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ト ラ ン ス ジ ェ ン ダ リ ズ ム と は?…1

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Trans women are women ?

発行にあたって
 日本では 2018 年に、お茶の水大学がトランス女性を女子大生として迎え入れることを表明したことをきっかけとして、トランス女性をめぐる論争が起きています。女性専用スペース問題(トイレ、更衣室、シャワー室、公衆浴場)について、 本冊子でも触れているように今も論争が続いています。

「トランス女性は女性だ」という言葉を聞いたことがありますか?
「トランス女性」ってどういう意味?ですよね。詳しくは本冊子を読んでいただいたらいいのですが、手短かに説明します。

 LGBT の T は「トランス」の頭文字。生まれついた自分の体に違和感があり、治療として性転換をしたい人は、トランスセクシュアルと言いますが、トランスジェンダーは、生まれついた自分の体に違和感はないけれども、自分の「心の性」は 生まれた性とは別の性だと思う人、いわゆる異性装の人も含む、とかなり幅広いんです。トランスセクシュアル、トランスジェンダーを総称して「T=トランス」 というのでややこしいかもしれません。

  分かりやすくいうと、マツコ・デラックスさんは自他ともに認めるトランスジェ ンダー(女装家。男の身体でいることに苦痛はない)。でも「トランス女性は様々である」と、当事者たちが言っているので単純にイメージすることは無理かもしれません。性同一性障がいであることを公表の上、世田谷区議選に当選し、LGBT自治体議員連盟の世話人もしている上川あやさんは、トランスセクシュアルです。

  海外では、ハリー・ポッター・シリーズの作者である J. K. ローリングさんが「生物学的性別はある」と表明して、社会的に激しくバッシングされています。

 「え〜、どうして?」と思われるでしょう。トランスジェンダリズムという思想 を持つ人たちが「生物学的性別はない、多様なジェンダーがあるだけ」と主張し ているからです。海外では「生物学的性別はある」と主張して解雇された女性も いて、トランスジェンダリズムを批判しているのはローリングさんだけでないこ とは、本冊子を読んでいただければ分かると思います。トランスジェンダリズム のもたらす身近な問題としては、男性が性自認だけで法的に女性としての ID が得 られるようになった国では、かつて「女性用」という文言が入っていた「生理用ナプキン」のパッケージは、現在では「生理のある人用」となっています。生理のないトランス女性も女性だし、トランス男性にも生理があるからです。
  女性とは「トランス女性及び生物学的女性」を総称する、ということになれば 性差別という概念はどこに行くのでしょうか?

 皆さまが自分の見解を持たれる参考にしていただければと思い、この冊子を発行しました。発行にはかなりの覚悟が必要でした。ですから、一般公開ではなく、 それなりの扱いにしたいと考えています。発行主体は明記していません。ご意見などあれば、手渡されたルートを通してお知らせください。


トランスジェンダリズムとは? 

「トランス女性は女性です」がマジでヤバい理由

ーー友達が「完全教祖マニュアル」って本読んでて、そこに、「突飛な世界観と具体的に救われることを提示すると、後はインテリ層がその間を勝手に考察しまくって繋げてくれる」みたいなこと書 いてあって、それオタク界で 966588574636 回見た...ってなったーー(とあるツイートより)

 この冊子の文章は、 あるグループの発行するニュースレターに 3 回に分けて連載された原稿に加筆訂正を加えたものです。


1 :  トランス問題との遭遇 その発端

 初めは、こんなことをにわかには信じられませんでした。なんの話かって?
 簡単に説明することはとてもできません。まずはトランスって何?の話から。

 LGBT が、性的マイノリティのことだという認識は広まっていると思います。でも、 LGB と T は、ちょっと違いますよね。LGB はゲイ、レズビアン、バイセクシュアルで、「どういう性別の人を好きになるか」ということだけど、T(トランス)は「その人が生きたい性別は何か」ということです。LGB は言ってみれば当人同士の話なので、好きな相手を 好きになればいいし、外野があれこれ言うことではない問題。LGB であることを理由に差 別やいじめがあってはいけないのは当然。

 じゃ、T は?
 そりゃ、その人がしたい格好して生きるのはその人の自由だし、当然差別やいじめはいけないよね。しかし、トランスの人が女性専用スペースに入ってもいいかどうかで、ネット上で炎上するということが起こったのです(今も継続中)。
  最初、トランスの人とは、「自分は男の着ぐるみを着た女だと感じる」、みたいな、自分の身体に対する激しい違和感のある人だろうと私は思っていました。そして、本来そうであったはずだと思う性別に自分の身体を変えたい(手術をしたい)人だと。多くの女性たちも同じくそう思っていたらしい。

