芦田央(DJ GANDHI)

フリーライター / 映画好き / ノンフィクションとドキュメンタリー愛好家 / 札幌出…

芦田央(DJ GANDHI)

フリーライター / 映画好き / ノンフィクションとドキュメンタリー愛好家 / 札幌出身・東京在住・古今東西の映画を貪るように日々是鑑賞 / 映画の記事がメインですが、好奇心丸出しの「レア職業図鑑」という連載もしています

マガジン

  • ドキュメンタリーのススメ

    「事実は小説より奇なり」とはよく言ったもんで、ドキュメンタリー映画はオールジャンルで、玉石混淆で、予測不可能で面白い。周知の事実にすら新しい視点を与える、そんなジャンルです。個人的にグッと来た、そんなドキュメンタリー映画をご紹介します。

  • レア職業図鑑

    珍しい職業、何やってるか分からない職業、そもそも存在の知られていない職業。そんなお仕事の業界知識と現場の声を発信し「世界は誰かの仕事でできている」を地で行こうという連載です。さらには日本の伝統文化に関わる職業にもフォーカスし、それらを保存・アーカイブしていきます。

記事一覧

固定された記事

みなさん、映画の”エンドロール”観てますか?その歴史と最新事情

一度は話題になったことがあるのではないでしょうか、映画で”エンドロール”観るのか観ないのか問題。 もちろんそれは個人の自由ですが、私は必ず観ますし、また他の方に…

『HOW TO BLOW UP』パイプラインの爆破は「正義」か「テロ」か

本作は「環境テロ行為を助長する」と、FBIが警告を出した作品である。 若き活動家たちが環境破壊行為を止めるため、また自身の主張に耳目を集めるために、テキサス州の石…

お下品なB級低俗コメディ『ドライブアウェイ・ドールズ』(誉め言葉)

『ビッグ・リボウスキ』(1998年)のようなシリアス色の強いコメディか、『ファーゴ』(1996年)のようなコメディ色の強いシリアスな映画が多い印象のコーエン兄弟。弟のイ…

『マッドマックス:フュリオサ』は「怒りのデス・ロード」で予習・復讐

アクション映画というジャンルが敬遠されがちなアカデミー賞においてすら、技術部門で6つのオスカー像をかっさらった『マッドマックス 怒りのデス・ロード』から9年。前日…

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「カンヌ国際映画祭」の関係者エリア内はどうなっているのか

カンヌ国際映画祭についての観光客向け日本語情報があまりなかったことから、実際に来てまとめてみたのが下記の記事。 ただ今回、筆者は幸運にも関係者エリアに入らせても…

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カンヌ国際映画祭の歩き方

2024年の5月にカンヌ国際映画祭へ初めて来た思ったのは、日本人の観光客がほとんどいないということだ。本家「歩き方」を含め、確かにネットにも情報があまりない。昨今の…

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映画”4Kリマスター”の流行とフィルムアーカイブ

数年前から映画界に”4Kリマスター”や”デジタルリマスター”の波が来ている。過去の名作が「リマスター版」と銘打たれ、映画館で再上映されるこの流れは、多くの映画ファ…

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海外へ向けて説明したい『君たちはどう生きるか』のポイント

とあるご縁から、海外向けに『君たちはどう生きるか』の記事を書くことになった。バイリンガルの翻訳家と一緒に映画を鑑賞し、どんなポイントが海外の方にとって伝わりづら…

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ロシアによるウクライナ侵攻後の『マリウポリの20日間』

第96回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を獲得した『マリウポリの20日間』が公開された。この映画はウクライナ史上初めてオスカーを獲得した作品となったにもかかわら…

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毎日新聞「ひとシネマ」に『オッペンハイマー』原作読者目線の記事を寄稿しました

上中下とボリュームたっぷりな原作『オッペンハイマー』。この記事では、映画との相違点から見える、クリストファー・ノーラン監督はこれを言いたかったのではないか、これ…

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エルヴィス・プレスリーの曲が流れない『プリシラ』ソフィア・コッポラの選曲

「ソフィア・コッポラ監督の作品はサウンドトラックが良い」という筆者の個人的な考えは、新作『プリシラ』でも実証された。 『プリシラ』はエルヴィス・プレスリーの元妻…

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『アインシュタインと原爆』~映画「オッペンハイマー」のお供に

映画『オッペンハイマー』において、登場シーンは少ないものの極めて重要な存在なのが「一般相対性理論」の提唱者、理論物理学者のアインシュタインだ。 原子力委員会によ…

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映画『オッペンハイマー』の登場人物・歴史背景ガイド

「原爆の父」であるロバート・オッペンハイマーを描いたクリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』が公開。 時間のギミックや物理現象などを作品に取り入れ「難…

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ガザ、パレスチナ、イスラエルのことを知るのに観たい映画

先日とあるTV番組で、ガザ、イスラエル、パレスチナなどのキーワードが、ネットで全く検索されなくなっており、それが興味・関心が薄れている証拠だとコメンテーターが言っ…

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『DUNE/デューン 砂の惑星』は映画の見比べと小説の読み比べが面白い

