も年々変化して、今年は初めて桜あんぱんが入っていた。その美味しいこと!

申し訳ないほど もったいなくて

商業ベースのバレンタイン&ホワイトデーでは少なからず傷を負った自分だけれど、長年にわたってこんな素敵なお返しを拝受するうちに、若き日の傷はもうすっかり癒えたように思う。感謝に堪えない。


🌸追記🌸
chibi3さまが当記事を素敵なマガジンに追加してくださいました。感謝です💗