梶文彦

日本のものづくりは世界の財産です。わたしたちは、なぜこんなにコンパクトでこぎれいなもの…

梶文彦

日本のものづくりは世界の財産です。わたしたちは、なぜこんなにコンパクトでこぎれいなものづくりをするようになったのでしょうか? その背景をたずねてみましょう。

マガジン

  • いまに伝わるものづくりの技

    日本のものづくりの精度・緻密さ、耐久性など、仕上がりの品質は世界でも高く評価されています。千年を超えてなお美しさを保っている法隆寺や薬師寺から、ものづくりの職人の技を振り返ってみます。

  • ものづくり 日本のこころ

    技術力というととかく新しい技術や商品の開発に目が向けられますが、製造業を支える基本は、ものづくりの精度、加工技術の開発力です。日本が誇る高い品質の生産技術力は日本にしかない、世界の貴重な財産です。なぜ、日本はこんなに高い生産技術力を持つようになったのでしょうか。その歴史を振り返って見ませんか。

  • 《昭和を切り開いた経営者の「逆転」する発想》

    安眠をむさぼる頭脳に心地よい一撃!  書籍や雑誌などに目を通していると、時々、なるほどと、うならせられる言葉にぶつかったりします。とくに、未成熟だった製造業・流通分野で創業し、日本経済を立ち上げてきた昭和の経営者の言葉は、常識と反対の発想、いわゆる「逆転の発想」と呼ばれる類いのものが多く、安眠をむさぼる頭脳に一撃を与えてくれました。  それらは言葉そのものの面白さだけでなく、その裏にある発想の斬新さや、不屈の精神、成功への執念、生きていることへの讚歌といったものを感じさせてくれます。そして何より、どんな逆境にあっても笑い飛ばせる諧謔精神に満ちています。     私にとっては、それはカタルシスと表現できるのではないかと思います。そんな言葉をご紹介します。気楽に読み飛ばしていただければ嬉しいです。

  • 9-あとがき どこへゆく日本のものづくり

    日本のものづくりはイノベーションも起こせずガラパゴス化している、と言われます。本当にそうでしょうか? 問題は高度なものづくり力を生かせないマネジメント力にあるように思います。

  • エトセトラ

    つけたし、などなど。日々思いついたこと、気になったことをメモ風に記します。

最近の記事

後世の大工への信頼が生む高度な継ぎ手

 写真は、丸太3本を直角に組み合わせる際の継ぎ手です。くさびを入れて、そのくさびの出っ張った部分を切ってしまえば、もう何がどうなっているのかわかりません。  数寄屋造りの特徴は、丸太の素材などを、あるがままに活かして使うところにあります。必要な加工に合わせてノコギリ、カンナ、ノミを最適な状態に仕上げ、それらを縦横に使って精緻な部材を丸太の凹凸にそって隙間なく仕上げ、組み付ける、根気のいるていねいな仕事が必要です。  こうしたつなぎは、分解・修理するにあたって、再利用できる

    • 5-13. 新製品を作る時に市場調査をしても意味はない。

       本田技研工業創立者 本田宗一郎  スーパーカブを発売した際の経験を前提に、本田は新製品発売に当たって行う市場調査についても疑問を呈している。  たとえば、コウモリ傘はどのくらいの需要があるかという市場調査をしたとする。過去にあったようなモウモリ傘についてなら、それなりに信頼できる数字も出てこよう。 しかし、これまでにないまったく新しいコウモリ傘の必要性を誰が考えられるか……本田はそう言うのである。過去、本田でも需要予測では何度か失敗もしている。  その一番いい例が代理店の

      • 069.武士道は損得勘定を取らない

         新田が開発され尽くされてしまうと、やがて税収は頭打ちになってきます。しかし、いったんバブル化した財政は縮小しません。各藩では参勤交代や江戸屋敷での生活を維持するための出費がしだいに負担になり、幕府からの普請要請なども増えて、財政を圧迫していきます。  藩財政を運営するために有能な会計・財政担当者が求められるのですが、課題に応えられる優秀な勘定奉行は、家制度の上にあぐらをかいて、時間を無為に過ごしてきた高禄武士階級の中にはいません。  なによりも、新渡戸稲造が書いたように、