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『デューン 砂の惑星PART2』が公開された。PART1でアカデミー賞の美術・撮影・視覚効果賞などを獲得したように、PART2でも世界観や映像美が素晴…

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「アカデミー賞とは何か」をあらためて、選考基準や投票方法

世界で最も注目される映画賞の一つ、アカデミー賞。素晴らしい映画作品や俳優にオスカー像を贈るというざっくりしたイメージは多くの方がお持ちだろうが、もう少し解像度を…

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みなさん、映画の”エンドロール”観てますか?その歴史と最新事情

みなさん、映画の”エンドロール”観てますか?その歴史と最新事情

一度は話題になったことがあるのではないでしょうか、映画で”エンドロール”観るのか観ないのか問題。

もちろんそれは個人の自由ですが、私は必ず観ますし、また他の方にも”エンドロール”を楽しんで欲しいと思っています。なぜなら映画の本編にこだわって製作してきた監督をはじめ映画製作陣が、最後の最後であるエンドロールにこだわらない訳ないだろうと、思うからです。曲とか、フォントとか、順番とか。

という事で今

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『HOW TO BLOW UP』パイプラインの爆破は「正義」か「テロ」か

『HOW TO BLOW UP』パイプラインの爆破は「正義」か「テロ」か

本作は「環境テロ行為を助長する」と、FBIが警告を出した作品である。

若き活動家たちが環境破壊行為を止めるため、また自身の主張に耳目を集めるために、テキサス州の石油精製工場のパイプライン爆破計画を立案する。ただ爆破するだけではない。誰も傷つけず、環境も破壊することなく、石油を1滴もこぼさず、この任務を遂行するのである。

本作には原作があり、「パイプライン爆破法 燃える地球でいかに闘うか」という

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お下品なB級低俗コメディ『ドライブアウェイ・ドールズ』(誉め言葉)

お下品なB級低俗コメディ『ドライブアウェイ・ドールズ』(誉め言葉)

『ビッグ・リボウスキ』(1998年)のようなシリアス色の強いコメディか、『ファーゴ』(1996年)のようなコメディ色の強いシリアスな映画が多い印象のコーエン兄弟。弟のイーサン・コーエンによる初の単独監督作品となった『ドライブアウェイ・ドールズ』は、コメディ色の強いコメディで完全に振り切っている印象だ。

しかもかなりお下品な路線の、B級低俗コメディ(誉め言葉)である。

イーサンの妻であり、今作で

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『マッドマックス:フュリオサ』は「怒りのデス・ロード」で予習・復讐

『マッドマックス:フュリオサ』は「怒りのデス・ロード」で予習・復讐

アクション映画というジャンルが敬遠されがちなアカデミー賞においてすら、技術部門で6つのオスカー像をかっさらった『マッドマックス 怒りのデス・ロード』から9年。前日譚となる『マッドマックス:フュリオサ』がいよいよ日本でも公開された。

前作「怒りのデス・ロード」の作り込まれた世界観には、劇中で語られることのなかった膨大な量の設定があり、そんな奥行きがビジュアルや俳優の演技に昇華され、リアリティの下支

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「カンヌ国際映画祭」の関係者エリア内はどうなっているのか

「カンヌ国際映画祭」の関係者エリア内はどうなっているのか

カンヌ国際映画祭についての観光客向け日本語情報があまりなかったことから、実際に来てまとめてみたのが下記の記事。

ただ今回、筆者は幸運にも関係者エリアに入らせてもらい、いくつかの公式上映に参加することができたので、一般公開されない「関係者エリア」内についても、せっかくなので併せてご紹介したい。

まずは映画祭のメイン会場である「パレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレ(Palais des Fe

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カンヌ国際映画祭の歩き方

カンヌ国際映画祭の歩き方

2024年の5月にカンヌ国際映画祭へ初めて来た思ったのは、日本人の観光客がほとんどいないということだ。本家「歩き方」を含め、確かにネットにも情報があまりない。昨今の円安の影響もあるかもしれないと思ったが、毎年来ているという映画関係者の方に話を聞くと「いつもこんなもん」だそうだ。

映画祭は基本的にビジネスの場でもあるので、一般の観光客では入ることのできないエリアもあるが、カンヌどころか、初の映画祭

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映画”4Kリマスター”の流行とフィルムアーカイブ

映画”4Kリマスター”の流行とフィルムアーカイブ

数年前から映画界に”4Kリマスター”や”デジタルリマスター”の波が来ている。過去の名作が「リマスター版」と銘打たれ、映画館で再上映されるこの流れは、多くの映画ファンにとっては非常に嬉しい傾向である。

2024年に入ってからだけでも、『テルマ&ルイーズ』(1991年)、『レザボア・ドッグス』(1992年)、『ピアノレッスン』(1993年)や、イーストウッド主演の名作マカロニウエスタン「ドル箱三部作

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海外へ向けて説明したい『君たちはどう生きるか』のポイント

海外へ向けて説明したい『君たちはどう生きるか』のポイント

とあるご縁から、海外向けに『君たちはどう生きるか』の記事を書くことになった。バイリンガルの翻訳家と一緒に映画を鑑賞し、どんなポイントが海外の方にとって伝わりづらいかを話し合ったのだが、いつもと違う視点と考え方で、新鮮かつ非常に面白い。