「らしい」というのは、私は最初からその騒動を見ていたわけではないからなんですが。


女性が女装の性犯罪目的者の侵入を恐れる

 ところが、トランスの人の中には、身体違和感がなく、手術を受けたくもなく、本人が「自分は女性だ」と思うから「女性なんだ!」と主張する人(通常の理解では、「女装者」と ほぼ同じ)も含まれているとわかってきたのです。

 すると、ただでさえ、男性性犯罪者が女装して女子トイレや女湯に侵入して覗きや盗撮、 わいせつ行為をする事件が多い状況なのだから、「男性の身体の人が入ってくることが当たり前になるなんて、そんなの困る!」という女性の声が出てきます。だって、性犯罪目的の男性が入ってきても、「実はトランス女性(身体は男性だが女性を自認)なんです」 と言われれば、「あ、すみません。間違ってごめんね。どうぞどうぞ」ってことになり、「もしかして」と思ってもあからさまに警戒したり通報したりしづらいですよね。
 その人が犯罪を犯すまで、警戒すべき性犯罪者か、警戒してはいけないトランス女性かわからないなんて、「これじゃ、女性専用スペースの安心・安全感がなくなる!」と思う女性がいても当然です。だから、解決策として、「多目的トイレ」を提案する人もいましたが、そうすると「トランス女性は女性だ。トランス女性を女性専用スペースから排除するのは、既得権のあるマジョリティ女性によるトランス差別だ」と叩かれたそうなのです。


フェミニスト学者が性被害女性を非難

 そして、2019 年 2 月、女性たちの声を「トランスフォビア(トランス嫌悪)だ!トランス排除だ!」として非難する学者たちが、公に声明を出しました。WAN(ウィメンズ・ アクション・ネットワーク)のサイトに、『トランス女性に対する差別と排除とに反対するフェミニストおよびジェンダー/セクシュアリティ研究者の声明』(p.40 参照)がアップされ、賛同署名を募ったのです。この声明の呼びかけ人のうちの何人かはネット上でも 論客で、この方々は TRA(Trans right activist トランス人権活動家)と呼ばれています。

  ネットでは、性暴力サバイバーが、「このトランス差別者め、お前の方が病院行け! 男性恐怖症を治せ!」というようなバッシングを受け、たくさんのサバイバー女性のツイッターアカウントが消えていったと言います(この問題を私がまめにウォッチングし始めたのは、おそらくこの『関ヶ原の合戦』が終わった後だったのでしょう。いったいどのくら いの女性が討ち死にしたのか知りません)。

 まあ、しかし。
 その後、「女性サバイバーこそ男性恐怖症を治すべきだ」といった趣旨のことを言う人を生で目撃することになったのには、我ながらびっくりでした。言ったのはフェミニスト学者の方でした。もう一人、そのような発言をする別の人にも出くわしましたが、その方はずっと加害者と戦っている性暴力サバイバーでした。なんというか、テレビで見るスターを街で目撃して、「本当にテレビで見るのと同じなんだね!」と感心してしまうのに似ています。
 いや〜、本当にいたんだね!


加害者に向かわず、女性に向かう攻撃

 たしかにトランスの人が性的マイノリティで生きづらさがあることには同情しますが、 聞けば、トランス女性も性暴力に遭いやすいというではないですか。なら、女性もトラン ス女性も性暴力加害者(ほとんどが男性)が怖いんですよね。怖いから、男性トイレに行けないとおっしゃってましたよね?
 だったらこの気持ちがわかるんじゃないの?と思う のですが、どうもそうじゃないらしく。女性が男性(加害者かどうかは事後にしかわからない)に対して恐怖を感じること、イコール、「こいつはトランスを嫌いだから、こう言ってるんだ!」になるようなんです。なんでですかね?

 「性被害の受けやすさ」については、女性とトランス女性はよくて対等、下手すりゃ、 筋肉がある分、トランス女性の方がずっと抵抗できるんじゃないの?とすら思う女性がいても、別に不思議じゃないですよね。どうして、女性が譲歩するべきだとそんなに強く言えちゃうんですか?
 女性が譲歩しなければ、「差別者だ!」と言って、即座に議論のシャッターを下ろしてしまうほどに激しく怒るのはなぜですか?

 性暴力加害者(ほとんどが男性)が悪いのに、女性がトランス女性(男性の身体に違和感がなく性別適合手術を受けていない生物学的男性)から攻撃されるって、被害者の女性 に「痴漢冤罪」を叫ぶ男性とか、「男性を警戒する女性へのバッシング」をする男性とかを想起させる、ものすごく既視感のある構図なんですが。文句は加害者に言ってほしいんですよ。女性に対しては「そこを譲れ」と強く言えるのに、根本原因の加害者群を擁する 男性側には立ち向かっていかない行動パターンって、「(従来的な意味で)とってもオトコらしい」と思います。
 どうせならそこも「トランス(越境)」してみた方が断然、新しいと思うんですけど。

《つづく》


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