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連載更新! 土居豊のエッセイ【関西オーケストラ演奏会事情 〜20世紀末から21世紀初頭まで】 第3回 《「アマチュア音楽の魅力〜芦屋交響楽団」&「文化行政に注文〜びわ湖ホールと大阪センチュリー交響楽団」》 (2回分を同時掲載)

連載更新!
土居豊のエッセイ【関西オーケストラ演奏会事情 〜20世紀末から21世紀初頭まで】


第3回
《「アマチュア音楽の魅力〜芦屋交響楽団」&「文化行政に注文〜びわ湖ホールと大阪センチュリー交響楽団」》
(2回分を同時掲載)


※前の記事
第1回《特集「モーツアルト生誕250年」『モーツアルトのオペラ その制作現場』》(文芸同人誌「関西文学」より転載)
https://note.com/doiyutaka/n/n28a3c5113837

第2回《忘れられた作曲家・大澤壽人 〜モダニストの限界〜》(文芸同人誌「関西文学」より転載)

https://note.com/doiyutaka/n/nc631c538599d


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「アマチュア音楽の魅力〜芦屋交響楽団」


故・芥川也寸志が育成に尽力したアマチュアのオーケストラは、日本の各地にあります。その一つが、芦屋交響楽団です。1967年設立、77年から芥川をトレーナーに迎えて、楽団の基礎を固めました。
このオーケストラは、年間数回の定期演奏会を中心に、充実した演奏活動を行っています。2006年には、ベトナム国立交響楽団との、現地での合同演奏旅行を敢行し、国際親善にも一役買いました。
「アマチュア音楽は音楽の本道である」という芥川の理想は、今も、芦屋の地に受け継がれています。
大正期以来、関西財閥の別荘地として、お屋敷町のイメージが強い芦屋ですが、そういう財界人が、率先して文化芸術を保護、育成したことも、忘れてはなりません。文豪谷崎が住んだ地でもある芦屋には、音楽における芥川の足跡のほか、美術でも具体派の拠点がありました。
現在の芦屋交響楽団のメンバーの職業欄をみると、そうそうたる企業の名前が並んでいますが、医師の方もいらっしゃるようです。オーケストラの財政面での支援にとどまらず、音楽活動を自ら率先してやろうという姿勢は、芦屋市民の文化芸術への高い意識を物語っていると思います。
そういうオーケストラを、定期的に指揮する1人、山下一史さんは、こう語ります。
「音楽に、プロもアマチュアもない。アマチュアのオーケストラだからといって、指揮の手を抜いたりはしない。むしろ、アマチュアの方が、つぼにはまるとすごい演奏をすることもある」
たまたま、芦屋交響楽団のコンサートのあと、指揮者の楽屋を訪ねたのですが、オーケストラのメンバーとの打ち上げに、上機嫌で出向く後ろ姿が、とても幸福そうでした。楽屋でも、オーケストラのメンバーが入れ替わりたちかわり入ってきて、その日の感動を語っていたり、と、本当に満足のいく演奏だったことがうかがえる雰囲気でした。

※演奏会データ
第66回芦屋交響楽団定期演奏会
2006年10月8日(日)
指揮:山下 一史
場所:ザ・シンフォニーホール
曲目:
J.ブラームス/悲劇的序曲 作品81
F.メンデルスゾーン/交響曲第5番 ニ短調 ”宗教改革” 作品107
B.バルトーク/管弦楽のための協奏曲


※芦屋川の桜と、芦屋ルナ・ホール

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※びわ湖ホールのホワイエ。琵琶湖に面していて、湖岸の風景を楽しめる。

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(2)
「文化行政に注文〜びわ湖ホールと大阪センチュリー交響楽団」

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土居豊:作家・文芸ソムリエ。近刊 『司馬遼太郎『翔ぶが如く』読解 西郷隆盛という虚像』(関西学院大学出版会) https://www.amazon.co.jp/dp/4862832679/