そこで英語に翻訳される前の日本語記事(少し日本用に整えたもの)を下記に掲載してみた。日本人による日本の解説は「当たり前」と思われる部分もあるかもしれないが、本来は

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ロシアによるウクライナ侵攻後の『マリウポリの20日間』

ロシアによるウクライナ侵攻後の『マリウポリの20日間』

第96回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を獲得した『マリウポリの20日間』が公開された。この映画はウクライナ史上初めてオスカーを獲得した作品となったにもかかわらず、監督のミスティスラフ・チェルノフはアカデミー賞受賞式の壇上で「この映画が作られなければよかった」と語っている。

この監督はAP通信の記者であり、自身の祖国であるウクライナへ取材チームと共に入った1時間後に戦争が開始、そこから20日

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毎日新聞「ひとシネマ」に『オッペンハイマー』原作読者目線の記事を寄稿しました

毎日新聞「ひとシネマ」に『オッペンハイマー』原作読者目線の記事を寄稿しました

上中下とボリュームたっぷりな原作『オッペンハイマー』。この記事では、映画との相違点から見える、クリストファー・ノーラン監督はこれを言いたかったのではないか、これを強調したかったのではないかというポイントについて書きました。

映画から何かを感じたという方、原作も気になっているという方はぜひご一読いただけると嬉しいです。

▼記事はこちらから

エルヴィス・プレスリーの曲が流れない『プリシラ』ソフィア・コッポラの選曲

エルヴィス・プレスリーの曲が流れない『プリシラ』ソフィア・コッポラの選曲

「ソフィア・コッポラ監督の作品はサウンドトラックが良い」という筆者の個人的な考えは、新作『プリシラ』でも実証された。

『プリシラ』はエルヴィス・プレスリーの元妻、プリシラ・プレスリーによる回想録「私のエルヴィス(原題:Elvis and Me)」を原作とし、本人もエグゼクティブ・プロデューサーとして製作に参加した作品だ。

プリシラが軍の将校である父の赴任先ドイツで、従軍してきたエルヴィスに初め

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『アインシュタインと原爆』~映画「オッペンハイマー」のお供に

『アインシュタインと原爆』~映画「オッペンハイマー」のお供に

映画『オッペンハイマー』において、登場シーンは少ないものの極めて重要な存在なのが「一般相対性理論」の提唱者、理論物理学者のアインシュタインだ。

原子力委員会による聴聞会へ参加するオッペンハイマーに対して、アインシュタインが話しかける。自分は国から逃げてきた身だが、オッペンハイマーは国に尽くしてきた。そんな君に対する国の仕打ちがこれかと。

アインシュタインはドイツ生まれのユダヤ人で、1933年に

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映画『オッペンハイマー』の登場人物・歴史背景ガイド

映画『オッペンハイマー』の登場人物・歴史背景ガイド

「原爆の父」であるロバート・オッペンハイマーを描いたクリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』が公開。

時間のギミックや物理現象などを作品に取り入れ「難解」と言われることも多いノーラン映画だが、『オッペンハイマー』も主人公が物理学者であることに加え、物語が複数の時間軸で進むなど、例に漏れずかんたんとは言えない。

しかし今作の難易度を上げているのは、時間や物理の要素ではなく登場人物の多さ

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ガザ、パレスチナ、イスラエルのことを知るのに観たい映画

ガザ、パレスチナ、イスラエルのことを知るのに観たい映画

先日とあるTV番組で、ガザ、イスラエル、パレスチナなどのキーワードが、ネットで全く検索されなくなっており、それが興味・関心が薄れている証拠だとコメンテーターが言っていた。Googleトレンドで見てみると確かにその通りである。

ハマース主導による越境攻撃が去年の10月7日、その直後と比較すると2024年3月現在では約50分の1程度まで、検索数は激減している。

人の関心を集め続けることは、この情報

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『DUNE/デューン 砂の惑星』は映画の見比べと小説の読み比べが面白い

『DUNE/デューン 砂の惑星』は映画の見比べと小説の読み比べが面白い

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『デューン 砂の惑星PART2』が公開された。PART1でアカデミー賞の美術・撮影・視覚効果賞などを獲得したように、PART2でも世界観や映像美が素晴らしいことは説明の必要がないだろう。

PART1の公開時には原作小説の新訳版を読んでみたが、今回はそれをそのまま読み返すのでなく、趣向を変えて、昭和62年に改訂版六刷の発行された矢野徹さんによる翻訳版を読んでみた。

あく

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「アカデミー賞とは何か」をあらためて、選考基準や投票方法

「アカデミー賞とは何か」をあらためて、選考基準や投票方法

世界で最も注目される映画賞の一つ、アカデミー賞。素晴らしい映画作品や俳優にオスカー像を贈るというざっくりしたイメージは多くの方がお持ちだろうが、もう少し解像度を上げていただくと、アカデミー賞を、映画を、より楽しめると思うので、かんたんにご紹介したい。

オスカーとは

主催団体は「映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Sciences:AMP

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