        • 042.融合するカン・コツとマニュアル

           日本のものづくり現場の強さの秘訣は、野沢定長がこだわったように、論理的な正しさを越えて、しっくりこないといった感覚を大事にする中から、目からうろこのような改善案が生み出されていることにあると、私は本気で思っています。  それが匠の技、高度技能というものに含まれるカンやコツの一部でもあると思います。このあたりの感覚は、おおかたの日本人は「まあ、そんな考えもあるかな」と納得しても、外国人には、理解してもらえないかもしれません。  日本人の合理主義とは、単に論理だけのものではなく

        後世の大工への信頼が生む高度な継ぎ手

        マガジン

        • いまに伝わるものづくりの技
          25本
        • ものづくり 日本のこころ
          100本
        • 《昭和を切り開いた経営者の「逆転」する発想》
          65本
        • 9-あとがき どこへゆく日本のものづくり
          0本
        • エトセトラ
          12本
        • 横須賀製鉄所――造船王国・日本の源流
          37本

        記事

          071.官僚として能力が問われる時代へ

           勘定奉行にふさわしい家格の武士たちは計算ができず、財務処理を誰もやりたがらないのですから、下級武士にとって、実力さえつければ、登用される可能性は大です。下級武士にとって、勘定奉行という職務は、またとない出世のねらい目になりました。  足高制が実際にどのように利用されたのか、勘定奉行についてみると、実施以後では500石以下層からの登用がその半数近くを占め、「徳川時代中期以降に活躍した勘定奉行の中には、禄高が150~200石という、旗本でも最下位の身分の出自ながら、順次に昇進し

          071.官僚として能力が問われる時代へ

          5-12. 需要は始めからあるものではない。 メーカーがアイデアと生産手段によってつくり出すものだ。

           本田技研工業創立者 本田宗一郎  先のデサントのケースで、もし当初から大量に生産し、大量に店頭に並べていたら、一気に人気が出て、爆発的なブームになっていたかもしれない。しかし、そのケースでは、一時的なブームに終わっていた可能性も強い。諸刃の刃でもある。  「マンシングウエア」という長く続くロングセラーの商品を育てたのは、やはり作り手・売り手のしっかりした戦略なのである。  本田宗一郎は言う、  ホンダがスーパーカブを売り出した当時にあれだけ売れたということは、

          5-12. 需要は始めからあるものではない。 メーカーがアイデアと生産手段によってつくり出すものだ。

          5-11. 最初から大量に作ってはいけない。ムリして売ったりするな。

           デサント元会長 石本他家男  こう言ったのは、スポーツ用品メーカー、デサントを創立した石本他家男である。 同社がペンギンマークのゴルフウエアを売り出した時の話である。  石本は、売り出しに当たって、生産量を絞り込む作戦をとった。  「最初から大量に作ってはいけない。」 というのは、それまでのスポーツウエアの販売経験から、市場で商品がダブつくとイメージダウンにつながり、デメリットになると思っていたからである。やや足りないくらいの量にしておけば、消費者は逆に購買意欲をそ

          5-11. 最初から大量に作ってはいけない。ムリして売ったりするな。

          5-10. 売るな、親切にせよ。

          5-10. 売るな、親切にせよ。  東武百貨店社長 山中 鏆  大量生産・大量消費の時代には、毎年のように購買力が大きく膨らんでいった。パイそのものが非常な勢いで膨張を続けたのである。こうした環境の中では、各社は膨らむパイをいかに獲得するかに力を注ぐ。だから販売力が企業の業績を左右した。  しかし、購買力が縮小されれば、販売の仕組みにも大きな転換が求められる。 その一つが、直接的な販売の力ではなく、結果として販売拡大につながる活動への転換である。  山中は言う。  これ

          5-10. 売るな、親切にせよ。

          5-9. 能率向上と原価低減とは必ずしも一致しない。

           トヨタ自動車元副社長 大野耐一  製造ラインから言えば、「現在1日に100個しか生産できないのを、工程を改善して120個できるようにした」のならば、これは20パーセントの生産性向上である。こうした改善は原価低減につながる有効な手段だ、というのがこれまでの考え方であった。  能率が向上すれば、その分だけ単価が下がるのが普通である。 しかし、大野耐一はそうではないと言う。これが、そもそもカンバン方式とかジャスト・イン・タイム(JIT)と呼ばれるトヨタ生産方式の出発点になった

          5-9. 能率向上と原価低減とは必ずしも一致しない。

          マガジン「横須賀製鉄所――造船王国・日本の源流」をフォローいただきました。

          マゴコロさんから、マガジン「横須賀製鉄所――造船王国・日本の源流」をフォローいただきました。

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          ラーメンについて「今、このnoterが面白い」でご紹介いただきました。

          「今、このnoterが面白い」で「日本人の底に流れるものづくりの通奏低音(5)005ラーメン店主にみるものづくりの魂」をご紹介いただきました。ありがとうございます。  たくさんの方にお読みいただけるとうれしいです。

          ラーメンについて「今、このnoterが面白い」でご紹介いただきました。

          5-8. 厳重な品質検査をやっているから、当社の商品は間違いない……というコマーシャルは間違いだ。

           本田技研工業創立者 本田宗一郎 この言葉はいまとなっては古く響く。実は戦後に産業が立ち上がり、輸出も増え始めた1960年代初め、輸入国から日本の製品に対して「安かろう悪かろう」と言われたころの言葉なのである。 「厳重な品質検査を行っているから、当社の製品は間違いがありません」というコマーシャルは当時、よく見聞きした。  しかし、この広告はまったく宣伝になっていないだけでなく、むしろ、 「当社の製品は厳重な品質検査をしないと不良品が出ると言っているようなもの」 といち早

          5-8. 厳重な品質検査をやっているから、当社の商品は間違いない……というコマーシャルは間違いだ。

          5-7. 毎日あくせくやっていれば結構満足感はある。 しかし、その間に世の中に取り残されているかもしれない。

           ソニー会長 大賀典雄  1日は誰にでも24時間である。その中で、忙しくすごす人間と、ゆとりを持ってすごす人間がいる。やれ会議だ、電話だ……と気がついたら昼休みになっていた、などの経験はよくあることだ。 というのはソニー会長の大賀典雄である。  アクセク動いて仕事に追われていると、1日をふり返った時に、今日はいったい何をやったのか……と心もとない気持ちになることがある。  忙しそうにアクセク動いた日は、時間に追われてずいぶん仕事をした気分になるが、よく考えてみると、解決

          5-7. 毎日あくせくやっていれば結構満足感はある。 しかし、その間に世の中に取り残されているかもしれない。

          5-6. ミドルは自分を抑えてはいけない。

           アサヒビール会長 樋口廣太郎  会社の中でも、個性を発揮しろという意見は少なくない。しかし、樋口のこの言葉は、これまでの常識を覆す言葉でもある。  中間管理職といわれる部課長クラスは、上下に挟まれて課題の解決を迫られる階層である。業務ではまず課題解決が重要であり、自己の意志を殺してでも、立場や役割を優先させることが求められる……というのがこれまでの考え方であった。  しかし、と樋口は言う。 と言う。  なぜなら、40代はクオリティライフ、つまり質の高い生活の実現を目

          5-6. ミドルは自分を抑えてはいけない。

          5-5. 肩書きほど有害なものはない。

           トッパン・ムーア顧問・元社長 宮澤次郎  宮澤は、肩書きはしばしば自分自身を見つめることを妨げると、次のように語っている。  宮澤は、大学卒業と同時に満州国の官僚になって14年、終戦時には県知事になっていた。しかし引き上げてきて、肩書きが取れ、家財も失うと食べてゆくだけで精いっぱいで、「法学士といっても何もできないものだなあ」とつくづく感じたという。  その後、大蔵省に入り、凸版印刷に誘われて移り、工場長から常務になるが、「何ができるわけではなく、これじゃ迷惑をかける

          5-5. 肩書きほど有害なものはない。

          Y8-5. 明治9年からわき続ける水源地

          走水神社からさらに進むと、国道16号線は海岸と離れて高台にのぼる。 しばらくの間、下に走水漁港と漁港に渡る伊勢町橋、走水海岸と東京湾を望む絶景が続く。 ここは運が良ければ、富士に沈む夕日が見られるという東京湾眺望のポイントらしい。  この道はしばらくするとすぐに下り、右手に大きな駐車場が見えてくる。 すぐ裏は走水海岸、そして隣は走水水源地管理センターである。 駐車場に給水用の蛇口が設置されており、多くの人がポリタンクやペットボトルなどに水を詰めている。 この水源地は、明治

          Y8-5. 明治9年からわき続ける水源地